自宅(不動産)、給与、預金が「仮差押え」された時の債務者側の対処方法は?
2020/07/25
■仮差押えへの債務者の対処方法は?~債務者が損害を被る恐れがあるため~
① 相手(債権者)が提起した本案訴訟で争う対処法~2つの主張が考えられる~
a.債務者が仮差押えを根拠づける債権なんてそもそも存在しないと主張。
b.債務者が仮差押えを根拠づける債権の存在は認めるけれどその金額が違うと主張。
② 本案訴訟で争わないですぐに仮差押えを解除したいときの対処法
a.身に覚えがない「仮差押え」に対しては「仮差押解放金」
b.身に覚えがある「仮差押え」に対しての対処法は相手方との交渉
③ 保全異議の申立てでの対処法~最も一般的な方法~
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■ 仮差押えとは?それをする意味?
債権者が貸金返還請求権訴訟を起こして貸金を取り戻すためには、当然、その裁判で勝訴の確定判決を勝ち取らなければなりません。
そして、強制執行制度というのは、その勝訴の確定判決に実効性をもたせるために、つまり債権の回収をより確実に実現するためのシステムです。
ただ、裁判は争い事ですから決着まで時間がかかるのは已む得ません(平均半年はかかる)。そうした訴訟中に相手方が裁判が自分に不利に進行していると察知したら、債権回収のターゲットになる財産、資産(例えば、自宅、給与、銀行預金など)を取り上げられないように、隠されたり処分されたりすることが十分考えられます。
仮に裁判に勝って相手にいざ強制執行を仕掛けても相手の財産がすっかり消えてしまっていては、債権回収は非常に困難になって、せっかく時間をかけて裁判をやったのにまったく意味がなくなってしまいます。
だから、そのような事態を防ぐには、裁判(訴訟)を起こす前に相手方に強制執行できる財産があるかどうかを調査して、裁判に勝って強制執行で確実に債権回収できるように、そのターゲットとなる財産を予め移動させないようにしておくこと必要です。
これを「仮差押え」といいます。それは後述しますが「民事保全手続き」の一つとされています。
保全手続きの申し立てがあったときは、当然に裁判所は相手方に知らせることなく、スピーディーに手続きを進めていきます。
そういった意味で「仮差押え」は債権回収を確実に実行ならしめるために必要かつ有効な手段であることには間違えありません。
債権者側としては、せっかく勝訴したのに「相手の財産が消えていた!」てなことにならないように「訴訟を起こす前にまずは保全手続きを!」ということです。
※「仮差押え」⇒「民事保全手続き」のこと。「差押さえ」⇒「強制執行手続き」のこと。
この「仮差押え」が認められた場合を債務者の側から見てみると、
その対象が【自宅】などの不動産だと、裁判所書記官の職権で「仮差押え登記」がつき、もちろんそのままだと今までと同様住み続けることができますし、第三者に売却もでき移転登記もできますが、もし債権者の確定勝訴判決が下され、強制執行の段階に行くと、第三者への移転登記よりも「仮差押え登記」の方が先になされているので、その第三者の存在を無視して競売に掛けられてしまう運命にあります。
その対象が【給与】だと、裁判所から勤務先に「仮差押え決定正本」が届き、給与債権はその4分の3は「差し押さえ禁止債権」ですから、それを除いた4分の1相当分が給与として支給されず、確定判決で決着がつくまで勤務先内の留保されます。
その対象が【銀行預金】だと、裁判所から銀行に「仮差押え決定正本」が届き、その口座残高が500万円で貸金債権が300万円だった場合、その300万円だけが別の管理口座に移されます(払い戻し禁止命令)。もちろん、その時点では預金者はその金額を失ってしまうわけではないですが、確定判決で決着がつくまで引き出すことはできません。
つまり「仮差押え」の段階では、あくまで「仮に差し押さえている」だけなので、債権者に権利が移転するわけではありません。ただ、法的に動かせない、止め置き状態にしておくということです。
そして、その仮差押えの対象が債権者に正式に移るのか、それとも債務者に留まるのか、の最終判断は「仮差押え」の後には必ずと言っていいほど行われる本案訴訟によって決まります。そこで債権者の確定勝訴判決を得ると強制執行が行われるというわけです。
仮差押え⇒本案訴訟⇒確定勝訴判決(債務名義)⇒強制執行⇒債権回収
ただ、この順番は定番というだけであって、実際は本案訴訟と仮差押えとが同時にする場合、本案訴訟の途中に仮差押えをする場合、また仮差押えだけで債務者が要求に応じて訴訟をせずに終わってしまうこともあります。
これができるのは「仮差押え(民事保全手続き)」と「訴訟(裁判手続き)」が別個の手続きであり、裁判所の中でも担当部署が違うからです。
■ 仮差押えへの対処方法は?~債務者が損害を被る恐れがあるため~
ここまで述べたことで「仮差押え」というのは、専ら債権者側の利益を図るための極めて有効な手段であるとお分かり頂けたはずです。
でも、まだ、裁判(本案訴訟)をやっていないのに、しかも債権者の一方的申し立てで債務者への事前の通知などがなく、突然に銀行口座の金額を引き出せなくなったり、給与の4分の1が支給されなくなったり、自宅などの不動産に「仮差押え登記」が付けられ、実質的に自由に処分ができなくなったり、言ってしまえば、債務者側からすればとんでもない話しです。
「仮差押え」を申し立てた債権者が、必ずいつも正しいとはいえないし「仮差押え」されることに、当然納得いかない債務者もいるだろうし、時として債務者の経済活動に大きな打撃を与える恐れさえあります。
例えば、銀行預金が仮差押えされることで、銀行融資の返済につき期限の利益を喪失し、一括の返済を迫られるとか、売却を予定していた不動産が事実上売却ができなくなってしまうとか、また新たな銀行融資が下りなくなって事業の継続ができなくなってしまうとか、様々な負の事態が想定されるのです。
もしそうなったら、大変なことなので「仮差押え」といった保全に関する手続きは、迅速に進めていく必要があるも非常に厳格かつ複雑であり、とても素人が簡単にできるシナモノではありません。当然、それに付随して仕掛けられる側の債務者にもいくつかの救済手段が用意されています。
①相手(債権者)が提起した本案訴訟で争う対処法~2つの主張が考えられる~
債権者の「仮差押え」には納得できず違法であり、裁判所には「仮差押え」の取消を求めたい場合は、相手(債権者)が提起した本案訴訟で徹底的に争って勝訴を勝ち取ることで実現します。その際の債務者側の主張は次の二つが考えられます。
a.債務者が「仮差押え」を根拠づける債権なんてそもそも存在しないと主張。
⇒貸金債権とされる100万円は、実際は借りたのではなくもらったもの。だから、債権なんて存在しなく「仮差押え」は違法と主張。
b.債務者が「仮差押え」を根拠づける債権の存在は認めるけれど、その金額が違うと主張。
⇒貸金債権があるのは認めるけれど、その金額は300万円ではなく100万円。だから、300万円分の財産の「仮差押え」は違法と主張。
もし、この本案訴訟で債務者の方が勝訴すれば、債権者の「仮差押え」は違法ということになり「仮差押え」された財産は債務者の元に戻ってくるわけです。「仮差押え」物件が不動産なら仮差押登記が外れます。
その勝った際の手続きは「事情の変更による保全取消し」を、民事保全手続きをした裁判所の部署に申し立てることで「仮差押え」は取り消されて、財産は債務者の元に戻ってきます。なぜなら、先に述べたように「民事保全手続き」と「裁判手続き」は別個の手続きだからです。
ところで、その本案訴訟に勝訴したら、当然財産は戻ってくるわけですが、そうとはいえ、裁判はお互いが真正面からぶつかり合って争うわけですから決着までに時間がかかります。その間、「仮差押え」で自らの財産を臨機応変に運用できないということは、先に述べたように、債務者は大きな痛手を被る恐れがあるのです。⇒次の項目②を参照。
もっとも、その間に受けた損害は「仮差押え」をしてきた債権者に損害賠償できます。裁判所としても本案審理する前なので、本当はどっちが正しいのかわからないので、このような事態に備えて、債権者が「仮差押え」をする場合、損害賠償の引当金となる保証金を提供しないと「仮差押え」を認めない態度をとっています。
そうとはいえ、債務者の受けた損害の全てが全て回復できるとは限りません。
②本案訴訟で争わないですぐに「仮差押え」を解除したいときの対処法
このケースは「仮差押え」を受けるに足る身に覚えがまったくない、受けることに到底納得がいかない場合、あるいは「仮差押え」を受けてもしょうがない、受けるに足る身に覚えがある場合、いずれかに限らず、とにかく目の前にある「仮差押え」を一刻も早く解除したい!場合です。
a.身に覚えがない「仮差押え」に対しては「仮差押解放金」
これが当てはまるケースというのは、債権者の主張には全く納得がいかないので、その主張にはあとから全面的に争うつもりだが、とりあえず何とかしたいのは「仮差押え」です。当該不動産は売却直前だったにもかかわらず「仮差押え」されたために売却できなくなった、このままだと契約自体が流れてしまう。この状態を早急になんとかしたい!というケースです。
そのために「仮差押解放金制度」というものがあります。これは債権者側の請求金額に見合う、相当する金額(裁判所が決めます)を債務者側が「仮差押解放金」として供託することで、不動産への「仮差押え」執行をとりあえず解除、停止、取消してもらえるのです。
もちろん、仮差押解放金の支払いによって、仮差押え自体がなくなるわけではありません。仮差押え命令の存続を前提として、その執行が取り消されるものです
だから、この金額は、本案訴訟が決着つくまでの「保管する」ということであって、一足飛びに債権者の手に渡ってしまうわけではありません。よって、その「解放金」は本案訴訟で債権者が勝訴すれば、一定の手続きを経て債権者の手に渡され、債務者が勝訴すれば、一定の手続きを経て債務者の手に戻されます。
もっとも、これは、お金の余裕があってのできる方法で、それに相当する金額が用意できなかったら、この制度を利用する前提が欠けてしまいます。しかも、お金を払ってでも仮差押えを解除させたいと切に思う不動産とか給与債権がある場合には、この方法を意味があるかもしれませんが、「仮差押え」の対象が銀行等への預金債権の場合はあまり意味がないです。預金という現金を守るために現金を供託するのは意味がないからです。
b.身に覚えがある「仮差押え」に対しての対処法は相手方との交渉
これが当てはまるケースというのは、債務者側が本案訴訟にもっていっても、もはや勝つ見込みがないだろうと思っている場合です。
この場合、結論を先に言ってしまえば、基本的には債権者が請求する金額を支払わなければならないのです。
でも、そういうなかでも、いち早く「仮差押え」を外してもらいたい、そして最終的には強制執行(本)差押さえを止めてもらいたいと切に思うのであれば、それはもはや裁判所に何かを申すというよりは、直接に債権者に話し合いを申し込んで、何とか外してもらうしかありません。全額の返済は無理ならばある一定金額にまけてもらうとか、返済方法を一定期間の分割にしてもらうとか、交渉役に弁護士に依頼するか否かはともかく、交渉の成り行き次第となります。
この場合も最も効果が出るのは「仮差押え」物件が不動産の場合でしょう。自宅を「任意売却」する場合などが当てはまる例といえます。
③「保全異議の申立て」での対処法~最も一般的な方法~
これまで「仮差押え」に対しての対処法として、いくつか述べましたが、実は「仮差押え」に納得いかない場合に、その不服申し立て手段として最も多く利用されていのが、この「保全異議の申し立て」なのです。
「保全異議の申立て」は、債務者が民事保全手続きを担った裁判所にその旨の申し出て、当該「仮差押え」の命令を出した裁判官とは、別の裁判官が果たして「仮差押え」命令を出したことが正当であったかを今一度審査し直してもらう手続きです。
この再審査によって1)「仮差押え」自体の取り消す 2)「仮差押え」の範囲、金額を変更する 3) これまで通りの「仮差押え」を再認可して続行する のいずれかを決定するのです。
「保全異議の申立て」をする申し立て理由は何でもいいです。制限はありません。
①で述べた「仮差押え」に全面的に納得がいかず、本案訴訟で徹底的に争える状況で、相手(債権者)の出方を待つのではなく、こちらから積極的に「保全異議の申立て」でもって打って出ることもできますし、「仮差押え」を受けることは甘んじて受けるのは認めるとしても、300万円の仮差押えは多すぎる、借りたのは100万円だけだ主張して、それを理由に「保全異議の申し立て」をすることができます。
また、まだ裁判の結果が出ていないにもかかわらず、生活の必要な毎月の給与債権や銀行預金債権から「仮差押え」をするのは酷すぎる、「仮差押え」を受けるにしても、まずは不動産に「仮差押え」執行をしてほしい、それを理由に「保全異議の申し立て」をすることもできます。
さらに言えば、裁判所が決めた「仮差押解放金」の金額が高すぎるとか、債権者が債務者の財産に「仮差押え」をする場合、債権者が提供する損害賠償の引当金(保証金)の額が少なすぎるとか、そういった理由で「保全異議の申し立て」をすることもできます。
要は、申し立て理由は何でもいいわけです。
もちろん、だからといって「「保全異議の申し立て」をしたことが、直ちに「仮差押え」の執行の解除、停止、取消しがなされるわけではありません。先に述べたように審査が必要であり、その審査の結果、先に掲げた3つのパターンの結果が決定されるのです。
ただ、「仮差押え」が取り消されるに足る明らかな事情があって、それでも執行を続けると回復不可能な損害が生じる恐れがある場合は、「保全異議の申立て」を申し立てた段階で、審査結果が出るまでの間に執行取消を申し立てることができます。
これをするためには、債務者は「保全異議の申し立て」のほかに「保全執行取消の申し立て」をする必要があります。ただ、これが認められる範囲は非常に限定されていて、認められる可能性は低いとされています。
なお「保全異議の申立て」は、主張したい内容(申立の趣旨及び申立の理由)を書面でもってなされます。
「保全異議の申立て」の審査は、当事者双方が立ち会うことができる期日で行わなければなりません。その期日は必要と認められる範囲内で1回~複数回行われて決定という形で審査結果が下されます。
その決定に不服がある場合は、2週間以内に上級裁判所に保全抗告できます。ただ、保全抗告は1回だけとなります。
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