すでに給与の差押さえ・強制執行を受けているとき「任意整理」でもって阻止できるか?
2022/08/15
■任意整理することで強制執行を中止・停止することができるか?
■まとめ比較
(1) 任意整理の場合
(2) 個人再生の場合
(3) 自己破産の場合
(4)「中止・停止」と「失効」の意味 ~給与の差押え・強制執行を例にして~
(5) 強制執行手続の取消について
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■ 問題の所在
~債務整理にとって強制執行は深刻~
貸金業者からの借金を返済期日までに返済せず、しかも支払督促にも応じないままでいると、貸金業者は「債務名義」を取得して強制執行を仕掛けてきて、一番手っ取り早い債権回収方法の給与の差押えをしてくることは目に見えています。
「債務名義」とは、ごく簡単に言えば「差押えすることを正当化する公文書」と捉えてもらえばいいです。きちっとした言い回しを言うのであれば、下記を参照してください。
強制執行(差押え)により実現されるべき請求権の存在、範囲、債権者、債務者が記された公の文書のことです。
強制執行をするには、この「債務名義」を取得することが必要であり、仮に真正なモノであっても、公的ではない私人間で締結された契約書では、未だ「債務名義」にはなりません。裁判所で作成して和解調書、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、公証役場で作成した公正証書などが債務名義となります。
ただし、抵当権などの担保権実行では、優先弁済権があるので債権の回収を図るときは「債務名義」は必要ありません。
まあ~、根本を辿れば、お金を借りたのに約束の期日に返済もせずに、その後きちんとした応対もしなかったお金を借りた人、つまり債務者が悪いのですが、ただ、それが原因で債務者の給与の差押えにまで事態が発展してしまうと事は極めて深刻です。債務者は見過ごすわけにはいきません。
もちろん給与の全額が差押さえられるわけではありませんが(基本的には給与の4分の3は差押え禁止債権で、残りの4分の1が差押さえられる)、給与を差し押さえられてしまうほどの生活困窮者にとって、仮に4分の1でも差押えは生活をより苦しくさせ、経済的な更生もままならぬ状態に陥ってしまうこと必定です。
『それだけはなんとか避けたい!』だから、なんとか『強制執行・差押えを阻止したい!』という気持ちも十分に分かります。
「債務整理」手続とは経済的に苦境に陥っている人を救済する国が認めた制度です。だから、できるだけ経済的困窮者に債務整理の機会を保証しなければなりません。債権者が債権回収の実効性ある手段として差押さえ・強制執行を仕掛けてきた場合、もちろんその債権者の利益は保護に値するけれど、可能な限り債務者側の債務整理の機会を保証しなければなりません。
債務整理には基本三つの方法(任意整理・個人再生・自己破産)があります。
問題はそのそれぞれ三つの方法を行うことで債権者からの差押さえ・強制執行を阻止することができるか?という点です。本稿では「任意整理」が強制執行を阻止できるかがメインのテーマになりますが、「個人再生」「自己破産」についても若干触れます。但し、詳しくはそれぞれ別稿で説明していますので、そちらを読んでください。
■「任意整理」することで強制執行を中止・停止させることができるか?
結論から言いますと、「任意整理」は債務整理の中で一番簡便で利用回数も一番多い手法ですが、このやり方では法的には強制執行を中止、停止することができません。阻止することはできません。
その一方で「個人再生」「自己破産」は、強制執行の効果を阻止することができます。「任意整理」と「個人再生」「自己破産」との根本的な違いは「任意整理」は裁判所の介入はありませんが、「個人再生」と「自己破産」とは、裁判所が介入する手続であるということです。
だから「個人再生」「自己破産」の場合、必要とあらば裁判官が職権でもって強制執行手続を停止させることができるのです。
それに対して「任意整理」は、裁判所は介入しないからこそ債権者(貸金業者)と債務者の当事者間での任意の交渉、話し合いで、借金問題を解決するしかなく、よって強制執行を中止、停止するかどうかは貸金業者等の債権者の裁量判断に委ねられることになります。「個人再生」「自己破産」のように法的効果として強制執行を止めることはできません。
だから「任意整理」で強制執行を止めてもらいたいと心底思うのなら、貸金業者とは早急に良好な関係を築いて和解案を話し合いお互いが合意に達しなければなりません。 この「早急に・・・」というのは、差し押さえ前ということです。
もちろん、交渉事ですから差し押さえ後でも可能は可能ですが、極めて困難です。なぜなら、差押え手続きのために、債権者は費用や手間をすでに費やしているし、もし、差し押さえ対象が給与だったら、差し押えによって債務者の勤務先から毎月一定額を継続的に受け取れるメリットがあるからです。
とにかく「任意整理」は解決方法として【交渉、話し合い】がメインになるから、そういった交渉事に長けている専門家の弁護士や司法書士に委ねるのが通常です。交渉の中で条件提示などしてなんとか差し押さえ、強制執行を取り下げてくれるようにお願いして合意を得なければなりません。
もし、合意に至らなかったら、債権者からの強制執行、差押さえを受ける恐れは大きいといえます。
※「任意整理」では法的に強制執行を阻止できません。
したがって、給与が差押さえられて生活が苦しいとか、支払いの資金繰りが厳しいとかあって、何とかして毎月の給与への差押え・強制執行を止めたいと思うなら「任意整理」で返済方法についての和解案に両者が合意させるか、あるいは以外の債務整理手法の「個人再生」「自己破産」の方法で対処するしかないのです。
※なお、債務整理の方法の中で「任意整理」に似ていますが、今ではあまり利用されていない「特定調停」という方法があります。簡単に言えば、簡易裁判所が間に入って、債務者と債権者の話し合いを仲裁するやり方です。この方法をとると、法的に強制執行を阻止できる仕組みになっています(執行停止制度がある)。但し、強制執行を阻止するためには「特定調停」の申し立てをするだけでは足りません。それとは別途に「執行停止」の申し立てもしなければならないことに注意が必要です。
■ まとめ比較
強制執行をされると債務整理することが非常に難しくなってしまいます。給与が差し押さえられてしまうと、債務整理をして毎月の給与から分割で少しづつでも返済していこうと思っていてもそれが困難になってしまうし、また現在住んでいる住居を不動産競売にかけられてしまうと住居をうしなってしまいます。そういった状況下では経済的更生を図るのはなかなか困難となって「債務整理」手続きの実効性が損なわれてしまうこと大です。
したがって「任意整理」に関しては合意に達した場合を除いて強制執行は阻止できませんが、裁判所が介入する「個人再生」「自己破産」「特定調停」に関しては、法的に強制執行を阻止できる仕組みになっていて、債務整理の実効性は担保されるのです。
(1)「任意整理」の場合
任意整理では、相手方との交渉の結果、合意を得ない限り、強制執行の手続きを止めることはできません。任意整理には強制執行を停止させる法的効果はありません。
(2)「自己破産」の場合
●「債務名義」に基づく強制執行は、破産手続の申し立ての段階で、利害関係人の申し立て、または裁判官の職権で、すでに始まっている強制執行手続を中止することができます。また、すでには始まっている強制執行手続は、破産手続の開始決定時に失効します。そして、破産手続開始決定後は強制執行はできません。
●「担保権」実行に基づく強制執行は、担保権消滅許可の可能性を探ればともかく、破産手続を取ったとしても止めることができません。
(3)「個人再生」の場合
個人再生の場合「債務名義」に基づく強制執行も「担保権」実行に基づく強制執行も中止できます。この「担保権」実行に基づく強制執行を中止できるというのは、いわゆる「住宅ローン特則の巻き戻し効果」による効果のことです。そして、再生計画案が裁判所によって認可された場合に、強制執行の手続きは失効します。
(4)「中止・停止」と「失効」の意味 ~給与の差押え・強制執行を例にして~
「中止・停止」とは、強制執行の手続きの進行を一時的に止めるという意味にすぎません。だから、すでになされた差押えの効力は失われませんし、個人再生の申し立ての手続きをとった後も、それまでになされていた差押えの効力は以後も継続されます。
したがって、給与の差押え・強制執行自体をとめることはできません。ただ「中止・停止」の効果で、差し押さえられた給与が債権者の配当にまわされることはなく、勤務先の会社に保管されているか、供託されることになります。
「失効」とは、文字通り強制執行の効力を失わせることです。強制執行の効力がなくなりますので、以後の給与の差押えは止まりますし、それまで差し押さえられていた給与も全額債務者に戻ってきます。
(5) 強制執行手続の取消について
「個人再生」によって、強制執行手続きが阻止されるのは基本的には「個人再生」の手続き開始決定をもって阻止されるわけです。
ただ、債務整理に個人再生を選んだ場合、それを弁護士等の専門家に依頼してから「個人再生」の申し立てを経て裁判所が再生計画案の認可を決定するまで、相当な期間、4か月から6か月程度が普通ですが、場合によってはそれ以上の期間が必要となる場合もあります。
※ なお、個人再生を申し立ててからはおよそ3~4週間で認可決定が下される)
そうなると、再生計画案の認可決定までの相当な期間、給与の差押えを解除する手段がまったくないとなると大変つらいものがあります。
そういった場合、とりあえず「個人再生」手続開始決定まで進んだ段階を想定して強制執行の取り消しが必要である旨を裁判所にしっかり伝えて、裁判所にそれを妥当である認めてもらえれば、「個人再生」申し立て後、再生計画案の認可決定前であっても、強制執行を取り消して差押えを解くことができます。
そうすれば、給与の全額が返ってくるし、以後も全額支給が果たされます。
思うに、仕掛けられた差押え・強制執行を停止、中止、あるいは失効させるために、どのような手段を選択するか、選択した手段をどのようなタイミングで出すかは非常に専門的な知識と経験に裏付けられたスキルを持った専門家の判断が重要にとなります。
給料の差押え・強制執行というのは、債権者側からすれば4分の1とはいえ、毎月必ず4分の1はほぼ確実に入ってくるので、これほど楽で手っ取り早い手法はないと言ってもいいです。
だから、もし、差押えがすでに始まって、これを任意整理、つまり話し合いで解決するとなると、言ってしまえば毎月4分の1が手に入る利益以上のことを条件として提案するしか解決方法がないと考えます。だから当事者同士で真剣な話し合いが必要だし、やはりそのためには知識・経験が豊富な専門家に手を借りるのがいいでしょう。
いずれにしても、心ならずも給与の差押え、強制執行を仕掛けられる恐れがあるのならば、時期を逸することなく専門家に相談することが肝要です。
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