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「個人再生」と「自己破産」を比べてみて「個人再生」を採るメリットはどこにありますか?

      2024/12/20

< 目 次 >
個人再生のメリット(自己破産との対比のなかで)
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■ 個人再生のメリット(自己破産との対比のなかで)

 
「個人再生」とは、まず、借金が支払不能に陥る恐れのある債務者が、最低限支払わなければならない借金(平均5分の1 最大10分の1に減額された借金)を分割で原則3年、最大5年の期間で返済する「計画(再生計画)」を立てます。

そして、裁判所がその「再生計画」を認める決定(認可決定)をして、その後はきちんとその再生計画に従った返済を続け完済し終われば、残る借金(5分の4 or 10分の9)は返済を免除してもらえる債務整理手続です (但し「清算価値保障の原則」に注意)。

任意整理とは違って、自己破産と個人再生は借金問題に関係する全ての利害関係人を裁判上に登場させて、借金問題を公平・平等、かつ包括的に解決する手続という点(債権者平等の原則の適用)で共通性をもちますが、両者を比べてみて大きく異なる主要な点は以下の通りです。
 

個人再生と自己破産の比較
個人再生
自己破産
手続きの開始原因 支払不能のおそれ 支払不能の確定
(支払停止からの支払不能の推定あり)
借金は全額免除になるか? 借金は大幅に減額になるが全額免除には絶対にならない(1/5~1/10に減額される。但し、清算価値保障の原則に注意)。 借金は全額免除になるのが原則
財産は処分されるか? 住宅は「住宅ローン特則」で一定の条件をもとに居住を続けられる。その他の財産も処分されずにそのまま手元に置くことができる。但し手元に置くとしても「清算価値保障の原則」を満たす最低弁済額を支払う必要がある。 大きな財産(20万円を超える財産、99万円を超える現金)は処分される
債務整理の不許可事由はあるか? 個人再生の手段をもって債務整理せざるを得なくなった借金の原因はどのようなものであろうと不問 借金の原因が専ら賭博、ギャンブル、浪費といってもいい遊興費であった場合は免責不許可となりうる
一定の資格や職業は制限はあるか? そのような制限はない 手続途中は弁護士、司法書士、その他一定の資格、または警備員、質屋、古物商などの職業遂行に制限がつけられる

「支払不能」と「支払不能のおそれ」との区別は非常に微妙で難しい。したがって「支払停止」があれば「支払不能」が推定される。詳しくは下記の関連記事を参照してください。

上記の表をベースに、一般的に自己破産と比べての個人再生のメリットといわれている点について述べてみます。

双方とも経済的更生を目的とした制度であることは間違えありません。

借金の返済に大きく苦しんでいて債務整理を考えざるを得ない状況の人が、生活の拠点でもある住宅を所有していて、なんとかこの住宅の処分は避けたいと思うのが通常でしょう。

もし、この状況で自己破産を選択した場合は、借金の返済は全額免責されるので、経済的合理性から見れば大きなメリットといえます。でも、その代償として住宅は強制的に換価処分(現金化)され債権者に弁済・配当されてしまいます。

それに対して、個人再生を選択すれば、借金の全額免責はならなく、借金は残って裁判所の認可を受けた「再生計画」に従った返済を続けていかなければならが、元本も含めた借金の大幅な減額が可能となります。例えば、500万円の借金が100万円に減額されます。(下記の表を参照)。
 

利息制限法の再計算を経て確定した借金額
法律の定めある最低弁済額
(民事再生法231条2項3号)
100万円未満
負っている借金(債務)全額
100万円を超えて500万円以下
100万円
500万円を超えて1500万円以下
借金(債務)総額の5分の1
1500万円を超えて3000万円以下
300万円
3000万円を超えて5000万円以下
借金(債務)総額の10分の1

 
それとともに「個人再生」には「自己破産」にはない「住宅資金貸付債権に関する特則(以下、住宅ローン特則)」という規定があって、住宅ローン返済中の住宅は換価処分(現金化)されることなく住み続けることができます。「自己破産」では住宅は失わざるを得ない運命にありますが「個人再生」では、この特則によって住宅を失いたくない人にとっては、それを回避でき大きなメリットとなります。

「住宅ローン特則」とは、住宅ローンの支払い金額自体は減額の対象とはなりません。他の借金額を大幅に減らすことで住宅ローンへの支払い負担を減らすことができ住宅ローンの返済を契約当初のままで維持継続していく仕組みです(住宅ローンの返済はそのまま維持されるということで債権者平等の原則の適用は排除されます)。
 

 
ところで「個人再生」の場合、上記の表に示すように返済額が大幅な減額となりますが、ここで注意しなければならないのが「清算価値保障の原則」というルールです。「個人再生」の場合は「自己破産」とは違ってどんなに高価な財産を持っていてもそれは処分の対象にはなりません。

例えば、借金総額が500万円ありますが、1000万円の高価なクルマを所有していた場合「個人再生」すると上記の表に当てはめて結論を出すと」、100万円の返済で債務整理は終了することになります。1000万円の高級車はそのまま持ち続けられます。でも、この結末は「自己破産」の結末と比べてあまりにもバランスを欠きます。

「自己破産」をすると、1000万円のクルマは確実に処分の対象となり現金化され債権者に弁済・配当されるのは必至です。「自己破産」した方の債権者のほうが手厚く守られているということです。

このバランスを正常に戻すためには、債務者が別個に財産を持っている場合、その所有財産の「精算価値」と上記の表にある「法律の定めある最低弁済額」とを比較してどちらが大きいかを見定めて、大きい金額の方を最終的な最低弁済額として返済する必要があるとされています。

そうなると、その高価なクルマは清算価値は1000万円で、法律の定めある最低弁済額100万円で、当然に1000万円の方が高いわけですから、その金額を最終的な「最低弁済額」として分割で返済する再生計画を立てなければ「個人再生」は成立しないことになります。このルールを「清算価値保障の原則」といい「個人再生」する場合はこの原則をクリアしなければなりません。

なお「清算価値保障の原則」と「住宅ローン特則」との関係は「住宅ローン特則」を利用して住宅を残したい場合でも、住宅の評価額が住宅ローンの残債より高い場合には、その差額分が清算価値に計上されて「清算価値保障の原則」の適用があります。

もっとも、現実問題として「個人再生」の成否が問題となるケースで「清算価値保障の原則」が出てくるケースはあまりありません。「個人再生」を望む人でその時点で高額の財産を未だ持っているケースというのはあまりないからです。ほとんどのケースが先の表にあてはまる「法律の定めある最低弁済額」が最終的な「最低弁済額」となるケースが多いといわれています。
 

 
また、自己破産すると仕事が出来ない資格、職業があります。自己破産するということは、言ってしまえば、借金等々の金銭関係で問題を起こした場合の公に認められた解決方法の一つですから、制限を受けるのは「他人のお金を取り扱う重要な資格や職業」が対象になります。 詳しくは下記の関連記事の該当箇所を参照。
 

関連記事:「自己破産」の信じてはいけない「間違いデメリット」と「本当のデメリット」とは?※該当箇所⇒(1) 免責が決定されるまで一定の資格や職業に就くことを制限されること


 
最後に、自己破産を申し立てても、借金の原因が専らギャンブルや投資や遊興費によるモノだったら、その行いは「免責不許可事由」に当たると判断されて免責を享受できない恐れがあります。

もし、そうなると、主な財産は全て没収処分され、しかも借金は全く免除されず借金がまるまる残ってしまうという最悪の結果を導きかねません。

それに対して、個人再生の場合は上記に示したような、いわゆるギャンブル、博打、浪費などで作った借金であっても、減額不許可事由なることはありません。そのような制限はなくどんな借金でも原因を問わず個人再生のメリットを享受できます。

 

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