すでに給与の差押え・強制執行を受けているときに「自己破産」でそれを阻止できるか?
2024/12/20
■管財事件で自己破産手続きが開始された場合
■同時廃止で自己破産手続きが開始された場合
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■ 自己破産手続きで給与への差押え・強制執行を阻止できる
例えば、債務者Aは債権者Bとの金銭返還請求訴訟で敗訴したにもかかわらず、生活苦で金銭の返済を渋っていたら、Bは早速自らの債権を回収するために、Aの給与に対して差押え・強制執行を仕掛けて来くることは十分あり得ます。
Aとしては、返済を怠っていた自分が悪いとはいえ、今の状況で給与が差押えられるということはまさに死活問題です。Bの給与への差押え・強制執行を止めたい!しかも早く止めたい!どうしたらいいか!?
結論からいいましょう。
Aは自己破産を申し立てれば(あるいは利害関係人の申立て、または裁判官の職権で)、すでに開始されているBの差押え・強制執行を中止、停止することができます(破産法24条1項)。また、後から述べますが、すでに自己破産手続開始決定されていれば、差押え・強制執行をすることはできません(破産法42条1項)
破産法第24条
第1項裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分(債務者の財産に対してすでにされている強制執行手続)の中止を命ずることができる。
ただ、自己破産という手法は、いくつかのデメリットを伴うし、現に存在する世間的なマイナスイメージからしても「自己破産すれば強制執行止まりますよ!」と軽々アドバイスするようなシナモノではありませんが、もはや今の支払い不能の状態がニッチモサッチモいかなくなってしまっているのであれば、最後の手段として自己破産を十分検討する価値があります。
もちろん、借金返済の原資となるであろう給与を定期的にもらえる機会をまだ持っているならば、一足飛びに自己破産に行かなくても、一歩手前の個人再生の方法でもって再生を模索すべきだと思いますが、一応ここでは自己破産を念頭に論を進めていきます。
繰返しになりますが、基本的に、自己破産手続をすることで、差押え・強制執行の前後を問わず、差押え・強制執行をやめさせる(中止、停止、失効)ことができます。
もっとも、債権者Bの立場からみた場合、債務名義まで取ってようやく債権回収できるところまでこぎ着けたにもかかわらず、債務者Aが自己破産したことで、差押え・強制執行が止められてしまうのは非常に不本意でしょうが、これは仕方がありません。仕組みがそういうことになっているのです。
強制執行(差押え)により実現が予定されている請求権の存在、範囲、債権者、債務者が記された公の文書のことです。
強制執行をするには、この「債務名義」を取得することが必要です。公的ではない私人間で締結された契約書では、仮にそれが真正なモノであっても「債務名義」にはなりません。裁判所で作成して和解調書、公証役場で作成した公正証書、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促などが債務名義となります。
ただし、抵当権などの担保権実行で債権の回収を図るときは「債務名義」は必要ありません。
ところで、差押え・強制執行できる給与額は基本的には全額の4分の1と決められています。全額ではありません。残りの4分の3は差押え禁止債権とされていて、その分は給与者に支給されます。
とはいえ、ギリギリの生活を送っている経済的困窮者にとって給与の4分の1を受け取れないというのは結構つらいはずです。すでに仕掛けられている給与に対する差押え・強制執行を、自己破産することによって4分の1も含めて止めることができるのであればやってみる価値はあります。
さて、Aが申し立てた自己破産手続きが「管財事件」になのか、それとも「同時廃止」になのかによって結論が異なってきます。場合分けして考えてみましょう。
以下は、細かい破産法の条文の解釈に終始しますが、めげずについてきてください。
■「管財事件」で自己破産手続きが開始された場合
Aの申し立てた自己破産手続きが「管財事件」であった場合、自己破産手続きが開始決定された段階で、差押え・強制執行の効力が失効します。自己破産手続きの申し立てだけでは足りません。
この失効とは、単なる一時的な差押え・強制執行手続きの中止、停止ではありません。
失効とは、差押え・強制執行の効力そのものが失われることになるので、Aは自己破産手続き開始決定の段階で、直ちに4分の1も含めて給与の全額が支給されることとなります。
では、なぜそうなるかというと、その根拠は破産法42条にあります。
破産法第42条
第1項 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分(中略)で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
第2項 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分(中略)で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。
上記の破産法42条2項には「破産財団に属する財産に対してすでになされている差押え・強制執行は、自己破産手続き開始決定と同時に効力を失う」と規定しています(赤字のところ)。
そして、すでに自己破産手続開始決定されていれば、破産財団に属する財産に対して、差押え・強制執行をすることはできない、と規定しています(破産法42条1項)。
「破産財団に属する財産」というのは、自己破産手続き開始決定の時点に破産管財人が管理・換価処分することになる破産者の財産の総体をいいます。
だから、自己破産前から得ていた給与、銀行預金等々は「破産財団に属する財産」であり、これらに対する差押え・強制執行は、この破産法42条が適用されて失効するということになるのです。
したがって、自己破産手続き開始決定がなされれば、直ちに4分の1も含めて給与の全額支給が可能となって、これで一件落着となるわけです。
要は、破産財団に属する財産に対して差押え・強制執行はできないし(破産法42条1項)、すでに破産財団に属する財産に対してなされてしまった差押え・強制執行もその効力を失うということ(破産法42条2項)。
では、自己破産の開始決定よりも後に月々に支給された給与についてはどうなるのか?
この給与については、開始決定後なので「新得財産」となり破産財団とは区別され、破産財団の中には入らず自由財産と同じレベルで破産手続きに関係なく自由に使えます。
でも、入らないということは、その場合は破産法42条の適用外となってしまい、その給与対して差押え・強制執行してもその差押え・強制執行は失効しない、つまり自己破産手続き開始決定後に支給される給与に関しては差押え・強制執行できると解釈できることになりそうです。
ところが、給与債権自体は自己破産手続き開始決定前の原因に基づいて発生した財産上の財産権ですから、開始決定後に支給された給与債権は破産債権であることも間違えないです。
だから、その給与に関しては、「新得財産」でありながら破産債権でもあるという評価になるのです。
そこで、別の条文である破産法100条をみると「破産債権は、破産手続きによらなければ行使できない」と規定されています(下記の条文参照)。
破産法第100条
第1項破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。
自己破産手続き開始決定後に支給された月々の給与は「新得財産」となりますが、先に述べたように、破産債権でもあるのです。
だから、実は新得財産は破産法100条の適用があるのです。
したがって、破産手続きの配当以外の方法で債権回収することを禁じられているので、差押え・強制執行による債権回収はできないことになるのです。
このことは、よく考えるまでもなく当然のことを言っているまでのことです。自己破産手続き開始決定後の月々の給与に対して自由勝手に強制執行できるということになると、破産者の経済的更生を図る目的もある自己破産制度の意味がなくなってしまうからです。
結局、まとめると「管財事件」の場合は、破産財団に含まれる財産に対して行った差押え・強制執行は、破産法42条が適用されて失効します。つまり、失効だからこそ、直ちに給与の満額が支給されることになります。また自己破産の開始後、つまり破産財団には含まれない新得財産でも、破産債権であるがゆえに、破産法100条によって差押え・強制執行はできません。あくまで破産手続の配当の範囲で債権回収がなされることになります。
ただ、管財事件で自己破産手続き開始決定でもって差押え・強制執行が失効になるとはいえ、実際にそれを具体化させるには一定の実務上の手続きが必要となります。
それは、今回のようなケースの場合「自己破産申し立て裁判所」と「給与差押え・強制執行を命じた裁判所」とは、別の裁判所になっているはずであり、前者の裁判所で自己破産手続きの開始決定がなされたことを、後者の裁判所に「強制執行の取消」の申し立てという形できちんと連絡しておかないと、強制執行が止まらないのです。
だから、その旨の手続きは怠らないようにしなければなりません。
でも「管財事件」は破産管財人が選任されているので、破産管財人がその旨の連絡手続きはやってくれるはずですから心配はありません。
■「同時廃止」で自己破産手続きが開始された場合
では、Aの自己破産手続きが「同時廃止」であった場合はどうなるか?
「同時廃止」とは、これといった換価処分して債権者に配当するようなめぼしい財産がないことが明らかで、破産手続費用を支払うことさえ難しいような場合の自己破産手続きのことです。
だから、同時廃止では、自己破産手続き開始決定と同時に破産手続きが終了しますので、自己破産手続きは一切行われず、破産管財人さえ選任されません。
そういった観点で、先の破産法42条を見てみると42条は自己破産手続き開始決定後の差押え・強制執行はできないと規定しています。
ところが、先に述べたように、同時廃止は自己破産手続き開始決定しても直ちに自己破産手続き終了してしまうので、そもそも強制執行できないとしている破産法42条の適用する余地がなくなります。だから、直ちに新たに差押え・強制執行をすることができるということになります。
ただ、同時廃止の手続きで免責の申し立てを経て最終的に免責許可が下りれば強制執行はできません。でも、免責許可の決定が下りるのは、同時廃止での自己破産手続き開始決定後少しの時間の経過が必要でありその時間経過後に下りるのが普通の流れです。
つまり、免責許可決定時は同時廃止決定時とは時系列で一致しないのです。
したがって、そこには必然的に若干のタイムラグが生じます。
その若干のタイムラグの間に、破産法42条の適用がないことをいいことに、給与債権に差押え・強制執行が許されるということになります。でも、それではせっかく自己破産手続きをして免責を受けて経済的更生を図ろうとしている債務者の思惑を妨げるおそれがあります。
もちろん、先に述べたように免責許可の決定が下りれば強制執行はできなくなりますが、免責許可が下りるまで時間の経過が必要だし、そもそも下りるかどうかも不明です。
そこで、破産法は249条1項で「免責の申し立てがあった場合は、免責許可不許可のどちらかの決定が下りるまでは、差押え・強制執行は禁止し、すでに強制執行が開始されているときは中止される」との規定を設けています。
破産法第249条
第1項 免責許可の申立てがあり、かつ、破産手続廃止の決定、破産手続廃止の決定の確定又は破産手続終結の決定があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分(中略)はすることができず(禁止)、破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの及び破産者について既にされている破産債権に基づく財産開示手続は中止する。
第2項 免責許可の決定が確定したときは、前項の規定により中止した破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分及び破産債権に基づく財産開示手続は、その効力を失う。
そして、現在は自己破産の申し立てがあった場合、本人が拒否しない限り「免責許可の申立て」もあったものとみなされます。
だから、先に述べたように同時廃止の場合、自己破産手続き開始と同時に自己破産手続き終了となる場合でも、破産法249条でもって差押え・強制執行手続きは中止することになります。
ところで、ここでいう「禁止、中止、停止」は、先の「管財事件」で述べたような「失効」ではありません。
それらは、その後の審理で免責を許可にするか、不許可にするか決まるまで一時的に中断するという意味です。だから、許可になれば「失効」不許可になれば、差押え・強制執行手続きは再開されることになるのです。
だから、免責許可が下りるか下りないかわからない間の強制執行の中断状態は、もちろん強制執行を進めることはできませんが、かといって、給与を受け取る側がその時点で満額受け取れるわけではないのです。4分の1については勤務先の会社が保管しておくとか、最寄りの供託所に預けておくとか、そういった方法をとることになります。
そして、先に述べましたが、免責許可が下りれば給与に対する差押え・強制執行は失効となり、その段階になって初めて4分の1も含めて給与満額が支給されるされることになるのです。
なお、この場合も先の「管財事件」と同じように「自己破産申し立て裁判所」と「給与差押え・強制執行を命じた裁判所」とは、別の裁判所になっているはずなので、同様の理由で「強制執行の中止」の上申を行わないと強制執行は中断しない恐れがあるので注意を要します。
ただ、同時廃止の場合は、破産管財人が選任されませんが、自己破産手続きを弁護士に依頼した場合は、その弁護士がやってくれるはずなので心配する必要はありません。
すでに給与の差押さえ・強制執行を受けているとき「任意整理」することで停止・中止することができるか?
わが国では、自己破産手続きでの同時廃止になる割合が非常に多いといわれていますが、同時廃止の場合は、破産手続開始決定と同時に破産手続が終了し、期間も3~4か月と短い期間で終結します。 (ちなみに、管財事件だと半年から1年はかかるようです。)
とはいえ、勤務先に差押命令が送達されると1週間で差押えが可能となってしまうので、到底、完璧に差押えを阻止するには間に合いません。
だから、勤務先に差押え命令が送達されてから、差押え阻止に動いても数か月間は給与差押えは甘んじて受けざるを得ません。
だから、その期間をできるだけ短くするために、裁判所への的を得た働きかけ(上申書提出等々)は必要だし、そのためには実績があって知識、経験の豊富な専門家に相談することは必定です。
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