「破産犯罪」「詐欺破産罪」とは?~債権者の利益と平等・公平を守るために!~
2020/07/17
■債権者の財産的利益を害する行為
① 詐欺破産罪の成立(破産法266条)
1.財産の隠匿・損壊行為(破産法265条1項1号)
2.財産譲渡・債務負担を仮装する行為(破産法265条1項2号)
3.財産の現状の改変によって価格を減損させる行為(破産法265条1項3号)
4.財産の不利益な処分(破産法265条1項4号)
5.不利益な債務の負担行為(破産法265条1項4号)
6.債務者の財産を取得または第三者に財産を取得させる行為(破産法265条2項)
② 特定の債権者に対する担保供与等の罪の成立(破産法266条)
■破産手続の適正な進行を妨害する行為
■破産者の経済的更生を侵害する行為
① 破産者等に対する面会強請等の罪(破産法267条)
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■「破産犯罪」とは? 刑罰規定を設けた趣旨は?
「破産犯罪」というのは、破産法第14章「罰則」に規定されている犯罪類型のことをいいます。
そもそも、破産手続とは、破産者が持っている財産を破産財団として管理し、換価処分して、それによって得た金銭を各債権者に平等・公平に弁済または配当する手続をいいます。
そして、そこには、第一義的には、債権者間の平等性・公平性を確保して債権者の利益の最大化を図ること、第ニ義的には個人破産の場合に限って、破産者の経済的更生を図ること、この二つの目的があるのです。
(※この「平等性、公平性」を維持するとは「債権者平等の原則」に則るという意味です。)
以上を踏まえて、
破産犯罪として処罰の対象とされる行為を説明すると、まさに、その破産手続での平等性・公平性を害する行為ということができます。
そして、それには様々な類型があって、一定の要件(構成要件)を備えることで刑事罰が科せられ、害する行為を徹底的に規制し排除していくのです。
もっとも、破産法では債権者間の平等・公平を図り債権者の利益の最大化するために、破産管財人に「否認権」という民事上の権能を与えて、その実現性を担保しようとしています。
「否認権」とは、破産手続開始前になされた破産者の平等・公平を害する行為またはこれと同視できる第三者の行為の効力を否定して、破産財団の回復を図る破産管財人の権能をいいます。
でも、破産関連の案件は、時として債権者やその他の利害関係人、そして債務者(破産者)との利害関係が複雑に絡み合っての金銭面での対立関係が生じやすく、この否認権行使だけでは、先の目的を十分には達成することができないことを破産法はすでに予想していました。
そこで、
債権者の利益の最大化はもちろん、個人破産の場合での破産者の経済的更生も含めて、それらをより強力に推し進め、ひいては破産制度の信頼性を担保していく。
そのために、破産法は不平等、不公正な行為を容赦なく徹底的に排除し、そして抑止していくより強力な威嚇力と抑止力が必要だということで第14章以下の「破産犯罪」の規定を設けたのです。
本稿では、個々の犯罪類型については、下記の「破産犯罪」の体系図をベースに、そのあとに具体的に記していきますが、大きく分けて3つの類型分かれていて、刑罰の対象は債務者の行為のみならず債権者の行為にも言及されています。
■債権者の財産的利益を害する行為
先に述べたように、破産手続の目的が破産者の財産を適切に管理し換価処分して、債権者の利益確保に向けて平等、公平に配当していくことにあるのならば、その財産的利益を妨害する行為は当然に処罰対象としなければなりません。
そして、この類型のすべての行為について犯罪として成立し処罰するためには、行為時に「債権者を害する目的」があることが必要とされています。
だから、例えば不注意で債務者の財産を壊してしまったというような場合は、犯罪としては成立しません。もっとも民事上の損害賠償責任を負うことはあります。
なお、債務者が犯罪行為をして有罪が確定すると、免責許可決定後でも取り消しの決定がなされます。
① 詐欺破産罪の成立(破産法266条)
1.財産の隠匿・損壊行為(破産法265条1項1号)
債権者を害する目的で、破産手続き開始の前後を問わず、 債務者の財産を隠匿(隠すこと)・損壊(壊すこと)する行為をした者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては懲役と罰金が併科されるかなり重い刑になります。
当然、隠した財産は取り戻されます。罰金を払ったからといって財産を返さなくてもいいというわけにはいきません。
2.財産譲渡・債務負担を仮装する行為(破産法265条1項2号)
債権者を害する目的で、破産手続き開始の前後を問わず、債務者の財産の譲渡や債務負担を仮装する行為をした者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては懲役と罰金が併科されるかなり重い刑になります。
例えば、実際はそんな事実はないにもかかわらず、第三者にすでに売却したかのような仮装の契約書を作成したり、実際には貸してもいないのに金銭を債務者に貸し付けたかのような仮装の契約書を作成して、債務者が債務を負担しているかのように装う行為などです。
これによって、債権者が債権回収に充てにしている債務者の財産を減らす行為を処罰します。
3.財産の現状の改変によって価格を減損させる行為(破産法265条1項3号)
債権者を害する目的で、破産手続き開始の前後を問わず、債務者の財産の現状を改変しその財産の価値、価格を減損させる行為は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては懲役と罰金が併科されるかなり重い刑になります。
財産を壊すのではなく改変することでその価値、価格を減損する行為です。
具体例としては、更地に建物を建ててしまったり、更地の価値、価格を下げる行為などが考えられます。
4.財産の不利益な処分(破産法265条1項4号)
債権者を害する目的で、破産手続き開始の前後を問わず、債務者が持っている財産を債権者からみて不利益に処分する行為は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては懲役と罰金が併科されるかなり重い刑になります。
これまで述べたような隠匿・損壊・仮装行為や財産の現状を改変するような行為ではなく、それ自体が仮に適法な行為であったとしても、債権者に不利益を与えるような処分行為であれば処罰します。
例えば、絶対に200万円は下らない価値があるクルマを著しい廉価の1万円で知り合いに売った場合などです。本来ならば、200万円が債権者に配当されるはずだったのに、それができなくなったから債権者にとって不利益処分といえます。
5.不利益な債務の負担行為(破産法265条1項4号)
債権者を害する目的で、破産手続き開始の前後を問わず、債権者に不利益となる債務を債務者が負担する行為は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては懲役と罰金が併科されるかなり重い刑になります。
例えば、ヤミ金融などから著しく高利で借入れをする行為などが挙げられます。
6.債務者の財産を取得または第三者に財産を取得させる行為(破産法265条2項)
債務者に破産手続開始の決定がされたことを認識しながら、債権者を害する目的があって、破産管財人の承諾その他の正当な理由がないにもかかわらず、その債務者の財産を取得した者、または第三者に取得させた者にも、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては懲役と罰金が併科されるかなり重い刑になります。
本条項は265条1項1号~4号の場合と異なり、破産手続開始の前後を問わないというものではなく、破産手続開始決定後に限定されます。
②特定の債権者に対する担保供与等の罪(破産法266条)
破産手続開始の前後を問わず、他の債権者を害する目的で、特定の債権者に対してのみ、担保を付けたり、債務を返済するなど、他の債権者に不公平になるような行為は、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、場合によってはこれを併科する刑になります。
典型例は、抵当権設定とか、任意の弁済とかで、しかもそれが特定の債権者に対してのみ行うことです。いわゆる「偏頗行為」のことです。
ただ、その行為が債務者にとって非義務的なもので、しかも他の債権者を害する目的でもって行われる必要があります。
「非義務的」とはどういうことかというと、例えば、Aに対して借金があるものの、何も担保を供与する約束もしていないにもかかわらず、勝手に担保を供与したり、まだまだ返済期限が来るのが大分先にもかかわらず、任意に返済をしてしまうような、全然そんな義務がないのに特定の債権者のみを優遇するような行為をすることです。
しかも、それだけでなく先に述べたように他の債権者を害する目的を持っていることが、この犯罪の成立要件となります。
例えば、すでに十分な資力がある保証人が付いている債権だから、これ以上優遇する義務もその必要性もないのに、さらに自己破産したら当然破産財団に入るであろう不動産に抵当権を設定して、別除権としてその不動産から優先して弁済されるようにすることは、この犯罪が成立する可能性があります。
■ 破産手続の適正進行を妨害する行為
むろん、破産手続の進行に不公正があれば、債権者の平等性・公平性を害し、債権者の利益を害することになるし、ひいては破産手続に対する信頼も失われるおそれがあります。
だから、破産手続の適正な進行を妨害する行為も「破産犯罪」として処罰の対象とする必要があります。
⇒10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金または併科
〇説明及び検査の拒絶等の罪
⇒3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
〇重要財産開示拒絶等の罪
⇒3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
〇業務及び財産の状況に関する物件の隠滅等の罪
⇒3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
〇審尋における説明拒絶等の罪
⇒3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
〇破産管財人等に対する職務妨害の罪
⇒3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
〇収賄罪・贈賄罪
⇒3年以下の懲役か300万円以下の罰金または併科
⇒5年以下の懲役か500万円以下の罰金または併科
(※条件によって上限が異なります)
■ 破産者の経済的更生を侵害する行為
冒頭でも述べましたが、破産法では、債権者の利益を確保し平等・公平な配分を実現する目的をもつ「破産手続」のほかに、個人の破産の場合は破産者の経済的更生を図るための「免責手続」もあることも忘れてはいけません。
そうである以上、個人の破産者の経済的更生を妨害する行為に対しても、犯罪として認定し処罰の対象とする必要があります。
①破産者等に対する面会強請等の罪(破産法267条)
免責手続を経て免責許可が決定したにも関わらず、破産者(元債務者)やその親族などへ支払義務のない借金を返済させたり、返済させる目的でもって面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は3年以下の懲役か300万円以下の罰金、場合によっては併科されます。
この犯罪は、債権者側に問われるものです。
例えば、免責手続に不服申立しない代わりに「破産手続が終わったら返済して」と脅迫する行為は破産犯罪に該当する可能性があります。
これから行おうとする行為、行ってしまった行為は、受け取る側との関係性の度合い、その行為をすることによって、債務者が一般的に支払不能になってしまうことの予測、また悪意(債権者を害する目的)があったかどうかは、そういったことは、破産手続の債権者の利益を平等、公平に確保するという理念に照らしながら、その有無を慎重に判断しなければなりません。
もし、破産犯罪と認定されてしまうと、なにしろ刑事罰ですから非常に重い責任を負わされます。
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