多くの人が個人再生を選ぶ理由は? ~ 任意整理と自己破産の中間でバランス感覚が優れている~
2025/07/26
■ 個人再生を選ぶ理由
(1) 財産を守りながら借金の元本も大幅に減額できるから選ぶ
(2) 安定した収入があれば手続きできるから選ぶ
(3) 自己破産を避けたいという強い希望があるから選ぶ
(4) 現在住んでいる家や財産を失いたくないから選ぶ
(5) 借金の理由を問わないから選ぶ
(6) 裁判所の関与により債権者との個々の交渉をしなくてもいいから選ぶ
(7) 返済金額が明確で返済期間も決まっているので、将来に向けての家計再建プランが立てやすいから選ぶ
(8) 債務整理したことを家族や職場に知られにくいから選ぶ
(9) 特定の職業、資格に基づく業が制限されることはないから選ぶ
■ 弁護士・司法書士間で個人再生はバランスが良くて実現性の高い手続として評価される理由
(1) 債務整理の中で「ちょうどよい立ち位置」にある
(2) 家計再建の現実的な見通しが立てやすい<
(3) 社会的信用・立場を維持しやすい
(4) 裁判所が関与するため法的安定性が高い
■ 具体例:住宅ローンを抱える40代会社員の場合
■ 借金問題の無料法律相談のご案内
・日本法規情報 (債務整理相談サポート)
■個人再生の制度理念
個人再生とは、裁判所を通じて、借金の元本そのものを大幅に減額してもらい、原則3~5年で分割返済する手続き。住宅などの財産を守りながら、借金を大幅に圧縮できる点に特徴があります。詳しくは⇒こちら
借金問題に直面したとき、多くの人がまず思い浮かべるのは「自己破産」や「任意整理」でしょう。しかし、近年注目されているもう一つの有力な選択肢が「個人再生」という債務整理手続です。
任意整理も自己破産もそれぞれ役割を果たしうる領域というものがありますが、個人再生は、自己破産ほど極端ではなく、任意整理よりも効果が大きいという中間的でとてもバランスの取れた手続きと評価されます。
つまり、ある程度の継続的で安定した収入はあるものの、借り入れ金額が大きく、今の収入では返済が到底追いつかず大幅な借金減額が必要。でも、任意整理による利息カットだけでは不十分だし、しかし自己破産だけはどうしても避けたい。でも、このままでは自己破産せざるを得ず、自己破産は手持ちの財産や住宅ローン返済中の自宅も手放すことになってしまうが、それだけは避けたい思いです。その時にバランスがとれた有効な手続きが「個人再生」です。
個人再生は単なる債務整理ではありません。「生活再建支援制度(生活の再建と経済的更生の機会を与える制度)」として設計されています。
つまり、個人再生は、現状での借金の返済を続けていくと生活が立ち行かなくなってしまう人が、返済額を大幅に減縮し無理のない範囲できちんと返済を続けながら、生活を立て直せるよう支援する制度です。自己破産のようにすべての財産を失うのではなく、生活基盤をなす住宅や一定の財産を守りつつそれを活かしながら家計再建へ向けて再スタートを切れる仕組みになっています。
また、債権者にとっても、自己破産されるより一定の返済が見込めるため、公平性が保たれるのも特徴です。債務者と債権者の双方にとって現実的でバランスのとれた解決策が用意されている、それが個人再生の理念です。
■ 個人再生を選ぶ理由
(1) 財産を守りながら借金の元本も大幅に減額できるから選ぶ
個人再生のいちばんの特徴は、借金の「元本」を大幅に減らせる点にあります。
任意整理では利息のカットしかできないので、元本が大きいと借金問題の解決はかなり難しいですが、個人再生なら元本そのものを「返せない額」から「返せる額」に変えていきますので、借金問題解決に大きく寄与します。減額できる割合は約5分の1から条件次第では最大10分の1まで減額でき、しかも財産も守れるので、返済が苦しい人にとってはとても大きな助けになります。
※例:借金600万円 → 個人再生で120万円に減額 → 原則3年で分割返済(月約3.3万円)
(2) 安定した収入があれば手続きできるから選ぶ
個人再生は、継続して安定した収入がある人なら申し立てできます。パート・アルバイト・自営業者でも問題ありません。各人の収入に合わせて無理のない返済計画(再生計画)を立てることができ、しかも借金の元本そのものも減額できる手続なので、利息カットのみの任意整理では解決できない大きな借金であっても現実的な返済プランが可能です。
(3) 自己破産を避けたいという強い希望があるから選ぶ
任意整理ではとても借金問題を解決できない。でも、自己破産に対しては「世間体が悪い、恥ずかしい、人生の終わり、借金の踏み倒し・・・」というネガティブなイメージがぬぐい切れないので、どうしても自己破産だけは避けたい。だから個人再生を選びたい。
(4) 現在住んでいる家や財産を失いたくないから選ぶ
自己破産を選ぶと通常は家は処分の対象になってしまいます。その他の財産も一定の範囲を除き処分の対象になります。だから、一定の条件のもと家を守れる仕組み(住宅ローン特則)を備えている個人再生を選びたい。個人再生で住宅ローン以外の借金(消費者金融など)が大幅に減額されて、その減額した借金分を住宅ローンの返済に回せるので、基本的に住宅ローン会社にとっても不満はないはずです。
(5) 借金の理由を問わないから選ぶ
自己破産の場合、借金の返済義務を免責にしてもらうなら、裁判所から「免責許可」を受ける必要がある(免責不許可事由にあたらないこと)が、個人再生には「免責不許可事由」はないので、借金がギャンブルや浪費で生じたとしても借金の理由を問われずに手続きを進められます。
(6) 裁判所の関与により債権者との個々の交渉をしなくてもいいから選ぶ
裁判所が関与しない任意整理は債権者ごとに個別交渉でき、それが一つの売りポイントだが、裁判所が関与する個人再生では利害関係を持つ債権者すべてを裁判上に登場させ統一的解決を図ることになります。だから、面倒な個別交渉は不要で全債権者に同じ内容の再生計画案を提示すれば足ります。提示した再生計画案が債権者の多数決で可決されれば、すべての債権者に効力が及んで少数反対者の意向は無視できる。
(7) 返済金額が明確で返済期間も決まっているので、将来に向けての家計再建プランが立てやすいから選ぶ
個人再生では、法律の基準に則って借金の総額が大幅に減額されます。そして大きく減額された最低弁済額が算出され、それを3〜5年間で分割して払えばいい、というルールが明確に決まっている。しかも一定の条件のもと家も財産も守られるので、家計再建に大きな貢献を果たす。
(8) 債務整理したことを家族や職場に知られにくいから選ぶ
官報への掲載はあるけれど、見る人はほとんどいません。家族にバレる原因になりがちな「財産処分」「給与差押え」などが基本的に発生しないし、裁判所からの郵便物は個人名で届くため、郵送物から家族にバレる可能性も低いです。
(9) 特定の職業、資格に基づく業が制限されることはないから選ぶ
特定の職業、資格による収入源を失うことがないから、生活を安定させながら再生計画を進めることができる。個人再生の手続きを進めるために休職する必要がないため、同僚や上司に怪しまれるリスクを減らすことができます。
・それなりに継続した安定収入がある
⇒ 個人再生は各人の収入に応じた再生計画を立てられる
・でも、このままでは返済が難しく、借金を減額したい
⇒ 個人再生なら借金の元本を減額し、家計の再建を目指せる
・破産は避けたいし、財産や自宅は守りたい
⇒ 個人再生なら財産を残し、住宅ローン特則で自宅も守れる
・借金の理由が褒められたものではない(ギャンブルや浪費など)
⇒ 個人再生は「免責不許可事由」がないので理由を問われない
■ 弁護士・司法書士間で個人再生はバランスが良くて実現性の高い手続として評価される理由
個人再生は、「返済額の大幅な減額」「財産の保護」「返済計画の現実性」といった、債務整理において重視される要素を高い水準でバランスよく備えている制度です。そのため、依頼者のニーズに幅広く応えることができ、弁護士や司法書士からも「現実的かつ理にかなった制度」として高く評価されています。言い換えれば、債務整理の中で「ちょうどよい立ち位置」にある制度だといえます。
(1) 債務整理の中で「ちょうどよい立ち位置」にある
個人再生は、借金を大幅に減額できるだけでなく、財産や自宅を手放さずに済む可能性がある制度です。任意整理よりも大きな減額効果があり、自己破産のような財産処分のリスクも回避できるという、中間的かつ実用的な選択肢です。
(2) 家計再建の現実的な見通しが立てやすい
法律で、最低弁済額を原則3年(最長5年)で分割返済する仕組みが定められているため、返済の見通しが立てやすく、計画的な家計再建が可能です。無理のない返済額に調整されることが多いため、制度としての実現性が高いのも特徴です。
(3) 社会的信用・立場を維持しやすい
個人再生には自己破産のような「職業・資格制限」がないため、依頼者の現在の職業や社会的立場を維持しながら債務整理を行うことができます。特に公務員、会社役員、士業などに就いている方にとって大きな利点です。
(4) 裁判所が関与するため法的安定性が高い
個人再生は裁判所の監督のもとで進行し、再生計画が認可されれば債権者も法的に拘束されます。これにより、手続の透明性や法的安定性が確保され、債権者との信頼関係の下で計画的に返済が進められます。
利息カット中心。元本は減らない。 | |||
高価な財産は処分される | |||
あり(減額された金額を返済) | なし(免責されると返済不要) | ||
資格・職業の制限 | 一部の資格・職業に制限がある | ||
軽い負担だけど効果は少ない | 負担と効果のバランスが良い | 効果は大きいが負担も大きい |