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「債権者平等の原則」とは?債務整理の時に適用あるか?

< 目 次 >
債権者平等の原則の意味
債権者平等の原則」の根拠 ~物権と債権の違い~
(1) 物権とは?
(2) 債権とは?

3つの債務整理の手法と債権者平等の原則の適否
債権者平等の原則の例外 ~住宅ローン特則・物的担保制度~
(1) 個人再生の住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)
(2) 物的担保制度

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■「債権者平等の原則」の意味

 

債権者⇒お金を払えと要求する権利を持っている者。債務者⇒お金を支払う義務のある者。

「債権者平等の原則」というのは、1人の債務者に対し複数の債権者がいるときは、その全ての債権者は債権の発生原因や発生時期の前後、債権額の多小にかかわらず、債権者間には優劣はなくその持っている債権額に応じて、債務者の総財産から平等・公平に債務の返済を受けられなければならない(比例配当)という原則をいいます。

例えば、AはBから1000万円、Cから800万円、Dから200万円借りていました。もし、Aには3000万円の価値がある不動産を持っているのであれば、B、C、Dの債権の合計は2000万円ですから、各債権者間に債権の発生原因、発生時期、債権額の大小に差があろうとなかろうと、B、C、D各々の債権回収は間違えなく満額に果たされるわけで全く問題を生じません。

だから、この場合は「債権者平等の原則」が表立って出てくる必要はないのです。

しかし、Aにはたった1000万円の価値の不動産と現金は150万円しかない場合はどうでしょうか?

明らかに、B C Dの3人の債権額の合計金額(2000万円)の方が大きく、Aの持っている資産ではすべてを賄いきれません。

借金問題で苦しみ債務整理を真剣に考えている人たちのほとんどは、今現在そのような状態にあるか、今まさにそのような状態に陥らんとする人たちがほとんどだと思います。

このような状況で、先に述べた各債権者間に発生時期、原因に差があったとしても、それは除外してそれぞれが平等の立場で債権の回収が図られるべきとするのが「債権者平等の原則」というのです。

このような状況で、初めて「債権者平等の原則」が表舞台にでてくるのです。

つまり、債務者の持っている1000万円の不動産を金銭に替えて、現金150万円を合わせた資産合計金額1150万円を、各債権者にとっての「共同の責任財産」として、そこから各債権者がもっている債権額の割合に応じて平等に比例配当が受けられるということです。

したがって、Aの総財産1150万円を各自がもっている債権額(Bが1000万円、Cが800万円、Dが200万円)の割合、つまり5:4:1の割合で平等に配当していくのです。

よってBは575万円、Cは460万円、Dは115万円を限度(合計1150万円)に返済してもらえるということになり、B、C、Dそれぞれ自分たちが持っている債権額に足りませんが仕方がありません。平等に比例配当した結果の金額です。

そこにはBだけを優先して満額返済するとか、Dだけを後回しにするといったことはしません。これを「債権者平等の原則」というのです。

例えば、仮にBが個人で、CとDが大きな金融機関の場合で、AにとってBには昔から大変お世話になっていてお金の面では絶対に迷惑を掛けたくない。だから、Bに優先的に借りた1000万円を返済したいと思ってもそれをすることは許されません。それは債権者平等の原則に反することになってしまうからです。

この原則に反してBに満額返済してしまうと、返済を受けたBはC、Dから1000万円をAに戻す様に請求されることになります。
 

■「債権者平等の原則」の根拠
~物権と債権の違い~

 
なぜ、このような原則が生まれたかというと、

民法上、権利には「物権」と「債権」とがあります。

(1)「物権」とは?

「物権」とは、特定の物(動産たは不動産)に対して直接に支配し、それを誰に対しても主張できる権利をいいます。

例えば「所有権」とか「地上権」とか「抵当権」といったものです。この土地に自分が所有権をもっていたら「これはオレのものだ!」ということを誰に対しても主張できるし、また主張できなければおかしいわけです。万人に対して言えるわけです。特定の人のみにしか言えないというわけではありません。

そして「物権」には公示方法があります。例えば、土地や建物のような不動産であれば「不動産登記」があって、不動産ごとにそれがどのような不動産であるとか、その不動産の所有者は誰であるとか、その不動産を担保に誰がお金を貸しているとか、その不動産に設定されている権利関係の情報が世の中に公開されているのです。

動産の場合は、不動産のような「登記」ではありませんが、「占有」という外形的事実が公示方法となっています。登記簿のような書面化したものではなく、そのモノを占有しているという外形的事実状態が公示方法となります。

また、一つのモノには一つの物権しか成立しません。例えば、一つの土地のうえに完全かつ独占的な二つの所有権が重複して存在することはありません(一物一権主義)。

ただし、内容の矛盾しない物権の場合は一つのモノに複数の物権が成立することはあります。

例えば、一つの土地に所有権と地上権が両立するとか、もしくは一つの土地に第一順位、第二順位、第三順位といったように、順位をつけて複数設定される抵当権などはありえます。第一順位が二つあることはありえません。また、一つの土地にそれぞれ持ち分、区分けが決められての共有という形で所有権が二つあるということもできます。

以上のケースを除いて一物一権主義は堅持されています。

(2)「債権」とは?

それに対して、

「債権」とは、特定の人に対してのみ特定の権利を主張できる権利をいいます。「物権」のように誰に対しても主張できる権利ではありません。

例えば「AがBに対して100万円を返せ!と言える貸金返還請求権(金銭債権)」とか「AがBに対して映画のDVDを返せ!と言える返還請求権」といったものです。Aは全く関係ないCに「100万円を返せ!」「映画のDVDを返せ!」なんてことはいえません。あくまで特定の人Bに対してのみです。

そして、すべての「債権」はどんなものであっても最終的には金銭債権に転化できるものです。

例えば、先の映画のDVDというモノの返還をBに求める「債権」で、そのDVD自体をBが紛失したとか破損したとかで返還できなくなっても、それで債権はなくなってしまうわけではありません。その価値に相当する損害賠償債権という金銭債権に転化できることによって、形を変えて債権は存続して、その金銭を特定の人に請求できるのです。

だから、すべての「債権」は、債務者の持っている全財産(お金そのものではなく、車とか骨董品であっても)を金銭的な価値に置き換えて評価して、いざというときはそこから返済を受けられるか否かを判断することができ、そして「債権」の場合はそれは当然のこととして予定されています。

また「債権」自体には「物権」のような「登記」or「占有」といった公示方法はありません。

だから「債権」という権利は、1人の債務者に複数の債権者がいてもいいわけです。そんなことは世の中にザラにあることで、しかも各々の債権者はお互いに公示されないために、債権者間でほかにどのような債権を持ったどのような債権者がいるのか知ることができません。

このように「債権」は一人の債務者に複数の債権者がお互いを知り得ない状態で存在でき、しかも前述したように、各債権者は債務者の全財産に同じような利害関係を持っていて、つまり、債権者の全員が共通して債務者の全財産が金銭的価値に転化できることに注目しているのです。

 
つまり、債務者が持っている全財産の金銭的価値は、各債権者がいざという時は「最終的にあてにしている責任共同財産」となるのです。

このように、各債権者がお互いにその存在を知り得ないし、しかも債務者の全財産に同じような利害関係を有するとなると、ある債権者がほかの債権者に優先して債務者の財産から弁済を受けることを認めることは不公平といえます。

このことが「債権者平等の原則」を生みだされた理由となっています。

したがって、各債権者のそれぞれの立場から債務者の責任共同財産に対して、きちんとした手続きでもって強制執行を仕掛けて債権回収はできますが、債務者の総資産額と各債権者の総債権額を比べて後者の方が大きく(債務超過)、しかも各債権者からの差押え・強制執行が競合した場合は「債権者平等の原則」が働き、各債権者の債権額に応じて平等に比例配分で債権回収することになります。

先の事案で述べた「債権額の割合、つまり5:4:1の割合で平等に配当していく」ということになるのです。
 

■3つの「債務整理」手法と「債権者平等の原則」の適否

 
さて、このブログでの主要テーマである「債務整理」の三つの手法を見た場合、

「任意整理」については当事者間(債権者と債務者間)の私的な自由な話し合い、交渉で借金問題を解決に導くので、それぞれの関係性において、債務者側が特定の債権者を選択して個別個別に解決できるところに特色があります。だから、そこには「債権者平等の原則」は働きません。

「個人再生」の手続き、と「自己破産」の破産手続きは債権者にとっては不利益になるので、裁判所が介入する以上、債権者間で不平等な扱いにならないように、すべての利害関係を有する債権者を共通の土俵(訴訟の場)に上げて不平等がないように一括処理で解決されることが要請されます。決して個々に分けてそれぞれ別個に処理しません。だから、そこには「債権者平等の原則」が働きます。

だから、後先を問わず「個人再生」「自己破産」の手続きが絡んできた場合、債務者の負債総額が債務者がもっている総資産額より大きい場合(債務超過)は、債務者がある特定の債権者のみに優先的に弁済するという行為をすると、それは「偏頗(へんぱ)行為」として平等・公平を基調とする「債権者平等の原則」に違反することになります。

例えば、冒頭で述べた例でAが持っている総財産額が1150万円にすぎないにもかかわらず、未だに三人のB、C、Dにそれぞれ1000万円、800万円、200万円の借金を負っていて、それにもかかわらずAはBだけに1150万円のうち優先的に800万円を返済してしまうと、BとDからみるとAのCに対する返済行為は「偏頗(へんぱ)行為」として不平等・不公平な扱いであり「債権者平等の原則」に違反することになるのです。

その場合は「個人再生」では認可が下りなかったり「自己破産」では免責が認められなかったりします。

(※なお、債権者平等の原則に従って配分するとすれば、冒頭に述べたようにBは575万円、Cは460万円、Dは115万円を限度に返済してもらえるということになります。)

要は「個人再生」「自己破産」は裁判所が介入して債権者の同意を要せずに、強制的に債権額が大幅に減らされたり、あるいは債権回収を断念させたりして借金問題を解決しようとする手法なので債権者にとっては不利なわけですから「債権者平等の原則」は金銭的かかわりを持つすべての債権者の利益を平等に守る原則として厳格に適用しなければならないということになります。


 

■「債権者平等の原則」の例外
~住宅ローン特則・物的担保制度~

 

(1) 個人再生の「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」

ただ「債権者平等の原則」といえども金科玉条の如く、一切例外を認めないというわけではありません。大いに例外があります。

実際に、原則「債権者平等の原則」の適用がある「個人再生」でも「住宅ローン」返済中の住宅に限っては「債権者平等の原則」が働かないようにすることができます。つまり、その適用外にすることができるのです。

例えば、債務者Xには、債権者の住宅ローン会社Yの他に複数の債権者がいるとします。ただ、家計の資金繰りが悪化して月々の返済が滞り始め状況は好転しそうもない。住宅ローン会社Yの持つ債権額は3000万円、その他の債権者たちの合計債権額は600万円あって、現在の債務者Xの財産は1000万円価値を有する有価証券のみ。このままでは借金返済が困難なため、債務者Xは債務整理に個人再生という手法を選択したとします。

もし、住宅ローン会社を含めた全ての債権者に「債権者平等の原則」が働くなら、全ての債権者はそれぞれ持つ債権額に応じて比例配分された限度で返済を受けるに過ぎないことになります。

※通常は、住宅ローン会社は「債権者平等の原則」が適用されると、各債権者の債権額に応じて比例配分されて満額の債権回収ができなくなるので、それを回避するために、その住宅に抵当権を持っているのが通常です。後に述べますが抵当権を実行されると、住宅は競売されて他の債権者に優先的に債権を回収できることになります。ただ、それによって債務者Xはマイホームを失う羽目になります。

ところが、個人再生には「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」というものがあって「住宅ローン」だけは「債権者平等の原則」は適用外となり「住宅ローン」は今まで通り維持されて、債務者Xは住宅ローン会社Yに当初約束した返済額を返済し続けることができ、住宅ローン会社もその返済額を他の債権者に優先して合法的に受け取ることができるのです。

これによって、債務者Xは住宅ローンが維持されるわけだからマイホームはそのまま維持されて、これからも住み続けることができるのです。つまり「住宅ローン特則」とは、債務者のための制度で「債権者平等の原則」の適用を排除して、債務者のマイホームを維持するための仕組みといえるのです。

この「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」は、本当に「債権者平等の原則」の適用外を認めた特別なケースです。

(2)「物的担保制度」

通常、債権者は自ら望んで「債権者平等の原則」の適用を排除して、債務者の総財産から他の債権者に先駆けて優先的かつ満額の債権回収を図りたいと考えているはずです。

つまり「債権者平等の原則」の適用を排除して自らの債権を優先的に回収できるように、一定の方策を施した債権者には、他の債権者との平等性を維持するのではなく、むしろ一定の方策をした債権者に優先的に債権の回収ができる優先弁済権を与える方が公平だといえる場合があるのです。

それが「物的担保制度」です。いわゆる「抵当権」とか「質権」といった担保物権です。

そういった担保権によって担保された「債権」は「被担保債権」といって、まさに「債権者平等の原則」の例外措置をとったケースとして、その債権者は、他の担保権を持っていない債権者(一般債権者)に優先して弁済、返済を受けられる権利を持つことになるのです。

例えば、債務者が申し立てた自己破産が絡んできたときは、破産財団のある特定の財産に担保権を有した担保権付債権を「別除権(べつじょけん)」と言います。自己破産手続には全く関係なく、その進行途中でも、自己破産手続外で担保権を実行して債権の優先弁済を受けることができます。

土地とか家屋といった不動産に設定する担保権で「抵当権」などはよく耳にすると思いますが、貸す金額が大きければ大きいほど、担保権を設定するのは今の世の中では常識であり、そういった事案では「債権者平等の原則」は働かないということです。

例えば、先にあげた例でいうと、AはBから1000万円、Cから800万円、Dから200万円借りていて、Aは1000万円の不動産と150万円の現金しか財産がない場合、つまり負債総額の方が保有している総資産額よりも多いので、Aが自己破産申立て、あるいは個人再生申立をするとします。

この場合、Cだけが万が一の場合に備えてAの不動産に抵当権という担保権を持っていたとするとどうなるか?

この場合、Cは別除権者として優先弁済権をもっていることになり、破産手続、民事再生手続(これらは債権者平等の原則の適用がベースにある)には左右されません(担保権の実行は、破産手続き民事再生手続きによって中断されません)。その不動産は競売手続を通じて換価処分(売却されて金銭に変わる)された全資産額1150万円から優先的に自分の債権額800万円まるまる全額を返してもらえます。

そして、残金350万円については、BとD間で分け合うことになるわけですが、彼らは担保権を持っていないので「債権者平等の原則」が適用されて平等・公平に比例配分で分けられます。結局、Bは約290万円、Dは約60万円しか返済を受けられないことになるのです

もちろん、個人再生や自己破産といった債務整理を経た場合は、BとDには更なる減額、免責がなされる可能性は大きいです。

以上をまとめると、

貸金返還請求で複数いる債権者の間では「債権者平等の原則」が働くのが大原則であり、だから、債務整理の手法である「個人再生」や「自己破産」の手続きでは、基本的に「債権者平等の原則」が働くことになります。

ただ、これに抵当権などの物的担保権が絡んでくると、その限度で「債権者平等の原則」が大きく変容してくるのを認識しておいてください。
 

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公開日:
最終更新日:2020/07/24