「任意整理」を弁護士や司法書士に依頼すると、気になる費用はどのくらい?
2025/02/26
(2)「任意整理」にかかる報酬費用はくらいなの?
①「相談料」
②「着手金 (初期費用)」
③「解決報酬金 (基本報酬金)」
④「減額報酬金」
⑤「過払い報酬金」
(3)「任意整理」のすぐには費用が支払えない場合はどうする?
①「まず、着手金について」
②「次に、成功報酬 (減額報酬・解決報酬)」について」
(4)借金問題・無料法律相談の案内
● 日本法規情報 (債務整理サポート)
■ 弁護士・司法書士に「任意整理」を依頼する費用とは?
「弁護士」とは、全ての法律問題に携わることが出来て、依頼人に成り代わって裁判所での訴訟行為、および裁判外で相手方との代理交渉をできる国家資格者です。
「司法書士」とは、法律に関する書類の作成や提出といった手続の代行を主要業務とする国家資格者です。
「任意整理」とは、貸主の貸金業者(債権者)と借主(債務者)との当事者間で借金の返済についての交渉を通して、無理のない減額された返済プランを決めていく債務整理手続であり、その交渉には裁判所は一切かかわってきません。当事者間の話し合いで解決を目指します。
弁護士・司法書士である専門家に依頼しないで進めていこうとすれば、弁護士・司法書士費用はかかりませんが、費用がかかっても交渉をスムーズに行かせて、借主の思う方向に減額させるために弁護士や司法書士に問題の解決を依頼するケースが多いです。
その場合、専門家に依頼すれば、当然に実費ということで手続費用はかかりますが、裁判所はかかわらないので、それに関する費用はいらなく高額にはなりません。
なお、司法書士に依頼する場合、司法書士の主要な業務は、前述のとおり法律に関する書類の作成や提出といったあくまで手続の代行です。そこには相手方である貸金業者と借主の代理人として任意整理の交渉できる権限はないことに注意が必要です。
でも、通常の司法書士ではなくて「認定司法書士」の資格を持つものであれば、紛争金額140万円が限度となりますが、借主に成り代わって任意整理の代理交渉を進めることが出来ます。
(※さらに「認定司法書士」ができるのは、紛争金額140万円の範囲で簡易裁判所での申し立てなどの訴訟行為ができます。簡易裁判所のみで地方裁判所での訴訟行為はできません。)
そういったなか「任意整理」での費用とは、任意整理による解決を弁護士や司法書士に依頼したことでかかる費用のことで、この費用は手続費用(実費)と報酬費用の二つに分かれます。
● 手続費用(実費)とは、事件処理のために移動する際の交通費や文書等を郵送する際の通信費などなどです。依頼内容によっては、文書鑑定費用なども入ります。
● 報酬費用とは「任意整理」による解決をそれを生業とする弁護士や司法書士にお任せした以上、その見返りとして当然に支払う費用のことです。
■「任意整理」にかかる報酬費用はいくらいか?
「任意整理」における報酬費用というのは、主に下記の「法律相談」を除く4つの費用に分かれます。呼び名は各事務所によって異なってきますが、費用によっては徴収しない事務所もあります。
ところで、弁護士、司法書士の報酬費用については、平成15~16年に自由化されて今では一般的な意味での報酬基準というのはありません。弁護士、司法書士各自が独自の判断で報酬基準を作って、その基準にしたがって、具体的な報酬額を依頼人との協議により自由に取り決めているのです(報酬費用の自由化)。
ところが、本件の主題となっている『任意整理の報酬費用、過払金返還請求の報酬費用』に限っては、一部の弁護士、司法書士に行き過ぎた営利志向に走って不当な報酬を請求をするケースが見受けられたので、報酬費用の完全自由化はやめて守らなければならない基本的な指針を設けました ⇒⇒「債務整理事件の処理に関する規程(指針)」(以下、業界ルールと記します)
●『日本弁護士連合会の債務整理事件における報酬に関する規程』
⇒https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_93r.pdf
●『日本司法書士連合会の債務整理事件における報酬に関する指針』
⇒http://shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2016/05/a8e0246fd8c9b3ca35822ccdfc06fa49.pdf
つまり、任意整理事件、過払金返還請求事件の報酬費用に関しては、いわゆる【業界ルール】があって自由化を制限しているのです。
ただ、これには罰則規定はなく、これに違反したところで表立ったお咎めは受けることはありません。それをいいことに一部にはこの【業界ルール】を守らない事務所があるのも事実で注意する必要があります(特に、後述する減額報酬の項を参照)。
なお「個人再生」「自己破産」事件については、この報酬費用規制の対象外となっており、報酬費用は100%自由に決められることになっています。
①「法律相談料」~30分あたりの相場5000円程度、無料としている事務所も多い~
依頼人は、いきなり債務整理(任意整理)を依頼するわけではなく、まずは法律相談を受けるのが常套手段です。したがって、「法律相談料」とは、債務整理(任意整理)を依頼する前に相談する際に生ずる費用です。つまり受任契約を結ぶ前段階ですから「着手金」とは異なります。
大体の相場は相談時間30分程度で5000円程度です。もっとも、現在は「法律相談料」初回無料を掲げている事務所が多いです。
②「着手金(初期費用)」貸金業者1社あたりの相場2万円~5万円程度
「着手金」とは、依頼された案件の結果が成功、不成功に関係なくに、弁護士・司法書士にその案件に対応してもらう、つまり、弁護士・司法書士がその依頼を正式に引き受けるという受任契約を締結した段階で支払う費用の一部です。報酬金の内金、手付とも違うので注意を要します。
相場は借入先1社あたり2~5万円程度ですが、着手金には上限がないので、5万円を超える事務所もあります。いずれにしても、依頼人から報酬を受け取れない場合に備えて、弁護士事務所では着手金を設定するのが通常です。でも「適正かつ妥当な金額」にしなければなりません。借入先5社からの借り入れがあれば、×5となって、10万円~25万円程度となります。
ただ、最近では、着手金を取らない事務所もでてきています。特に司法書士の場合は【業界ルール】で着手金に関する規程はなく、よって、着手金を取らない事務所が非常に多くなっています。
③「解決報酬金(基本報酬金)」
「解決報酬金」とは、債務者(依頼人)の借金トラブルを解決した場合に支払われる報酬金のことであり、依頼を受けた弁護士の報酬費用の一つです。あくまで「解決報酬金」は成功報酬の一つであって、減額が成功して初めて支払われるモノで、減額が成功しない限り依頼人は支払う必要はありません。
弁護士の【業界ルール】では、借入先1社あたり2万円を上限(税別)。もし、貸金業者が商工ローンの場合は借入先1社あたり5万円を上限(税別)と金額が決められています。
したがって、借入先が2社なら「解決報酬金×2」で4万円。 借入先が5社なら「解決報酬金×5」で10万円ということになります。
司法書士については、その【業界ルール】で、司法書士は着手金・成功報酬など名目を問わず1件につき「定額報酬」5万円を上限に請求でき受領できると定められています。そして「減額報酬金」「過払い報酬金」「実費」を除いて「定額報酬金」以外は報酬を受領してはならないとしています。
④「減額報酬金」
「減額報酬金」とは、貸金業者と契約時に合意した請求金額から、任意整理によって減額された分をもとに算定された報酬金をいいます。したがって、これも「解決報酬金」と同じで減額に成功した場合に限って請求できる成功報酬金の一つです。
弁護士、司法書士、両方の【業界ルール】では「減額報酬」の金額は借入先1社あたり減額できた金額の10%以下(税込みで11%)が上限となっています。
例えば、任意整理の交渉で、借金100万円が50万円に減額合意した場合は「減額報酬」は10%(税込11%)の5万円以下ということになります。
この場合、問題となるのは、一言「減額」といっても借金総額のどの部分(元本か?、経過利息か?、将来利息か?、遅延損害金か?)を減額できた場合に「減額報酬」が発生するのか?という点です。
先の【業界ルール】の「債務整理事件の処理に関する規程(指針)」の趣旨からすると「減額報酬金」の対象となる金額は元本であり、元本の減額をターゲットにして初めて「減額報酬金」が発生して金額が算定されるのが本来の筋です。
ところが、事務所によっては、利息カットだけでも減額できたとして減額報酬を請求してくるところがあります(※)。対象の利息が利息制限法に従った適法金利であり、それを交渉の末カットできた場合にも減額報酬を請求するのですが、この扱いは、先の【業界ルール】の趣旨に反するやり方とはいえ、このルールには罰則規定がないことをいいことに、このような扱いをとっている事務所も存在します。
(※ 利息カットだけでも支払う金額は減額されるわけだから、詳しいことを知らない依頼人はそれだけでも満足してしまいかねない)
つまり、元本の減額分を算定基準として「減額報酬金」を決める事務所もあれば、利息等のカット分も「減額報酬金」の算定に加える事務所もあるということです。「任意整理」を依頼する際、その事務所がどちらのスタンスかを確認することが大切です
要するに【業界ルール】では「減額報酬金」は、元本と最終的に支払うべき金額との差額の10%(税込11%)です。よって、返済滞納中で利息・遅延損害金が大きく膨らんでいて、それらがすべて免除されても元本が減らない限り「減額報酬金」は発生しないことになります。
例えば、次の具体例で考えてみましょう。
金額300万円を年利15%で5年間(60回分割)で完済する約束で借金しました。
⇒紛争金額300万円は弁護士が扱う案件であり、司法書士が扱える紛争金額の上限は140万円ですから、300万円の案件は扱えません。(関連記事)。
毎月の返済額:71,369円
5年間の利息:1,282,140円
返済総額:4,282,140万円
5年間で返済する場合は、約128万円の利息が発生してしまい利息だけでもとても大きな金額となってしまいます。
この借金を弁護士に「任意整理」を依頼したとします。通常は和解成立日からの約128万円の利息をカットされ、返済総額は元本だけの300万円だけとなり、それを5年間で返済すればいいことになります。
この具体例で【業界ルール】を守って「減額報酬」を算定すると、カットされるのは利息だけで元本は減額されていないので、依頼人に請求できる「減額報酬」はゼロという事になります。それに対して【業界ルール】の趣旨に反して、利息(適正金利)のカットも「減額報酬」を算定する際の対象とする事務所では「減額報酬」約428万円から約128万円をマイナスした300万円の10%、つまり30万円を「減額報酬」として依頼人に請求できることになります。
もっとも、注意すべき点は「任意整理」は、本来は「経過利息、将来利息、遅延損害金」のカットを目指す手続であり、元本の減額を目指す手続ではありません。だから、例えば、元本の300万円が「任意整理」の交渉で200万円に減額されるというのは滅多にないわけです。ただ「任意整理」は交渉事ですから、交渉が予想を超えてうまくいき、利息カットを超えて元本の減額まで勝ち取ることはあり得ますが、貸金業者相手ではあまり考えられないでしょう。
したがって【業界ルール】を守る事務所では「減額報酬」が発生するような事態はほとんど出て来ないわけです。そういった流れで事務所によっては「減額報酬」そのものを請求することをやめている事務所もあります。
もっとも、2010年以前の利息制限法の上限金利を超えた違法金利(グレーゾーン金利)の徴収が蔓延っていた頃の多くは「過払い金」が発生していて、それを元本に充当することで元本が大幅に減額、あるいは消滅することもありました。その場合は「減額報酬」が発生するケースが出てきます。
しかし、その後の最高裁判例と利息制限法、出資法の改正によって、グレーゾーン金利が廃止されたことから、各貸金業界は法令上限内の適正金利を順守するようになって「過払い金」の発生は非常に少なくなってきました。よって【業界ルール】を守る事務所では、任意整理での「減額報酬」はないことになっています。
但し【業界ルール】を守る事務所であっても、例えば、利息カットの交渉自体が非常に困難を極め、それでも何とか利息カットを勝ち取ったような非常に難しい事件であった場合は、まさしく専門家としての弁護士の真骨頂を発揮したケースとして「減額報酬」を請求することは十分あり得ます。その点は弁護士の判断に任されます。
⑤「過払い報酬金」
「過払い報酬金」とは、過払い金があった場合、まずは元本が完済にるまで充当されて、それでも未だ過払い金が残っている場合は、依頼人は貸金業者にその残った過払い金返還請求権を行使できます。その返還できた金額に応じて弁護士や司法書士に支払う報酬のことを指します。
過払い金報酬は成功報酬であり、弁護士が請求できる上限金額の相場は、返還してもらえた過払い金額の20%以下(税別)の金額となり、和解ではなく訴訟まで発展して解決した場合は、さらに5%程度上乗せになり25%以下(税別)の金額になります。
つまり、過払い金返還請求が成功して100万円の過払い金が戻ってきた場合は「任意整理」などの和解で戻ってきた場合は20万円。返還請求の可否について訴訟にまで発展して戻ってきた場合は25万円の報酬金を支払う事になります。
なお、事務所によっては着手金をとらなかったり、その他の報酬をとらなかったり色々あるので、必ずしも20%、25%ときっちりと決まっているわけではありません。若干多く取る事務所もあります。したがって、依頼する際に確認するのが良いです。
なお、具体的に返還請求権を行使できる過払い金がなくて過払い報酬金が発生していなくても、過払い金を元本に充当されて元本が減額されるならば、司法書士、弁護士は④で述べた減額報酬金を請求できる余地がでてきます。
債務整理の相談を受ける際に支払う費用 | おおよそ30分5000円程度 (近年では初回無料法律相談を実施している事務所が多い) | 解決へ向けて正式に依頼した段階(委任契約)で支払う費用 | 借入先1社あたり2〜5万円程度が普通ですが、特に上限はありません。司法書士を中心に無料とする事務所が非常に増えている |
借金を減額できたときに支払う費用 | 弁護士は借入先1社あたり2万円が上限、但し商工ローンは5万円が上限。司法書士は定額報酬として1社5万円が上限 | |
借金の減額幅に応じて決まる費用 本筋は元本の減額幅によるので、元本の減額はない任意整理では想定しがたい。 | 弁護士、司法書士共通で減額分の10%上限 | |
過払い金回収に成功した場合の報酬金。 | ・交渉で解決した場合:回収額の20%上限 ・訴訟で解決した場合:回収額の25%上限 これも弁護士、司法書士共通。 |