債務整理で弁護士・司法書士の「受任通知」は貸金業者からの取り立て圧力をストップする効果あり!
2023/07/16
■ 貸金業者が「受任通知」が受け取った段階で、保証人に請求がいくことはあり得る
■ 銀行からの借金で「受任通知」を送付すると、銀行は銀行口座を凍結してくる可能性がある
■ 税金とか社会保険とか公共料金といったものは「受任通知」に関係なく催促、請求は届く
■「受任通知」だけでは強制執行手続きを中止させることはできない
■ まとめ ~受任通知のメリット・デメリット
■ 借金問題の無料法律相談のご案内
・日本法規情報 (債務整理相談サポート)
■「受任通知」とは?その重要な効果は?
自らの借金問題を債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)する場合、それらは自分でもできますが、その専門性から専門家である司法書士・弁護士に依頼するのが一般的です。
依頼を受けた専門家は、いち早く相手方である貸金業者(債権者)に依頼人(債務者)から債務整理の依頼を受けたという「受任通知」を発します。もし、貸金業者が複数いるのならすべての貸金業者に「受任通知」を発します(債権者一覧表に基づく)。
この「受任通知」は、債務整理で解決するという依頼をうけた、と貸金業者側(債権者/債権回収業者も含む)に知らせる通知ですが、実は、それだけでなく、お金を貸した側(債権者)、借りた側(債務者)双方にとって非常に大きな効果をもたらします。
その非常に大きな効果というのは何か?、
通常「受任通知」には、主に下記の5項目が記載されます。
② 採用する債務整理の手法(任意整理、個人再生、自己破産)の記載。
③ 今後は、依頼人はもとよりその家族への直接の連絡や取り立て行為の停止の要請。←特に重要
④ 依頼人 (債務者) と貴社 (貸金業者) との最初からの取引履歴のすべてを開示請求。←特に重要
⑤ 債務の承認による時効の中断には当たらない旨の記載。
特に、3つ目にある「取り立て中止」の要請は、貸金業者が、それを受け取った時点で債務者にする借金取立て行為は、一切禁止するという法律上の効果をもたらすのです。
これは最終的に「任意整理」「個人再生」「自己破産」のどの債務整理手続を選択するか決める前であっても、一旦「受任通知」を発して相手が受け取れば、共通の効果としてその後の取り立て行為はそれ自体が違法行為となります(貸金業法21条)。
たとえ、それが真っ当で適法な取り立て行為であっても、それを行うこと自体が違法となります。
もっとも、規制される行為は、適法・違法を問わず電話や郵便、訪問などによる直接の取り立て行為であり、正当な権利行使としての訴訟を起こすことは禁止されておらず、法律違反にはなりません。
でも、一時的にせよ返済に回っていたお金が手元に残ることになるわけだから、経済的、精神的に余裕のある生活を過ごせるだろうし、これからの出来事に対して冷静になって準備をすることができます。
そこで、個人再生手続き中は、借金の支払いにあてていたお金が浮いてくるので、それまでよりも余裕のある生活をすることができます。
但し、受領通知の取り立て行為の禁止効果は法律上の効果であり、それを貸金業者(債権者側)は無視できませんが、借金自体は正当に存続するので「任意整理」などの債務整理手続が完了するまでの利息(経過利息)は発生し続けます。だから、債務整理がうまくいかずにこれまで通りの支払いが復活すると、利息(経過利息)が復活します。
遅延損害金に関してはちょっと異なります。これは支払が期限を一日でも過ぎたら、法律上当然発生する損害賠償請求権をいいます。これまで述べてきたように、受任通知を貸金業者(債権者)が受け取った時点で取り立て行為は禁止されるため、遅延損害金は受任通知を受領した時点まで発生します。もちろん、個々のケースで
ところで「任意整理」が選択すると、依頼を受けた司法書士や弁護士は、利息(経過利息)・遅延損害金の免除を目指して、貸金業者(債権者)と交渉に入りますが、あくまで交渉事なので、必ず利息(経過利息)や遅延損害金の免除されるとはいえません。
なお、違法な取り立て行為の例は下記の類の行為です。これらはそもそもが違法ですから「受任通知」の有無にかかわらず許されない行為です。
(2)夜間(午後9時から翌朝午前8時まで)の取り立て行為
(3)住居以外の場所(会社)に訪問したり、電話を掛けたり、FAXなどを送ること
(4)ビラや看板で、借金があることを債務者以外にも知らせること
(5)親、親せき、友人、知人など、そもそも支払い義務のない人に(連帯保証人になっていない人)に借金を返すように求めること
(6)新しく借り入れて返済に充てる要求
ただ「受任通知」が、それ以降の取り立て行為を全て違法行為と評価するものですが、貸金業者が意図的にそれを無視して以後も取り立て行為を行っても何らお咎めを受けないということであれば、それはまさに「絵に描いた餅」といっても過言ではありません。
だから、そうならないように、もし無視して行ったら業者側に懲役、罰金を科す刑罰が設けられています。さらに、業務停止や貸金業登録取消しなどの行政処分の対象にもなるのです。
そう考えると、その効果は強力です。司法書士・弁護士から「受任通知」を受け取れば、ほとんどの貸金業者は取り立て行為をやめると言われています。
思うに、借金問題に悩んでいる人が、貸金業者からの頻繁な取り立て行為で、平穏な生活が営めなくなって精神的にも参ってしまったら、抱えている借金問題についても冷静な判断ができなくなってしまいかねません。ましてや仕事にも支障をきたすことになれば、これは由々しき事態と言えます。。
それが、この「受任通知」一通でそういう状態から解放されるので、ガラリと状況が変わるはずです。そういったことで、専門家である弁護士や司法書士から発する「受任通知」の効果は絶大であり、そこにも借金問題の解決を専門家に委ねることのメリットがあるといえます。
なお、この規定は私人間の借金問題の債権者には適用ありません。業としてお金を貸している貸金業者、金融機関といった金融業者のみに適用があるのです。
但し、銀行といったお金を預けられる金融機関に関しては、ちょっと面倒臭い問題があってそれは後述(3)を参照してください。
弁護士、司法書士の専門家は「取り立てや督促がなくなることで、これほど楽になれるとは思ってもみませんでした。電話におびえる必要もなくなり、夜もぐっすり眠れるようになりました」ということを相談者から良く聞かされるようです。
このような平穏な気持ちになってこそ、債務整理の準備にも集中できて、実のある債務整理へ向けての良いスタートが切ることができるのです。
ただ、取り立てや催促がなくなって平穏な日常になると、これでもう借金問題は解決されたと勘違いする人もいないとも限りません。でも、それは大きな間違えです。その受任通知後が債務整理のメインとなるということをしっかり理解しておいてください。
依頼した弁護士、または司法書士としっかりと今後の債務整理の方向性について協議することが必須です。その協議が迅速に進むためにも前もっての準備はしておくべきです。
■ 貸金業者が「受任通知」受領後は保証人に返済請求がいく恐れあり
債務に保証人が付いている場合、貸金業者が「受任通知」を受け取った段階で、主たる債務者(お金を借りた人)は満額返済不能を宣言したことになるので、貸金業者は保証人に請求していくことは十分にあり得ますし、これは、貸金業者の正当な権利なのでこれを止めることははっきり言って難しいです。
保証人としては、急に貸金業者から請求されると驚いてしまうので、主たる債務者としては任意整理をする前に、その旨を保証人にも伝えておくのがいいでしょう。それによって保証人側もいろいろと貸金業者からの請求に対して準備することができます。
■ 銀行が「受任通知」受領後は依頼人の銀行口座を凍結する恐れあり
銀行のカードローンからの借金を任意整理する場合「受任通知」を送付すると、銀行はそれに対抗して依頼人(債務者)の銀行口座に預金残高がある場合、それを凍結することが考えられます。
そして、その口座を凍結して、銀行がもつその貸金債権でもって債務者が持つ預金債権と相殺を主張してくる可能性が非常に高いです。
だから、生活費等の当面必要な金額は、債務整理する前に預金を予め引き出しておいて手元に置いておく必要があります。
(※なお、この事前に引き出すという行為も債務整理の手法によっては色々問題がでてきます)
ちなみに「相殺」とは、当事者2人が互いに負担する同種の債務を、その対当額の範囲で一方的な意思表示によって消滅させることです。要するに、チャラにするということです。
例えば、AがBに対して10万円を貸していて、BはAに対して商品を売って4万円の代金請求権がある場合、お互いが律儀にそれぞれもつ債務を履行していたら面倒くさいので、お互いプラスマイナス分を計算して、6万円をBはAに支払えばいいとするのが「相殺」です。
■ 税金とか社会保険とか公共料金といったものは「受任通知」に関係なく催促、請求は届く
この「受任通知」の効果は、貸金業法という法律で規定されています。
だから、あくまで貸金業者からの取り立て行為や催促に対して効果を有するモノですから、社会保険や公共料金の請求、税金の督促などには通用せずに容赦なく催促、請求は届きます。
というか、そもそもこういった類の債権には「任意整理」の対象にはなりませんし、「自己破産」の場合にもこれらの債権は「免責」の対象とはなりません。税金(住民税も含む)滞納による強制執行・差し押さえを「債務整理」で阻止することはできません。
■「受任通知」だけでは強制執行手続きを中止させることはできない
債務整理の「受任通知」が任意整理、個人再生、自己破産のいずれかのものであろうと「受任通知」だけでは、ストップをかけられるのは貸金業者の「取り立て行為、催促」だけで、強制執行手続き(給与差押えなど)を止めることはできません。
強制執行手続きを止めるには「受任通知」だけでは止めることはできず「強制執行停止の申し立て」などの裁判上の手続きが必要です。
■ まとめ ~「受任通知」のメリット・デメリット~
● メリット
・貸金業者・金融業者からの直接の取立てができなくなる。
・精神的負担の軽減される。
・返済を一旦停止できる(個人再生・自己破産の場合は返済してしまうと偏頗弁済の責めを負う恐れがあります)。
● デメリット
・信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリスト)。
・受任通知の対象が口座を持つ金融機関であれば、口座は凍結されます。凍結されると、預金との相殺される恐れがあります。任意整理の場合は、凍結を回避したいならその金融機関を任意整理の対象外にすればいい。
・保証人が請求を受けることになります。
・裁判や強制執行差し押さえは止められない。
・滞納税の督促を止められない。
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