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「個人再生」とは? ~多くの場合で裁判所に借金(元本)を平均5分の1程度に減縮できる手続~

< 目 次 >
「個人再生」とは?
「個人再生」の申し立て要件と認可要件
(1) 「申し立て要件」
(2) 「認可要件」
 個人再生には2種類ある
 住宅ローン支払い中の住宅を手放さずに済む仕組み
(1) 住宅ローンが払えないと、家を失う?
(2) 個人再生の「住宅ローン特則」とは?この制度はこんなことができます
(3) 住宅ローン特則はこんな人におすすめ
「個人再生」はまず利息制限法の再計算から開始
「個人再生」で支払うことになる最低弁済額はいくら?~3つの基準~
(1) 「最低弁済基準額 (民事再生法231条2項)」
(2) 「清算価値保障の原則 (民事再生法174条2項)
(3) 「可処分所得2年分」((給与所得者等再生の特有の基準))
「個人再生」の手続の流れ(簡略)
「個人再生」する人で財産が多い人は要注意
「個人再生」のメリット&デメリット・「個人再生」するに向いている人
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■ 個人再生とは?

 

任意整理・個人再生・自己破産の3者比較表
 


「個人再生」は、このままだと借金を払い続けるのがむずかしくなってしまいそうな人が、裁判所の手続きを使って借金の額を大幅に減らし、今の収入の中で無理のない返済を続けられるようにする法的手続です。

減らしたあとの借金は、裁判所が認可した「再生計画」にそって返していき、生活を立て直していきます。

個人再生は「自己破産」のように借金がまったくゼロになるわけではありません。あくまで「大きく減らして、残りを返す」という仕組みです。

ざっくばらんに言ってしまえば、借金額のおよそ80%を減額できる手続きといいます。

それでも、自己破産のように家や車などの一定の価値ある所有財産が取り上げられることはなく、持っている財産はそのまま残せるのが大きな特徴です。

つまり、個人再生は「破産して全部失うのは避けたい、でも今のままでは払えない」という人に向いている制度です。破産する前に、なんとか立て直せる道を探すための方法といえます。

また、個人再生では、借金の元本(かりたお金そのもの)を減らします。これは「任意整理」のように利息だけを減らす方法とは違います。
さらに、任意整理は裁判手続きを経ずに借りた側と貸した側が直接話し合って決める方法ですが、個人再生は裁判所が必ず関わります。

したがって、裁判所が認可した再生計画には法的拘束力があるので、貸主側の債権者もそれに従わなければなりません。関係者間に合意がなくても進めることができます(※「小規模個人再生」というやり方では、貸した側の意見を聞く仕組み(書面決議というシステム)はありますが、これは単純な「合意」とは少しちがいます)。

このようにして、借金の額は平均するともとの5分の1くらい、場合によっては10分の1くらいまで減ることもあります。

「任意整理」の場合は、裁判所が関与せず、当事者同士の話し合いだけで解決する手続きです。そのため、提案された解決案を一方の当事者が必ず受け入れなければならないという法的拘束力はありません。合意するかどうかは完全に自由です。もちろん、いったん合意すれば、その内容(和解案)には従う必要があります。「個人再生」は、この点が任意整理とは違います。


 

■ 申し立て要件 と 認可要件

 
「個人再生」は「自己破産」と同じく裁判所を通じて行う手続きのため、認めてもらうには「申し立て要件」「認可要件」の両方を満たす必要があります。

まず「申し立て要件」を満たしていなければ申請自体ができず(却下されます)。また、「認可要件」を満たしていなければ、裁判所は再生計画を認めず、個人再生は成立しません(不認可となります)
個人再生は法的手続きであるため、これらの要件にはそれぞれ法律に基づく明確な根拠(条文上の条件)に基づいています。

「申し立て要件」と「認可要件」は、手続きの異なる段階で求められる条件です。流れとしては、まず「申し立て要件」をクリアし、その後「認可要件」を満たすことで個人再生が成立します。

┌──────────────┐
│ 申し立て要件(スタートライン)│
└──────────────┘
   ↓
裁判所が手続きを開始
   ↓
┌──────────────┐
│ 認可要件(ゴールライン) │
└──────────────┘
   ↓
再生計画が認可される

 (1)「申し立て要件」

「申し立て要件」とは、申し立てをする人が個人再生を利用できる立場にあるかどうかを判断するための条件です。裁判所に申し立てる際の「入口の条件」ともいえ、比喩的にいえば、スタートラインに立つための要件です。

以下に挙げるのが、個人再生における主要な申し立て要件の一覧です。これらの要件を満たさなければ、手続は開始できず、再生計画案も却下されます。なお、個人再生の種類(小規模個人再生と給与所得者等再生)によって一部要件が異なります。

申し立て人が「個人(自然人)」であること
(民事再生法221条)

借金総額が5,000万円以下であること(住宅ローンは除く)
(民事再生法221条)

将来にわたり、継続的かつ安定した収入が見込まれること
(小規模個人再生の要件・民事再生法221条)

パート・アルバイト・年金でも可能です。重要なのは収入の金額よりも「毎月ある程度安定した収入の見込みがあるか」ということです。なお、給与所得者等再生の場合は、これに加えて「収入の変動幅が小さいこと」が必要です(民事再生法232条)。

支払不能に陥るおそれがあること(借金の返済が完全に不能になったのではなく、その恐れがある状態)
(民事再生法21条)

これは個人再生固有の要件というより、民事再生手続全体の開始要件(包括的要件)です。

過去7年以内に免責や再生計画の認可を受けていないこと
(民事再生法232条1項2号)

これは給与所得者等再生に特有の申し立て要件です。

 (2)「認可要件」

「認可要件」とは、提出された再生計画案が本当に実行可能かどうか、また債権者の利益を不当に侵害していないか(他の債権者にとって不公平になっていないか)を判断するための条件です。これは手続きの「出口の条件」であり、比喩的にいえば、ゴールにたどり着くための要件です。

以下は、個人再生の主要な認可要件です。この要件を満たさない再生計画は認可要件不認可となります。なお、個人再生の種類(小規模個人再生と給与所得者等再生)によって一部内容が異なります。

再生計画を期限までに出していること
(民事再生法163条1項・2項)

※ 裁判所が決めた期限を守って、計画をきちんと提出する必要があります。

再生計画案に継続性、安定性ある収入で返済を遂行(継続)していく見込みがあること
(民事再生法174第2項2号)

※ 安定した収入があって、計画どおりに返していけるかどうかが見られます。主に家計収支表に照らして判断されますが、例えば、月に20万円の収入しかないのに毎月15万円返すような計画、あるいは家計の余剰が3万円しかないのに、月額の返済が5万円の再生計画案を提出しても、それは実行可能性がない無理と判断されて再生計画は不認可になります。「小規模個人再生」の方が「給与所得者等再生」より少しゆるやかです。

決められた最低金額以上(借金額に応じた定額・清算価値・可処分所得2年分のいずれか)を返せること
(民事再生法第157条)

※「借金の総額」や「持っている財産」、または給与所得者等再生の場合は「自由に使えるお金の2年分」など、法律で決められた最低ライン以上を返せる状況が必要となります。「給与所得者等再生」はこの基準があるため、少し多めに返す必要が出てきます。

小規模個人再生の場合は、貸した人の多数が同意していること(書面決議)
(民事再生法231条)

※「給与所得者等再生」は貸した人の同意は必要ありません。

再生計画が法律や社会のルールに反していないこと
(民事再生法175条1項)

※ 例えば、特定の貸した人だけを優遇する計画(債権者の利益に反する)や、犯罪や反社会的な活動のためにお金を使うような計画はダメです。


要件の種類
申し立て要件
認可要件
目的
手続を始めるため
再生計画を認めるため
主要な審査項目
個人再生を申し立てるために必要な条件 再生計画案を裁判所に認めてもらうための条件
根拠条文
民事再生法 221条・232条など
民事再生法 174条
審査されるタイミング
手続開始決定の前に審査される
再生計画案の提出後に審査される
審査対象
申立時の債務者の属性・収入の見込み・債務総額など 再生計画案の内容・返済を継続していく見込みなど
主な内容
再生債権の総額が5000万円以下。継続・安定して収入を得る見込みがある。(給与所得者等の場合)過去7年以内に免責や認可を受けていない 計画が法令に適合している。最低弁済額・清算価値以上の返済がある。計画遂行が可能である。債権者の一般の利益に反しない
満たさないと…
手続開始決定が出ず、申立て却下
再生計画案が不認可になる


する段階
目的
主要な審査項目
申し立て要件
手続きを始めるため
借金額・収入の見込み・支払不能
認可要件
再生計画を始めるため
計画内容・返済遂行の見込み・債権者の同意

※「申し立て要件」「認可要件」ともに「収入」に関することですが、見るポイントが違います。
・申し立て段階には、継続的安定的な収入の見込みがあるか
・認可段階では、返済を遂行(継続)していく見込みがあるか(その収入で払っていけるか)

・申し立て要件の「収入」は、ある程度の額より“安定性”が重視されます。
・認可要件では、収入の安定性に加え「その収入でどこまで返済可能か」が問われます。

>>「認可要件」について一歩踏み込んだ考察 <<

~裁判所の実質的・裁量的判断との関係~

ところで、個人再生の重要な認可要件の「再生計画案が遂行される見込みがあること(返済を継続遂行していく見込みがあること)(民事再生法174条2項2号)」の「見込み」をどのようにとらえるかが問題になります(解釈問題)。

継続性ある収入源あって借金の返済にも十分余力あるにもかかわらず、借金の返済に回す意思がまったく見受けられない場合、結論としては裁判所は提示された再生計画案を実質的・裁量的な判断により認可しないということでは同じ結論になりますが、そこに到達するプロセスで解釈は分かれています。

つまり「再生計画案が遂行される見込みがあること」の判断について、裁判所がどの程度までかかわるのか?という問題であり、まず、一つの考え方は、提出された形式的資料(家計の収支表や給与明細表、家計に関する計画表、課税証明書など)を形式的に判断し、それでもって足りるという考え方。つまり、形式的資料に基づき「収入-支出=返済可能額」であれば認可要件は満たされているという考え方です(形式的判断説)

それに対して、もう一つの考え方は、形式的資料に対する形式的な客観的判断(収入・支出・家計状況)のみにとどまらず、申立人の生活態度・過去の履歴・支払実績・返済の意思、誠実性などの実質事情(主観的事情)も含めて、裁判所が実質的・裁量的な判断をも含めて認可要件を満たしているかを判断する考え方。つまり、形式的資料に基づき「収入-支出=返済可能額」であっても認可要件は満たされるとは限らないという考え方です(実質的・裁量的判断説)

【具体例】:継続性があって安定的した収入がありながらも、ギャンブル依存症や浪費癖がひどくて借金の返済がママならず、挙句の果ては債務整理を行うことになり個人再生を裁判所に申し立てしました。収入はしっかりあるので、この一部でも借金返済に回せばほどなく借金の完済を目指せるので、それに沿った再生計画案を裁判所に提示しました。裁判所は提出された再生計画案の審理を開始しましたが、申し立て人の生活態度は一向に改善されず誠実さを欠け、未だにギャンブルと浪費に明け暮れて収入を借金返済に充てる期待感はまったく見出せません。、裁判所は生活態度の改善は見受けられず、借金を返済していこうという意思はまるっきりないと判断を下しました。よって、提出された「再生計画案」を不認可にしました。

 
民事再生法174条2項2号の解釈で(実質的・裁量的判断説)が判例実務に近い考え方です。
                    
個人再生の認可要件で特に重要なのは、民事再生法第174条に規定されている「提案された再生計画案に基づいて返済が継続的に遂行できる見込みがあるかどうか」です。この要件の解釈は、単なる形式的な書類や収入の数字のみに着目するのではなく、申し立て人が返済に向けた生活状況、態度・返済意思の有無といった材料も判断に入れて、裁判所が返済の継続的遂行が本当に可能かどうか、総合的、実質的に調査して最終判断するものです。
そもそも 認可要件の中には「実現可能性」や「誠実性」など、客観的・主観的の両方の要素の総合的判断が含まれることを想定しています。
したがって、申し立て人に「客観的に返済可能な収入がある」と主張しても、裁判所が「返済に充てる意思がない」「生活態度が不誠実」と判断すれば、認可要件そのものを満たしていないとされます。

すなわち「認可要件はクリアしたけど、裁判所の裁量で不認可にした」というアプローチではなく、むしろ「認可要件のうちの『返済遂行の可能性』を、生活態度も含めて審査した結果、返済できる見込みがない場合は、そもそも認可要件を満たしていない」と判断されるということです。

裁判所の実質的・裁量的評価は、認可要件の判断の中で行われるものであり、両者は理論的には不可分。

つまり、上記の具体例では、形式的に認可要件を満たしたが実質的・裁量的判断で不認可にしたのではなく、生活態度の悪さがそのまま認可要件の不充足につながった、という論理です。

 

※個人再生に関する重要な日付の流れ(参考まで)
1.申立日
└ 裁判所に個人再生の申立てを行う日(申し立て要件)

2.手続開始決定日
└ 裁判所が再生手続を開始すると決定した日

3.再生計画案提出日
└ 債務者が再生計画案を提出(認可要件)

4.再生計画認可決定日 ←【信用情報の起算点として最もよく用いられる】
└ 裁判所が再生計画案を正式に認可した日

5.再生計画認可確定日(認可決定に対して不服申立がなかった場合)

 

┌─────────────┐
│ ① 申立て前準備 │
└────┬────────┘

┌─────────────┐
│② 再生手続の申立て│
└────┬────────┘
│ ┌───────────────┐
│ │【申立て要件】 │
│ │・将来にわたり継続的収入が見込まれること │
│ │・負債総額が5,000万円以下(住宅ローン除く)│
│ │・過去7年以内に再生・破産で免責を受けていないこと等│
│ └───────────────┘

┌─────────────┐
│③ 手続開始決定 │
└────┬────────┘

┌─────────────┐
│④ 再生計画案の提出 │
└────┬────────┘

┌─────────────┐
│⑤ 書面決議 or 意見聴取│
└────┬────────┘

│ ┌──────────────┐
│ │【認可要件】 │
│ │・再生計画が法定要件を満たすか │
│ │(最低弁済額、履行可能性など) │
│ │・債権者の過半数が同意(小規模個人再生)│
│ │・再生計画の内容が不当でない │
│ │・裁判所の裁量で不認可とされないこと │
│ └──────────────┘

┌─────────────┐
│⑥ 再生計画の認可決定 │
└────┬────────┘

┌─────────────┐
│⑦ 再生計画の履行 │
└─────────────┘

■ 個人再生には2種類ある

 
「「個人再生」には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。どちらも、負債総額が原則として5,000万円以下で、将来にわたって継続的かつ安定した収入が見込める人が利用できます。手続きの流れはほとんど同じですが、申し立てや認可の要件にいくつか違いがあります。

(1) 小規模個人再生とは

将来において継続的かつ安定した収入を得る見込みがあれば申し立てできる手続きです。
パートやアルバイト、自営業者、年金生活者など、収入の形態にかかわらず広く利用できます。
実際に個人再生を選ぶ人の約9割がこちらを利用しています。

(2) 給与所得者等再生とは

小規模個人再生の条件に加えて、収入が「給与などの定期的で変動の少ないもの」であることが必要です。
対象は主に会社員や公務員など、毎月一定額の給与収入がある人に限られます。
ただし、最低返済額が高くなるケースが多いため、実際に選ばれることは少なく、利用者は全体の1割程度にとどまります。

「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の違いについては、下記の関連記事を参照してください。

 

■ 住宅ローン支払い中の住宅を手放さずに済む仕組み ~住宅資金貸付債権に関する特則~

 
(1)住宅ローンが払えないと、家を失う?
 
住宅ローンの返済が滞ると、せっかく手に入れたマイホームが競売にかけられてしまい、手放さざるをえなくなるのが一般的です。なぜなら、銀行や金融機関は、住宅ローンを貸すときに家に抵当権(担保の権利)を設定するのが通常です。

そういった中、もし住宅ローンの返済が滞ると、抵当権を実行して競売にかけ、売却代金で貸したお金を回収します。その結果、住む家を失ってしまうのです。

(2) 個人再生の「住宅ローン特則」とは?
 
そんなときに役立つのが、個人再生の中にある「住宅ローン特則(正式には住宅資金特別条項)」という仕組みです。

この制度を使うと、こんなことができます:
● 住宅ローンはこれまで通り返済し続ける
● 住宅ローン以外の借金は個人再生で大幅に減額してもらえる
● 住宅ローン以外の借金は個人再生で大幅に減額されるので、それも分割でゆっくり返済できる

つまり、住宅ローンの返済額の減額はなく当初の契約通りの金額を返済しなければなりませんが、住宅ローン以外の借金が大幅に減ることで、住宅ローンの返済に余裕ができ、家を手放さずに生活を立て直せるという仕組みです。

(3) 住宅ローン特則はこんな人におすすめ
 
● 借金は減らしたいけれど、家族のためにマイホームは守りたい
● 住宅ローンの支払いを続ける意欲・見込みがある
● 他の借金の負担が重くて生活が苦しい

この住宅ローン特則は、以上のような人にとって、とても心強い味方になります。

但し、どんな場合でも必ず家を守れるわけではありません。利用できる条件やタイミングも大事ですし、手続きも少し複雑です。もし迷ったり不安に感じる場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することが大切です。住宅ローン特則を使いたいときは、専門家のサポートがほぼ必須といえます。

 

■「個人再生」はまず利息制限法の再計算から開始

 
「個人再生」では、まずは利息制限法で再計算して「確定借金額」を算出し、そこから手続に従って次章で述べている「3つの基準」に則って借金が減額されていきます。

もっとも、利息制限法の再計算による「確定借金額」の算出は「任意整理」「個人再生」「自己破産」のいずれの債務整理の手続を選択しようとも、まず最初にやるべき作業であることは言うまでもありません。
 

■「個人再生」で支払わなければならない金額~最低弁済額を決定する3つの基準~

 
個人再生は任意整理とは違って元本の大幅な減額が可能であり、その点で生活再建への度合いは高いといえます。ただ、自己破産と違って一定の金額は返済し続けなければならず、そういった意味で個人再生は任意整理と自己破産との中間的位置づけといえます。これまで述べてきたとおりです。

個人再生でいう「最低弁済額」とは、その一定の金額を返済し続けなければならない最低限度の金額をいいます。その最低弁済額は場面場面によって3つの基準があります。

 ★最低弁済額を決める3つの基準とは?

(1) 法律上の最低弁済基準額 負っている借金額ベースで決まる基準
(2) 清算価値保障原則 借金以外に所有している財産額(清算価値)ベースで決まる基準
(3) 可処分所得2年分 債務者の収入ベースで決まる基準

個人再生の最低弁済額を決定する際に上記の3つの基準を設けた理由は、債務者の経済的再建と債権者の利益保護のバランスを取る目的>があります。
※(1)と(2)は小規模個人再生」と「給与所得者等再生」に共通に適用ありますが、(3)は「給与所得者等再生」の場合のみに当てはまります。

(1)「法律上の最低弁済基準額 (民事再生法231条2項)

債務の総額によって支払わなければならない具体的な最低弁済基準額が法律で規定されています(民事再生法231条2項 241条2項5号)。多くの場合では、その金額を支払えば残りは免除されるということです。そして、それは利息制限法で再計算して導かれた「確定借金額」を元に、下記の表の5つの減額類型に区分けされ最低弁済基準額が決められています。

(※なお、個人再生」手続で「住宅ローン特則」を利用すると住宅ローンの月々の支払額はそのまま維持され影響を受けることは基本的にはないため、住宅ローンの支払いは当初の契約どおり支払いを続けていくことになります。だから、借金300万円あるとともに5200万円の住宅ローンもある場合は、一見すると5000万円越えとなって」個人再生の①の「法律上の最低弁済基準額」に触れて個人再生はできなさそうですが、住宅ローンは除外して考えてよく個人再生は利用できます。)

利息制限法の再計算で確定した借金額
民事再生法231条2項の最低弁済基準額
100万円未満
負っている借金(債務)全額
100万円を超えて500万円以下
100万円
500万円を超えて1500万円以下
借金(債務)総額の5分の1
1500万円を超えて3000万円以下
300万円
3000万円を超えて5000万円以下
借金(債務)総額の10分の1

(例1)
住宅ローンを除いた借金が350万円の場合は、最低弁済基準額は100万円となり、他に財産がなければその金額が最低弁済額となって3~5年間で返済することになります。つまり、350万円の借金額が法律の規定でもって100万円に減額されたということです。
(例2)
住宅ローンを除いた借金が800万円の場合は、800万×1/5=160万になって、この金額が最低弁済基準額となって他に財産がなければこの160万円が最低弁済額となって3~5年間で返済することになります。つまり、800万円の借金額が法律の規定でもって1/5の160万円に減額されたということです。

(2)「清算価値保障の原則 (民事再生法174条2項4号)

もし、自己破産すると債務者(借金をしている人)の持っている財産は、自由に使える分(自由財産)を除いて、すべてお金に換えられて、債権者に配当されます。
これを「清算価値」といいます。つまり、「今持っている財産を全部売ったら、いくらになるのか?」という金額です。
 
例えば下記のようなものが対象です
● 現金や預貯金
● 株や投資信託などの有価証券
● 不動産の時価
● 保険の解約返戻金

そもそも、個人再生は、自己破産と違って、持っている財産を手放さずに借金を整理できるのが大きな特徴です。たとえ不動産や預貯金、保険などを持っていても、そのまま持ち続けながら、借金の減額と分割返済ができるのです。

ただし、この仕組みを悪用すると債権者が不公平な扱いを受けてしまうケースがでてきます。

例えば…
借金総額が500万円あって、持っている財産が300万円あった場合、借金の整理を個人再生ですると、先に述べた個人再生での「法律上の最低返済額(民事再生法231条2項)」によると借金総額500万円は1/5に減縮されて100万円を返済すればよいということになります。300万円の財産をそのまま持ったまま100万円だけ返済して借金完済ということになります。この結論は明らかにおかしいですよね?

もし、自己破産で債務整理したら、300万円の財産は処分されて現金に換えられて債権者に配当されるはずです。

この不公平を防ぐためにあるのが「清算価値保障の原則」です。

この原則を説明すると「個人再生」で返済すべき金額は、今現在仮に債務者が「自己破産」したら債権者へ支払うことになる配当金額以上の金額でなければならないというルールを言います。逆にいえば、個人再生で返済すべき金額は、債務者がもし仮に自己破産を選択した場合に債権者に配当される金額を下回ってはならないということです。

この清算価値保障の原則のおかげで、個人再生と自己破産の間のバランスが保たれています。

清算価値保障の原則のポイント・まとめ

● 清算価値=自己破産したときに処分される財産の合計額
● 個人再生では、この清算価値より少ない金額しか返さないのはNG
● 財産を手放さずに済む代わりに、その価値分は返すのがルール
したがって「清算価値保障の原則」によると、上記の表の示された「最低弁済基準額」「清算価値(所有財産)」とを比較して大きい方の金額を最終的な最低弁済額として返済すべき金額となります。

 

(3)「可処分所得2年分 (給与所得者等再生の特有の基準)

「給与所得者等再生」には「小規模個人再生」と共通の基準に加えて、さらに『可処分所得の2年分以上』という追加条件が課されます。

「可処分所得」とは、簡単にいうと、自分が自由に使えるお金のことです。具体的には、収入から次のものを引いた残りです:

● 税金(所得税・住民税)
● 社会保険料
● 必要最低限の生活費(法律で決められています)

この残ったお金が「可処分所得」と呼ばれます。

どうして「給与所得等再生」には追加の条件があるのかというと、理由は「小規模個人再生」と「給与所得等再生」の2つの制度の違いにあります。
「小規模個人再生」の場合は、債権者による多数決の仕組み(書面決議制度)があります。これは、もし債権者が「この計画は不公平だ」と判断すれば、反対することができ、再生計画が認められないこともあります。

でも「給与所得者等再生」には書面決議がありません。つまり、債権者の同意がなくても再生計画が認められるのです。
その代わり、債権者によるチェックがない分、債務者はより重い義務として「可処分所得の2年分」を返済にあてるという条件が追加されているのです。

「可処分所得2年分」が要件として追加されると、結論はどうなるかというと「給与所得者等再生」では、通常の「小規模個人再生」よりも返済する総額が多くなりやすいことになります。

追加要件「可処分所得2年分」のポイント・まとめ

●「給与所得者等再生」は、債権者の同意がいらない代わりに、可処分所得2年分を返す必要がある
●「可処分所得」は、税金や生活費を引いた後の自由に使えるお金のこと
● そのため、返済額は「小規模個人再生」よりも多くなるケースが多い
したがって「給与所得者等再生」では、「最低弁済基準額」「清算価値(所有財産)」「可処分所得2年分」とを比較して一番高い金額を最終的な最低弁済額として返済する必要があります。

 

■ 個人再生の手続の流れ(簡略)

 
1. 事前準備・相談      (裁判外の手続の流れ)
弁護士や司法書士に相談して、個人再生が適しているかを判断。
必要書類の収集(債権者一覧表、家計簿、給与明細、資産目録など)。

2.受任通知の発送      (裁判外の手続の流れ)
委任契約後、弁護士が債権者に「受任通知」を送付。
これにより、債権者からの督促や返済は一時的にストップ。

3.個人再生申立ての準備   (裁判外の手続の流れ)
書類の作成(申立書、再生計画案の原案など)。
裁判所に提出する財産・収入・支出の詳細情報を整備。

4.裁判所への申立て     (裁判上の手続の流れ)
地方裁判所に「個人再生申立書」を提出。
申立費用(印紙代・予納金など)も納付。

5.書類審査と開始決定    (裁判上の手続の流れ)
裁判所が申立書を審査し、問題なければ「個人再生手続開始決定」。
同時に個人再生委員が選任されることもある(東京地裁)。

6.債権調査・債権届出・財産調査(裁判上の手続の流れ)
債権者が債権額を裁判所に届け出る(債権届出)。
債務者は家計収支表などを提出。

7.再生計画案の提出     (裁判上の手続の流れ)
債権総額や債務者の返済能力に応じた再生計画案を作成。
原則として申立てから約3か月以内に提出。

8.債権者による決議     (裁判上の手続の流れ)
(小規模個人再生の場合には必要)
債権者が再生計画案に「不同意」とするかどうかを回答。
債権者の過半数かつ債権総額の半数以上が反対しなければ成立。

9.再生計画の認可決定    (裁判上の手続の流れ)
裁判所が計画案を認可。
認可後、返済が開始される。

10.再生計画に基づく返済開始(裁判上の手続の流れ)
原則として3〜5年かけて計画に従い返済。
完了すれば残債務は免除される。

※「個人再生」の手続きの流れについて詳しくはこちら。
 

■「個人再生」する人で財産が多い人は要注意

 
「個人再生」における最低弁済額は「清算価値保障の原則」によって、債務者の所有している全財産の清算価値によって増額されるシステムになっています。だから「個人再生」は財産を手元に置いておきながら、大幅に減額ができる仕組みである点に特徴があるとしても、高額の財産を持っている人が「個人再生」をおこなうと最低弁済額が増額されることになるので注意が必要です。

もっとも「個人再生」を申立てる債務者で「清算価値保障の原則」を満たさなければならないようなケースはあまりないと思います。多くの場合が民事再生法231条2項で済むはずです。


項目
内容
清算価値とは?
自己破産した場合に、自由財産を除いたすべての財産を換金した金額
個人再生の特徴
財産を手元に残したまま、借金を大幅に減額して返済できる制度
なぜ清算価値保障原則が必要? 財産を持ったまま最低基準額(法律で定められた額)しか返さないのは、債権者に不公平になるため
清算価値保障原則の内容 個人再生で返済する金額は、自己破産したときに配当される金額(清算価値)以上でなければならない
注意点
高額な財産を持つ人は、その分最低返済額も増える
実際は?
多くの人は清算価値が低く法律の最低基準額で済むケースがほとんどです

自己破産の場合
 → 財産をすべて換金して、債権者に配当
 → 配当額=清算価値

個人再生の場合
 → 財産はそのまま持てる
 → でも返済額は【清算価値以上】が必要!
 

■「個人再生」のメリット&デメリット・「個人再生」するに向いている人

 

(1) 「個人再生」のメリット&デメリット一覧

ーメリットー
1. 貸金業者からの取り立てや支払の督促をストップできる。
2. 借金(元本)を1/5~1/10程度の大幅な減額ができ原則3年~5年の分割返済ができます。
3. 自己破産では処分される資産でも、手元に残したまま手続を進めることができる。(但し、清算価値保障の原則に注意)
4. 住宅ローン支払い中の住宅は「住宅ローン特則」を利用することで住宅を手放さず守ることができる。
5. 個人再生には自己破産にあるような職業上の制限(資格制限)がない。
6. 借金した理由、原因を問わずに個人再生を申し立てることができる。ギャンブルや浪費でも申し立てできる
7. 個人再生手続開始後は貸主(債権者)の進行中の強制執行手続は中止される。

ーデメリットー
1. 信用情報機関に事故情報が登録され5~10年間は新たな借金やクレジットカードの利用が制限される。
2. 官報(国発行の広報誌)に氏名・住所が掲載されて公になってしまう。。
3. 個人再生を選択できる条件として、負債総額に上限がある(5000万円以下)。
4. 高額の財産を持っている人が「個人再生」をおこなうと最低弁済額が増額されることになる。
5. 借金の原因がギャンブルや浪費だった場合、個人再生は申し立て要件は通過したとしても不認可の可能性がある。
6. 保証人がいる場合、その人に返済義務が移るため、保証人に迷惑がかかる可能性がある。
7. 安定的かつ継続的な収入がないと個人再生を選択することができない。
8. すべての債務が対象となるため、一部の借金だけを個人再生することができない。
9. 手続きが複雑であり裁判所を介するため時間と費用がかかる。

(2)「個人再生」をすることに向いている人

1. 任意整理を選択したところで引き続き借金返済の困難性が改善されない人。
2. 借金の総額が5000万円以下で、継続的かつ安定した収入がある人。
3. ある程度の返済能力(安定的継続性ある収入がある)があるけれど、借金の減額が必要な人。
4. 住宅(住宅ローン支払い中)や車(カーローン完済)など財産を手放したくない人。
5. 借金の原因がギャンブルや浪費である人。
6. 自己破産による職業制限を避けたい人。
7. 債務整理で借金の整理をすることを家族、友人、勤務先に知られたくない人。

 

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公開日:
最終更新日:2025/08/25