なぜ『自己破産』を選ぶのか?~経済的破綻からの完全な再出発を法的に支援する制度~
2025/08/16
■「自己破産」を選ぶ理由
(1) 借金額が非常に多額で返済見込みがゼロ(支払い不能)だから選ぶ
(2) 収入がない、収入が不安定、または生活保護で返済できないから選ぶ
(3) 借金返済のために日常生活インフラが破綻しているから選ぶ
(4) 複数社からの多重債務状態で借金が無間地獄のようになってしまったから選ぶ
(5) 個人再生を望んだのに清算価値保障の原則に抵触して最低弁済額が払えないから選ぶ
(6) 債権者からの「法的請求・差押え・強制執行」で家計が崩壊しまいかねないから選ぶ
(7) 精神的・身体的に限界が来ており、早期に解放されたいから選ぶ
(8) 代償として社会的制約を受け入れてでも、人生をやり直したいから選ぶ
■自己破産に適しているか否かのチェックシート(全10項目)
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■ 自己破産の制度理念
自己破産とは、借金などの債務を支払うことができなくなった(支払い不能)人が、裁判所に申し立てをして、財産を清算する代わりに、残りの借金の返済義務を免責・免除してもらう救済手続きです。
自己破産は、単なる債務免除手続ではありません。自己破産は、経済的に破綻した人を救済し、生活を立て直して人生の再出発の機会を与えるための制度です。同時に、債権者のあいだで公平に返済を分配し、契約や取引のルールを守ることで経済全体の信頼を保つ役割もあります。つまり、自己破産は「債務者の再出発」と「※社会の秩序維持」という二つの目的を兼ね備えた仕組みなのです。
※「社会の秩序維持」の意味
1.債権者のあいだで偏った弁済や不公平が生じないようにする
2.債務者が「支払えないからといって勝手に返済を止める」ような無秩序を防ぐ
3.法のルールに基づいて財産を整理し、債権者の利益を最大限確保する
■ 自己破産を選ぶ理由
(1) 借金額が非常に多額で返済見込みがゼロ(支払い不能)だから選ぶ
・借金額が非常に多く、返済能力がゼロで今後も見込みがない場合は、自己破産を最優先で検討すべき典型的なケース
・借金の額が数千万円までに達していて、日々どれだけ節約しても完済の見込みがない。
・借金額が多額で返済見込みがゼロだと利息・遅延損害金で借金総額が加速度的に膨らむ。
・そのままにしておくと、督促・差押え・給与天引きなど強制執行のリスクが高まる。
・返済額の減額交渉(任意整理)や分割返済計画(個人再生)が成立する見込みがまったくない。早急に自己破産を検討すべき。
・借金の額は世間的にみてそう多くはないが、返済能力との乖離のとても大きい。つまり、借金の額の大小だけではなく、その人の収入や生活状況からみて果たして返済が無理そうかが重要な判断基準になる。詳しくは⇒こちら
(例) 年収1000万円で借金500万円は、乖離はまだ小さく他の債務整理でも対応可能が、借金200万円で金額的にはそうでなくても無収入だったら、剥離は大きく自己破産が現実味ある選択肢となります。
(2) 収入がない、収入が不安定、または生活保護で返済できないから選ぶ
・失業・病気・介護・高齢によって働くこと自体が非常に困難。
・無職・日雇い・アルバイトなど不安定な雇用形態で、安定した返済ができないので、返済計画の履行が難しい。任意整理、個人再生でも返済に関しては安定性が必要。
・年金や生活保護だけでは生活をするのが精いっぱいで返済求めるのは現実的でない。
(※生活保護費は法律上収入ではなく「補填」「給付金」扱いで、それで借金返済はできない)
・生活保護受給中は任意整理や個人再生は選択肢から外れて成立しないのが実務である。
・生活費を捻出するだけで精一杯で、借金を返済にまわす余裕が全くない。
・まさしく、返済を伴わない自己破産は、生活保護受給者の借金問題を解決するための代表的な手段といえる。
(例) 70代の年金受給者。年金は月10万円弱で家賃で半分以上が消える。借金は200万円程度でも返済可能性はゼロ。
(3) 借金返済のために日常生活インフラ(生活の基盤となる支出や契約のこと)が破綻しているから選ぶ
・毎月の返済に追われ、食費や家賃、水道光熱費など必要最低限の生活費すら確保できない。
・生活基盤が崩れているくらいなら返済行為が伴う任意整理や個人再生では生活再建はかなり難しい。
・家族の生活にも深刻な悪影響を与えている。とにかく一度リセットして生活基盤を回復に努めるべき。
・借金の返済よりもまずは人間としての最低限の生活の確保が優先させたい。
(例) 毎月の返済5万円を確保するために保険は解約し食費を月1万円に。健康を害し医療費も満足に支払えない。水道やガスは現在滞納状態。
(4) 複数社からの多重債務状態で借金が無間地獄のようになってしまったから選ぶ
・金利が高い消費者金融などが複数ある場合利息だけでも月数万円かかる。
・借金返済のために別の借金をすることは、元本が減らず、利息だけが膨らむ悪循環「自転車操業」状態になっており、破綻は時間の問題。
・複数の業者により返済日が重なったり別れても返済日が短期間で連日に到来するため心理的・経済的負担が極大化する。
・仮に、一時的にしのげても、確実に残高は増えていくのは目に見えている。
・任意整理では借入先が多すぎて個別交渉が非現実的(交渉コスト、手間が膨大、手続が複雑化)。
(例)消費者金融5社から借入れ。月10万円の返済義務があるが、収入は手取り17万円。1社を返済するために別の業者から借り入れる「回し状態」。
(5) 個人再生を望んだのに清算価値保障の原則に抵触して最低弁済額が払えないから選ぶ
・個人再生では、最低でも「清算価値」以上の金額を返済する必要があります。「清算価値」とは「もし自己破産したら換金して債権者に配当できる財産の価値」のこと。
・清算価値が高い財産(クルマ、退職金、不動産、貴金属など)を持っていると返済総額が増えてしまい、再生計画の遂行が不可能になる。
・清算価値に見合う金額を3~5年ではどうしても返済できない。
・個人再生を希望しても民事再生法174条2項2号「返済の遂行の見込みがある」満たせないならば認可要件を満たせず、結果として、自己破産が現実的な代替手段になる
(例) 現金は数万円だが、所有不動産の精算価値が1400万円。個人再生では清算価値分の返済が必要となり、その価値分を現実に支払えない。
(6) 債権者からの「法的請求・差押え・強制執行」で家計が崩壊しまいかねないから選ぶ
「差押え」 ⇒ 給与・預金・不動産などを債権者が強制的に取り上げる手続き
「強制執行」⇒ 差押えを実行する段階(預金口座の凍結・給与天引きなど)
・自己破産の申立てを行うと、裁判所からは「破産手続開始決定」がなされ、その時点で強制執行が中止・禁止されて(破産法42条)、差押えや督促が止まって生活再建のための最低限の資金、財産を守れます。そして、自己破産は当然に免責許可がメインとなるわけだから、その効果で借金返済義務が消滅する。
・上記のいずれの段階であっても、すでに支払不能状態であれば自己破産の申し立てを検討せざるを得ない。もし、未だ支払不能状態に陥っていないならば、一応は任意整理、個人再生も視野に入りますが、ただ、時が進めば進むほど成功の可能性や条件がどんどん厳しくなります。もし、借金問題を真剣に何とか解決したい!と思っていていたのでならば、もっと早い段階で任意整理、個人再生に着手すべきであったし、この三つのいずれかの段階まで進んでしまっているということは、往々にして任意整理、個人再生での解決をめざすには、時期的に遅きに失していることが多いといえます(必ずしもそうとはいえないが・・・)。その場合は自己破産に移行することになる。もちろん、自己破産の申し立てもタイミングを逃すと大変なる。←後述参照。
・差押えまでいってしまうと、給与(1/4)とか預貯金が差し押さえられ生活費そのものが確保できなくなり生活が崩壊してしまう。大至急申し立てをすべき。
・すでに差押え・強制執行が始まっているという段階では、もはや返済に回す金員がない状況だから、借金を返済するという行為は可能性は極めて低く、返済を重要な要素とする任意整理、個人再生の可能性はもはやないといってもいい、だから、返済という行為を必要としない「自己破産」が唯一の現実的な解決策とみていいでしょう。
債権者が裁判所を通して返済を求める | ★★★★☆(高い) | この段階であれば、まだ任意整理や個人再生の可能性も残っているが、支払い不能なら早期の自己破産検討が有効 | |
裁判所命令で財産や収入が差し押さえられる | ★★★★★(非常に高い) | 生活費が削られ、返済能力がさらに低下。すぐに破産申立てを検討すべき状況 | |
財産が現実に取り立てられる | ★★★★★(緊急性あり) | この段階では差押え済み分は取り戻せない。残る財産や生活資金を守るため急ぎ申立てが必要 |