個人再生はするけどクルマは仕事に必要なのでローン返済を続けて手元に残したい! ~別除権協定とは?~
2021/03/17
■ クルマのローンが完済している場合
■ クルマのローンがまだ返済中の場合
(1) 2種類あるクルマのローン
(2) 2種類のローン ~クルマを手元に残せるか?~
a)「銀行系ローン」の場合
b)「ディーラーローン(信販系)」の場合
1. クルマのローンを一括で完済する ~第三者弁済~
2.「別除権協定」を締結する
① 「別除権」とは?
② 「別除権協定」とは?
③ 「別除権協定」を成立するための三つの側面
a.まず、クルマローン会社との交渉で合意すること
b.次に、他の債権者の立場にも配慮する姿勢をみせること
c.さらに、裁判所に上申書を提出して許可を得ること
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■問題の所在
上記のようなケースってよくありますよね。
例えば、個人タクシーとか、個人の運送業とか、クレープ、アイスクリーム、ホットドックといった食べ物の移動販売業といったものは、クルマが無くてはならない商売です。しかも、そのクルマは未だローン返済中の場合ってよくあるはずですよね。
そもそも「個人再生」とはなにか?というと、裁判所に申立てをして手持ちの財産を手元に残しつつ借金を法律の規定に沿って大幅に減額(最低弁済額)できる手続きである点が特徴ですが、手元に残すことができる財産は「個人再生」を申立て人の所有財産であることが必要です。
では「個人再生」のもとで、クルマが未だローン返済中であっても合法的にクルマを手元に残して今後も使用できる方法はあるのでしょうか?・・・・・・・・・これが今回のメインテーマです(後述)。
「個人再生」という債務整理手続きがもつ特性から、色んな問題点があり、以下順序立てて考えてみます。
■ クルマのローンが完済している場合
本件とはちょっと違いますが、参考のために、まずクルマのローンがすでに完済されていて、クルマの所有者が借金返済に窮し「個人再生」を申立てた場合のクルマはどうなるか?を考えてみましょう。
この場合は、文句なしにそのクルマは自分の手元に残しておくことができます。先に述べたように「個人再生」は財産を手元に残しつつ借金を減らすことができる手続きだし、しかもそのクルマの所有権はまさに自分にあるから明らかにクルマは手元に残しておけます。
ただ、ローン返済が終わっている場合で、ケースによっては個人再生での返済額が原則より上昇してしまう場合があります。
それは「個人再生」には「清算価値保障の原則」というルールがあって、法律の規定(民事再生法)に基づいて借金が減額(最低弁済額)されても、その最低弁済額とクルマの清算価値の金額とを比べた場合、後者の方が大きい場合は、法律の規定に沿って導かれた金額が最低弁済額となるのではなく、そのクルマの清算価値の金額が最低弁済額となって、その金額を返済することを条件にクルマを手元に残しておくことができるということになります。
例えば、借金400万円があって「個人再生」をすると、法律の規定により最低弁済額は100万円になりますが、手持ちのクルマの清算価値が200万円だった場合、清算価値保障の原則により最低弁済額は200万円になります。したがって200万円を返済しなければクルマを手元に残せません。もし、手持ちのクルマの清算価値が30万円だったら、最低弁済額は法律の規定そのままの100万円ということになります。
だから、手持ちのクルマが高級外車のような価値の高いモノだったら要注意です。
もっとも、クルマの清算価値が30万円でも貯金が90万円あったら、30万円+90万円で120万円が最低弁済額と評価され、個人再生後の返済額は120万円となるので注意してください。
なお、この「清算価値保証の原則」については、この記事のメインテーマと少しはずれるので、詳しくは下記の関連記事を参照してください。
■ クルマのローンがまだ返済中の場合
まだ、ローン返済中に個人再生をした場合のクルマの行く末はどうなるか?
本件のメインテーマです。
これを考える場合、契約したクルマのローンの法的な構成によって結論が異なってきます。
大きく分けて2種類あります。
(1) 2種類あるクルマのローン
⇒銀行、信用金庫、JAなどが扱うローン
⇒ ローン返済中でもクルマの所有権は購入者に移転する
●「ディーラーローン(信販系)」
⇒トヨタファイナンス、ホンダファイナンスなどが扱うローン
⇒ローンが完済されるまではクルマの所有権は購入者には移転せずディーラーに留まる
※実際にディーラーと取り引きのある信販会社になる(例えば、オリコとか)
したがって「ディーラーローン(信販系)」は、「所有権留保」付きローン契約ということになります。
この2つのローンの詳細は、下記の関連記事の該当箇所を参照。
※該当箇所⇒(1)「クルマのローン」には大きく分けて2種類ある
(2) 2種類のローン ~クルマを手元に残せるか?~
a) 銀行系ローンの場合
もし、利用しているローンが「銀行系ローン」の場合、その引き当てとなっているのは、クルマの担保価値ではなくクルマ購入者の返済能力です。
だから、クルマ購入者はローン返済中であってもクルマの所有者であるから「個人再生」をおこなってもクルマはディーラーに引き上げられる恐れはありません。購入者はこれまで通り所有者としてクルマを自由に使用することができるのでなんら問題はありません。
b) ディーラーローン(信販系)の場合
問題は、利用しているローンが「所有権留保」付きの「ディーラーローン(信販系)」を利用している場合です。
この場合「個人再生」を行なうと「ディーラーローン(信販系)」はあくまでクルマのもつ担保価値に着目し「所有権留保」付き(別除権付き)で契約しているので、当然「個人再生」などの債務整理を行なうと、クルマはディーラーに引き上げられ購入者はクルマを失うことになります。
※「別除権」については後述2.参照。
でも、それでは困るので、クルマを手元に残してこれからも使用していくためには、きちんと今まで通り決められた月々のローン返済を続けることが必要ですが「個人再生」を予定しながら今後もローン返済をローン会社に続けていくことができるでしょうか?
結論から言うと、それは難しいです。
「個人再生」とは、裁判所が介入する債務整理手続きだから利害関係をもつすべての債権者を裁判上に登場させて平等かつ抜本的に解決していく手続きです。「任意整理」のように相対的な解決はできません。なぜなら、そこには「債権者平等の原則」が適用されるからです。
「債権者平等の原則」とは、債務超過でとても債権者全員に完済することができない場合、各債権の金額の大小や発生時期後先に差があっても、債権相互には優劣の関係はなく、ただ各債権者が持っている債権額に応じて債務者の全財産から平等の割合で弁済を受けるべきという(比例配分)原則をいいます。
だから、ローン会社へのローン返済を認めてしまうと特定のローン会社だけに優遇措置を認めることになって、他の債権者からするとそれは平等ではないことになります。その返済は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」とされ「債権者平等の原則」に反し許されないことになります。
クルマのローン会社も複数の債権者の一人にすぎず、他の債権者と同様に持ってる債権額に応じて平等に債務者の全財産から比例配当を受けなければならないのです。
なお「個人再生」では、居住用住宅については「住宅ローン特則」という特別規定があって、住宅ローンについては「債権者平等の原則」の枠外という特別扱いができることになっています。
もし、クルマにもこのような規定があれば特別扱いができるのですが、クルマのローンに関してはそのような規定はありません。
では「個人再生」を予定しながら、ディーラーローン返済をこのまま維持してこれからもクルマを使用を続けるのは諦めるしかないのでしょうか?
もし、諦めきれず、なんとかしてクルマ使用を維持したいなら、下記の二つの方法が考えられます。
1. クルマのローンを一括で完済する ~第三者弁済~
前もって、クルマのローンを完済して個人再生を行えば、クルマの名義は購入者になるので、クルマを手元に残すことができます。
個人再生を行なおうとしているくらいだから、自分では完済できないはずであり、通常は親や兄弟などの近しい親戚、友人や恋人などから援助してもらって返済するのでしょうが、このやり方は微妙な問題があります。
このやり方は、あくまで第三者弁済という形で行なう必要があるのです。
第三者弁済とは、本来返済すべき債務者本人(主債務者)以外の第三者が債務者本人に代わって弁済することをいいます。
だから、親戚等から資金を借金をして自分自身が完済しようとすれば、それは第三者弁済とはなりません。自分が特定の債権者を優先優遇して返済しようとする「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と認定されてしまう恐れがあります。これはまさに「債権者平等の原則」に反することになるのです。
2. 別除権協定を締結する
①「別除権」とは?
「別除権協定」を述べる前に、そもそも「別除権」とは何か?
「別除権」とは、破産法や民事再生法において特別の効力が認められており、原則として破産手続や民事再生手続の規制に服さずに優先的権利行使ができる権利をいいます。
「別除権」とは担保権(先取特権、質権、抵当権、その他の担保権)が、債務者の財産・資産の上に設定していれば「別除権」として行使できるのです。本記事でいう「所有権留保」も「別除権」の一つです。
「所有権留保(別除権)」付きローンである「ディーラーローン」は、裁判所による「個人再生」手続が進行中にあるにもかかわらず、それとはまったく関係なしに優先的に「所有権留保(別除権)」を行使できます。したがって「債権者平等の原則」は適用されません。
したがって、クルマ購入者が「個人再生」を申し立てると、ローン会社は、別除権である「所有権留保」を行使してローン債権回収を図ることはほぼ確実です。
以上、述べた「別除権」を前提にして、次は「別除権協定」について述べていきます。
「別除権協定」という協定が上手くいくかどうかによって、クルマを手元に留めておいてこれからも仕事に利用できるかどうかの重大な試金石となるのです。
②「別除権協定」とは?
「別除権」行使は、もっている債権を確実に確保し回収する仕組みとして必要な権利です。
でも、別除権行使によって本件のように本来仕事に使うために購入したクルマを取り上げられてしまっては、生活費を捻出できないことはもちろん、個人再生で借金は大幅に減額されるとはいえ確実に借金は返済しなければならないわけで、そのための原資を調達できなくなってしまいます。これは、本当に由々しき事態です。
仮に「個人再生」の再生計画を築けても、それには実が入っておらずたちまち破たんしてしまうのが目に見えてきます。
個人再生での再生計画立案には「継続的に収入を得る必要がある」という項目がありますが、それができなくなるのです。
そこで、でてくるのが「別除権協定」の存在です。
つまり「別除権協定」は「ディーラーローン」返済中のクルマでも手元に残しておいて使用できる方向に持って行く一つの方策なのです。
③「別除権協定」成立のための三つの側面
a. まず、クルマローン会社との交渉で合意すること
要するに、「別除権協定」を「別除権」との関係性でいえば、「別除権」とは法律上認められた権利でもある大原則であり、「別除権協定」というのは法律で明文化されているものではなく、その必要性から編み出された例外的措置だということになります。
だから「別除権協定」とは「もし、別除権を行使されると、つまり担保権を行使されるとクルマを失ってしまうので、もし行使しないでいてくれたら、そのクルマの時価相当額の金額を分割で確実の返済していくので、なんとか行使しないでくれ!」といった旨の協定を結ぶということです。
あくまで、担保権を行使された場合に、そのクルマから回収できる金額がターゲットとなるので、その時の時価相当額が返済金額となります。
だから、クルマローン債権が100万円だったとしても、クルマの査定額が50万円だったら、50万円の返済でいいわけです。残りの50万円は「個人再生」手続のなかの再生計画とは別枠で処理されていきます。
その他、交渉の中で決めることは、返済回数とか、利息はどうするとか、そのほかにもいろいろあります。
この協定は、法律上の規定にはないクルマローン会社との全く任意の強制力のない交渉、話し合いで結ばれる約束事なので、もし諸々の条件で合意に達しなければ「別除権協定」は成立しなかったことになり、それはそれで仕方がないことで、その場合はクルマは取り上げられてしまいます。
b. 次に、他の債権者の立場にも配慮する姿勢をみせること
さらに、微妙なところは、仮にクルマローン会社との交渉が上手く合意に達して、担保権を行使しないことになったとしても、他の債権者の立場も配慮しなければなりません。
これが別除権行使という担保権の行使ではなく、当事者間の話し合いでのみで成立した「別除権協定」で、クルマローン会社へのある面特別な配慮をすることになので、やはり他の債権者との関係では「債権者平等の原則」との絡みで問題を生じます。
だから、他の債権者たちには「個人再生手続のもとで、あなたたちへの借金返済を滞りなく果たすためには、クルマが必要だし、そのクルマを残すためには、クルマローン会社との間で結ばれた別除権協定が絶対に必要なんです!」ということを主張して、それを分かってもらわなければなりません。
特に「個人再生」で「小規模個人再生」を選んだ場合は、書面決議で総債権者数の半分を超える者が反対、もしくは債権者の債権額が総債権額の半分を超えた場合は、再生計画案は否決されてしまいます。
否決されることはめったにありませんが、否決されたら一貫の終わりですから、特に大口の債権者には事前に説明し了解をとっておく方がいいです。
c. さらに、裁判所に上申書を提出して許可を得ること
「別除権協定」が当事者間、関係者間で承認を得て成立しても、裁判所に上申書を提出してその許可を得る必要があります。
これは、裁判所の目から見えて、その「別除権協定」が全体的に公平性が保たれているかを判断することで、許可を得られれば、その費用は「共益費債権」として関係債権者共同の利益に資して、再生計画実現に向けて必要な支出と判断されて、ひいては「個人再生」認可に繋がります。
思うに「別除権協定」は、債権者平等の原則の例外を法律上の決まり事ではなくて認めようとするものですから、実務上は、裁判所に「別除権協定」を認めてもらうことはかなりハードルが高いと考えていいです。
クルマの使用が仕事を行なうにあたってなくてはならない不可欠である場合を除いては、あまり認められることに期待しないほうがよいでしょう。
① 個人再生を申立てると、ローン会社は債権回収のため必ず「別除権」を行使する。
↓
② 「別除権」を行使されると、クルマは取り上げられる。
↓
③ クルマについては「住宅ローン特則」のようなクルマを守れる制度はない。
↓
④ じゃあ~、どうしたらいかというと「別除権協定」しかない。
「別除権協定」とは、債権者であるクルマローン会社に別除権を行使しないように約束をしてもらうことです。その代わり個人再生計画とは別枠で、その時のクルマの時価相当額と同じだけの金額を分割や一括で返済しますよという協定を結ぶのです。お金はちゃんと払うから車は持っていかないで!ということです。
但し「別除権協定」を申し立てるに足る特別の理由がないと認められません。例えば、このクルマがないと仕事ができなくなり他の借金も返せなくなってしまうような特別の事情があるときには検討します。
以上、「別除権協定」というのは、最終的には裁判所が関わってきますが、それは事後的な関わりであり、「別除権協定」については法律上の規定ではなく、強制力を伴わない当事者間、関係者間の任意の交渉、話し合いを経て、最後には合意を得なければならないものです。
そして「別除権協定」が認められるか否かは、少し大げさに言えば、これからのあなたの将来に大きな影響を与えることになりかねません。今回のようなケースはまさにそう捉えてもいいほどです。
だからこそ「個人再生」の申し立てはもちろんのこと、そういう交渉事に未経験な素人が行うよりも、押し引きの駆け引き、タイミング等で豊富な知識や経験に裏打ちされた、長けた交渉術を備えた弁護士、司法書士といった専門家に任せたほうがいいので気軽に相談ください。
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