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自己破産手続では「管財事件」と「同時廃止」の2種類 ある ~両者の特徴と振り分け基準は?費用の違いは?~

      2021/10/13


 

 

 

■ 「管財事件」と「同時廃止」のそれぞれの特徴

 
自己破産は裁判所が関与する債務整理の手続です。

自己破産とは、破産者が所有している一定の価値ある財産・資産等を換価処分(等価値の金銭に換える)して、債権者に弁済、あるいは比例配当して、それでも破産者に借金が残っていてもその借金は返済しなくていい、つまり免責される手続をいいます。

破産者の換価処分(等価値の金銭に換える)した財産を各債権者に弁済、比例配当する手続を「破産手続」、借金返済は免責にしてチャラにする手続を「免責手続」といいます。両者はそれぞれ別個の手続きですが、一体化して同一手続内で同時進行していきます。

その同時進行のなかで2つの流れがあって、「管財事件(少額管財事件も含む)」「同時廃止事件」があります。
 

(1)「管財事件」とは?(処分する財産が多いときの手続)

 
「管財事件」とは、破産申し立てをして破産者の財産を調査、管理、換価処分(等価値の金銭に換える)し、債権者に弁済、比例配当するのに必要な破産手続をいいます。

「管財事件」になると、破産者の財産調査、管理、換価処分、債権者への弁済、比例配当とともに、破産者に免責を認めてもいいかの調査も必要となるので、「管財事件」になると当然その任に就く破産管財人が裁判所によって選任されることになります。

「管財事件」では、破産管財人を中心に破産手続、免責手続等々諸々行われるので、手続きは単純でなくかなり手間のかかる作業になります。だから、破産が正式に認められるまで半年~1年程度を要する場合も少なくありません。

それに破産管財人が選任されれば、その人件費がかかってくるので、その費用は破産申し立てした破産者本人が負担することになり、そのための予納金は手続に入る前に裁判所に納めなければなりません。予納金を納めないと破産手続が始まりません(申し立て却下)。

予納金の内訳は「手数料、官報公告費用、郵便切手、引継予納金」です。そのほとんどは破産管財人の人件費となる引継予納金で占められます。調査すべき財産が多くて処理すべき点が多ければ多いほど、仕事の内容も複雑になり、費やす時間も増えるので、破産管財人の報酬額は高額になります。そうすれば当然予納金の額も増えます。

東京地裁を例(予納金の額は裁判所によって違います)で「管財事件」の予納金の金額を示すと最低でも50万円が必要で高額の金額を用意しなければなりません。そのほか依頼した弁護士費用も掛かります。

●参考資料/東京地裁での管財事件での予納金
・負債額5000万円未満の場合⇒50万円
・負債額5000万円から1億円未満の場合⇒80万円
・負債額1億円から5億円未満の場合⇒150万円
・負債額5億円から10億円未満の場合⇒250万円
・負債額50億円から100億円未満の場合⇒500万円
・負債額100億円以上の場合⇒700万円

思うに、50万円という金額は、通常の個人や小規模な事業者にとってみれば決して安いものではありません。この50万円を一括で支払えとなると、自己破産を申し立てている者にとってはかなり高いハードルということになります。 ⇒ そこで「少額管財事件」の存在がKeyとなります。
 

(2)「少額管財事件」とは?(予納金が少額ですむ管財事件手続)

 
「少額管財事件」とは「管財事件」の範疇に入ります。

したがって、「管財事件」と同じく破産申し立てをして破産管財人が破産者の財産を調査、管理、勘案して換価処分し、債権者に弁済、比例配当する際に必要な手続をいいます。

ただ、自己破産制度を利用しようとする人は、借金返済の苦しみから解放し経済的更生を図ろうとしている人です。そういう人に「管財事件」で要求されているような50万円もの金額を負担させるのは酷であり、これでは一部の人しか自己破産制度を利用することができなくなってしまう恐れがあります。

そこで、一般の個人や中小零細事業者でも自己破産制度を利用しやすくして、比較的容易に経済的更生の機会を得られるようにするため、破産手続の予納金の金額を下げた「少額管財事件」という手続があります。

その予納金がどのくらい下がるかというと「管財事件」の予納金が少なくとも50万円であるのに対して「少額管財事件」では20万円程度ですむとされています。この点は大きなメリットです。ただし、依頼した弁護士費用が別途掛かるのはいうまでもありません。

そして、予納金が少額で済むということは、当然に破産手続進行上の諸費用と破産管財人の報酬も少額にならざるを得ません。

ですから「少額管財事件」として扱うに相応しい事案は、破産管財人の報酬もあまり高額でなくてもすみ、財産の調査、管理、処分、そして配当等々でも多額の費用を掛けなくても済むような事案であり、そういった事案は「管財事件」に比べて手続の簡略化、迅速化が図れるというメリットもあります。

ということは、事件の内容が複雑で処理すべき点も多く、そのための時間、労力も多くを費やさなければならないような破産事件は「少額管財事件」ではなく「管財事件」として扱う方が妥当ということになります。

さて、冒頭に述べた通り、自己破産には「管財事件」と「同時廃止」の二つの流れがあります。

「少額管財事件」のさらなるメリットは「同時廃止」で生ずる恐れがある不正を防止する役割があります。

後で詳しく述べますが「同時廃止事件」では、破産管財人は選任されません。選任されないがゆえに財産に関する調査、免責に関する調査が十分に行われない可能性があり、そのため財産・資産の隠匿等が行われる恐れがでてきます。

それを防ぐために破産管財人が選任されることは必要ですが、でも高額の予納金が必要な「管財事件」で破産を申し立てるのは金銭的にかなり難しい。

そこで、破産管財人が選任されて不正防止のための調査もそれなりに行われつつ、破産者の金銭的負担を軽くする「少額管財事件」は極めて効果的なのです。

ただ、注意すべき点があります。「少額管財事件」は法律上設けられた制度ではありません。自己破産制度を利用しやすくするために東京地方裁判所が破産法の範囲内で独自に設けられた運用方法です。

もちろん、その有用性からこの運用方法に倣う、あるいは類似した運用を行なう地方裁判所も存在します。でも、全国レベルで行われているわけではありません。通常の「管財事件」としての扱いしか認めない地方裁判所もあります。

だから、自己破産の申し立てを考えている人は、管轄下にある地方裁判所はどのようなやり方をとっているのか弁護士に確認することを勧めます。

さらに、注意すべき点は「少額管財事件」として運用を希望する場合は、必ず弁護士を代理人として自己破産を申し立てなければなりません。個人や司法書士が申し立てると、通常の「管財事件」として扱われてしまいます。
 
「少額管財事件」のメリット・デメリット

メリット
●「管財事件」と比べて自己破産申立てにかかる予納金の額が少なくて済む。
●「管財事件」と比べて手続きの簡略による迅速化が図られる
●「同時廃止」での不正を防止できる
デメリット
●「少額管財事件」は全ての地方裁判所で採用されてはいない(東京地裁で初めて登場)
●「少額管財事件」の申立ては弁護士のみ許されている

 
処分して配当するに値する財産がある事案で、ほとんどのケースは「管財事件」としてではなく「少額管財事件」として進められているのが現状です。実際に、東京地裁で扱う「管財事件」の95%は「少額管財事件」です。
 

(3)「同時廃止」とは?(経済的余裕も財産もないときの手続)

 
これまで述べてきたように、破産管財人は破産者の財産を調査、管理して、換価処分(等価値の金銭に換える)して、債権者に弁済、配当する「管財事件(通常は少額管財事件)が破産手続の本筋の流れです。

ただ、なかには破産管財人が調査するまでもなく破産者に処分できるような財産が明らかになくて、破産手続を継続しても債権者に配当すべき金額はもちろん、手続を進めていくだけの費用すら捻出が難しい事案もあります。

このような事案で扱う破産手続は本筋の面倒な手続は一切やらずに終了にします。裁判所が破産手続の開始決定をすると同時に破産手続を終了するのです。この手続を「同時廃止」といいます。弁護士依頼時から3~4ヶ月、長くて6ヶ月で終了します。
 

破産手続においては「管財事件 (通常は少額管財事件)」が原則
破産手続においては「同時廃止」は例外的扱い

 

破産法第216条1項・2項
第1項 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。⇒この場合は「管財事件」ではなく「同時廃止」となるということ。
第2項 前項の規定は、破産手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、適用しない。

当然、破産管財人がいること自体が無意味なので、破産管財人の選任もしません。だから、破産管財人への報酬もいらなく、手続の費用として約2~3万円程度で済みます。だから、もともとお金がない破産者には精神的に気を楽にして取り組めるでしょう。

後は免責に関する手続が残るのみで、裁判所による免責決定が下されば、破産者は借金返済義務が免除されます。その点は「管財事件」「少額管財事件」と同じです。

先ほど、個人の自己破産の場合「管財事件」中の「少額管財事件」として扱う件数が圧倒的に多いといいましたが、実は、破産申し立て全件数のうち一番多いのが「同時廃止」なのです。

仮に、当初はお金持ちであっても個人が自己破産する場合は、ほとんどが処分すべき財産を持っていないことが多いからです。

例えば、本来なら大きな財産的価値を有する不動産を持っていれば「管財事件」となるわけですが、自己破産するような人は、その不動産に抵当権が設定されていることがほとんどで、その抵当権が実行されれば抵当権付き債権を持っている債権者が優先的に債権の回収ができて、それ以外の債権者には何も残らなくなれば、その債権者に配当するような原資がないことになるので「管財事件」ではなく「同時廃止」となってしまうからです。 詳しくは、後述の「「管財事件」「同時廃止」の振り分け基準」の項目参照。
 

■ 「管財事件」にするか「同時廃止」にするかの振り分け基準

 
自ら申し立てる自己破産の手続きが、同時廃止になるのか、管財事件になるのか、破産者にとって重大な関心事です。

「管財事件」になると最低50万円、「少額管財事件」でも20万円程度の予納金が必要になります。いずれにしても破産管財人が登場する管財事件になると破産者その金額は厳しい金額となります。

また「同時廃止」に比べて破産手続終了まで時間がかかるし、破産管財人に郵便物が転送され中身をチェックされます。旅行や引っ越しをするにも裁判所の許可が必要になってきます。破産管財人との面談ではここまでに至った事情を根掘り葉掘り聞かれるので、精神的な負担もかなりのものになります。

「管財事件」になるか「同時廃止」になるかはある基準をもとに最終的には裁判所が判断するのですが、できるだけ「管財事件」を避けて経済的、精神的な負担がない「同時廃止」にもっていければ、破産者にとっては喜ばしいことであり、そちらの方向にもっていけるかが弁護士の腕の見せ所といってもいいです。

そのため、管財事件を避けて同時廃止に持っていけるのが弁護士の腕の見せどころといえるでしょう。

さて、この二つの分かれ道のどちらに進むかは、基本的には申し立ての内容と破産申立人の財産状況によって決まります。

つまり「破産者に換価処分して債権者に弁済、配当し得る価値ある財産・資産があるかどうか?」にかかっています。

ざっくりした言い方をすれば、そういった価値ある財産がある場合は「管財事件」。そうでない場合は「同時廃止」ということになります。

そして、それによって「破産手続を本筋の流れに沿ったやり方でやるか、やらないか」の違いがでてくるのです。
 

管財事件/少額管財事件 ●「管財事件」とは、例えば大企業の代表者のように換価処分するに値する財産がかなり多い場合の破産手続。
●「少額管財事件」も「管財事件」の範疇に入って、同じように換価処分に値する財産がある場合の手続ですが「管財事件」にするほど大きな財産をもっているわけでもなく、ただ、経済的理由で高額の予納金を低く抑えられれば自己破産をしやすなることから、その要請に応えるために設けられた破産手続。
同時廃止
●「同時廃止」とは、換価処分して債権者への配当に回せるような価値ある財産が調査するまでもなく明らかにない場合は、破産手続を進める意味がないため、破産管財人など選任せず破産手続開始と同時に直ちに終了してしまう手続。

 
ただ、前述した破産法216条でわかるように「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」は同時廃止とすると定めているにすぎず「管財事件」と「同時廃止」との明確な振り分け基準が条文上で示されているわけではありません(破産法216条1項2項参照)。

このため、各地の地方裁判所がそれぞれの独自の具体的な振り分け基準を設けています。「管財事件」になるか、「同時廃止」になるか、先に述べたように破産者からみれば「同時廃止」になる方が明らかに有利になるので、自らの管轄裁判所がどのような振り分け基準を採っているかを知ることは極めて重要です。
 

(1) 東京地方裁判所の振り分け基準について

 
東京地方裁判所の場合は、下記のいずれか一方でも満たすと「管財事件」となります。

① 20万円を超えるの評価額の財産を持っている場合
② 33万円を超える現金を持っている場合

    

① 20万円を超える評価額の財産を持っている場合

下記に記する財産の項目のうち、20万円超える価値のある財産を1つでも保有していれば、当該破産申し立ては「管財事件」に振り分けられる可能性が高いです。

ただ、注意すべきことは、20万円を超えるという数字は一つの財産を対象とする数字であって、例えば、報酬・賃金、または保険といった項目が別で、それぞれ単体ごとが20万円を超えている場合に「管財事件」になります。報酬・賃金が10万円以上、保険が15万円以上というように、合わせて20万円を超える(25万円)ことになったとしても「管財事件」ではなく「同時廃止」です。

1) 預金・貯金
2) 報酬・賃金(給料、賞与等)
3) 退職金請求権・退職慰労金
4) 貸付金・売掛金等
5) 積立金等(社内積立、財形貯蓄、事業保証金等)
6) 保険(生命保険、傷害保険、火災保険、自動車保険等)(解約返戻金が20万円を超えるかどうか)
7) 有価証券(手形・小切手、株式、社債)、ゴルフ会員権等
8) 自動車・バイク等(査定額が20万円を超えるかどうか)
9) 不動産(土地、建物、マンション等)
10) 相続財産(遺産分割未了の場合を含む)
11) 事業設備、在庫品、什器備品等
12) その他破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産

 

※3)について・・・退職金も財産の一つですから価値あるモノとして20万円を超える場合は「管財事件(通常は少額管財事件)」となります。ただ、未だに退職金を受け取ってなく近い将来退職する予定もない場合は、現時点で退職した場合の受け取れる金額の8分の1の金額が20万円を超える場合は「管財事件(通常は少額管財事件)」となり、20万円以下である場合は、それは自由財産となり「同時廃止」となります。

例えば、現時点で受け取れる退職金は240万円だとした場合、その8分の1は30万円となるから、20万円を超えることになるので、この場合の破産手続は「管財事件(少額管財事件)」となります。現時点で受け取れる退職金が150万円だった場合は、8分の1は187,500円となるので20万円を超えないから「同時廃止」となります。

※6)について・・・保険は解約返戻金があってその金額が20万円を超えていれば価値あるモノとして処分対象になって「管財事件(通常は少額管財事件)」となります。20万円以下であれば「同時廃止」となります。

もし、A保険の解約返戻金が10万円。B保険の解約返戻金が15万円、C保険の解約返戻金が5万円であった場合、個々に着目するとそれぞれ20万円以下になりますが、合算すると30万円となり、A,B,Cともに項目としては一緒なので、この場合は「管財事件」となります。

ただ、生命保険の場合は、高齢者や病気の方は一度保険を解約してしまうと再加入することは非常に難しいところがあるわけで、複数合計が20万円を超える場合でも「管財事件」にしてその解約返戻金を処分の対象にするか否かは慎重を要するところで事案ごとに裁判所が破産管財人の意見を聞いて判断します。
※上記の関連記事を参照。

※8)について・・・基本的にその自動車の査定額が20万円を超える場合は価値あるモノとして「管財事件」として扱われますが、一般の国産の普通自動車や軽自動車は、初年度登録後7年(軽自動車3~4年)も経てば、20万円を超える価値を持っているとはされません。仮に新車購入価格が300万円を超えていたとしても7年を経てば無価値といってもいいでしょう。従って「同時廃止」となります。

もっとも、一般的に価値が高いと評される有名外国車や、クラシックカーの場合年数が経っても価値を有するモノとして評価されることはあって、この場合は「管財事件」として扱われる可能性があります。

※9)について・・・土地建物といった不動産については、それ自体価値の高いものだから、その資産価値は軽々と20万円を超えてしまうのは当然であり「管財事件」として扱われるのが通常です。

ただ、例えば、住宅を例にした場合、その住宅に抵当権が設定されていて多額の住宅ローンを抱えている場合、しかもそのローン残高が住宅の資産価値を大幅に上回っている場合(オーバーローン状態)は、その住宅は換価財産として価値がなく、したがって「管財事件」ではなく「同時廃止」となります。

このローンの支払中の住宅の破産手続が「管財事件」になるか「同時廃止」になるかについては一定の基準があります。詳しくは、下記の関連記事の該当箇所を参照してください。

関連記事:「自己破産」の信じてはいけない間違いデメリットと本当のデメリットとは? 
※該当箇所⇒抵当権付きの不動産のローン残高(被担保債権)が固定資産評価による評価額の1.5倍未満の不動産⇒「管財事件(通常は少額管財事件)」となる。

■ 住宅の評価額 × 1.5倍< 住宅ローン残高・・・「同時廃止」
■ 住宅の評価額 × 1.5倍 >住宅ローン残高・・・「管財事件」

例えば、ローンの残額が1800万円で、住宅の固定資産評価額が1000万円の場合です。固定資産評価額を1.5倍しても1500万円であり、ローンの残額(1800万円)が固定資産評価額の1.5倍(1500万円)を超えています。この場合、東京地裁を含む多くの裁判所では、住宅を保有したままでの「同時廃止」になります。

もし、住宅の固定資産評価額が1300万円であった場合は、その額の1.5倍は1950万円になってローン残高を超えているため、この場合の破産手続は「管財事件(通常は少額管財事件)」となります。

※ちなみに「同時廃止」になった場合、破産手続が開始されたと同時に終了するので、住宅は処分されることなく、そのまま住み続けられそうですがそうはいきません。

破産手続による処分はできなくなりますが、その不動産に抵当権が付いていて、その抵当権付き債権者は抵当権を実行して住宅を競売(担保不動産競売)にかけることができます。

担保不動産競売になると、裁判所が主導権をもって有無を言わさずに決めていくので、売却価格は市価よりもかなり安くなってしまいかねません。債務者はその売却代金で借金の返済をしようにも十分ではなくかなり借金が残ってしまう恐れがあります。

だから「同時廃止」の場合は、処分されないわけだから、まだ住宅の所有者として債務者自らが率先して市場で売却することを勧めます。いわゆる「任意売却」という方法です。

これは債務者(不動産の所有者)・債権者(金融機関)・不動産の購入予定者の3者が間に仲介者(任意売却を専門とする不動産業者や不動産コンサルタント)を挟んで、それぞれが一応の納得の行くまで交渉して、価格はもちろん、その他の諸条件で合意して取引を成立させる方法です。

もちろん、債務者は借金を返せていない立場であるし、交渉事でもあるから100%満足できるとはいえません。でも、競売と違って交渉に参加できるわけで、何かしらの希望は取り入れてもらえる可能性はあるので「任意売却」はお勧め方法の一つです。

 

② 33万円を超える現金を持っている場合

 

■「管財事件」とは?

 
「管財事件」とは、裁判所によって選任された破産管財人が、破産者が有する財産を調査・管理を通して換価処分(等価値の金銭に変える)し、それを各債権者に平等・公平に比例配当します。

要は、自己破産者に各債権者に「換価処分」わけですかわらできる財産がある場合は「管財事件」手続として進められるということです。

破産者に換価処分が可能で一定の価値ある財産・資産がある場合は「管財事件」。

換価処分できる財産を具体的にいうと、99万円を超える現金、20万円を超える預貯金、20万円を超える保険解約返戻金、20万円を超える評価の自動車など一定の価値ある財産・資産をいい、もちろん住宅・不動産は20万円を超えるのは明らかなので、当然に処分の対象となる財産のなかに入って、これらの財産については破産管財人が選任されて破産手続が進行します。

但し、不動産であってもすでに抵当権が設定されている場合は、必ずしも処分の対象となる価値ある財産とはいえません。その場合は「同時廃止」になります。⇒参考「自己破産」の信じてはいけない間違いデメリットと本当のデメリットとは?」の※該当箇所⇒動産 (例:家財道具などは高級品のみ差押え可能)

その逆で、99万円以下の現金、差し押さえ禁止財産、新得財産、または20万円以下の預貯金、20万円以下の保険解約返戻金、20万円以下の自動車などは「自由財産」or「自由財産の拡張」として、破産者が自己破産後の生活に必要な最低限の財産ということで、処分の対象財産から外されます(東京地方裁判所の運用例)。

だから、破産者が持っている財産が、この自由財産(自由財産の拡張も含む)しかない持っていない場合は「管財事件」には入りません。「同時廃止」になり破産手続は廃止されます。
 

但し、東京地裁の運用で同時廃止であっても管財事件として扱われるケースがある
99万円以下は自由財産とされ換価処分対象外となり、論理的には「同時廃止」となるけれど、99万円以下でも33万円以上の現金があれば、東京地裁では手続上は管財事件(通常は少額管財事件)として扱われる。但し、あくまで自由財産であるため債権者には配当されませんが、手続き上は管財事件となるため引継ぎ予納金が必要となります)。

 

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ここまで述べたことで理解できるはずですが「管財事件(破産管財手続)」手続は、破産管財人が中心となって調査、管理、処分などなど諸々行われますから、手続は単純ではありません。ある程度の労力と期間を要します。

また、「管財事件(破産管財手続)」では、東京地裁の場合、それなりの高額な費用がかかり通常の破産管財手続でも最低50万円程度の予納金が必要となります。予納金は破産手続を通じて形成された破産財団がどのような内容となるかにかかわらず裁判所に必ず支払わなければならない金額です。

●参考資料/東京地裁での管財事件での予納金
・負債額5000万円未満の場合⇒50万円
・負債額5000万円から1億円未満の場合⇒80万円
・負債額1億円から5億円未満の場合⇒150万円
・負債額5億円から10億円未満の場合⇒250万円
・負債額50億円から100億円未満の場合⇒500万円
・負債額100億円以上の場合⇒700万円

この50万円は、破産者が会社等の法人ならともかく個人や中小零細企業の場合はそう簡単には都合できない金額かもしれません(予納金の額は裁判所によって違います)。

裁判所によっては予納金の分割納付を認めるところもありますが、認めないところもあってまちまちな対応です。分割納付を認めないところは事前にコツコツと積み立てていくしかありません。

①「少額管財事件」手続について

いずれにしても、これでは、誰もが、お金がないから「自己破産」制度を「利用したい!、それで再出発したい!」と思うにもかかわらず、そもそも利用すること自体ができなくなるのは、借金で苦しむ人の経済的更生を図るという「自己破産」制度の目的の実現がままならぬ状況になりかねません。

そこで、主に東京地裁をはじめとする一部の裁判所では、管財事件の部類ですが、通常の管財事件よりも簡略化、迅速化したもので、予納金も20万円程度に抑えることによって、破産者にとってかなり使い勝手がいい「少額管財事件」という手続きを設けていて、最近主流になっています。

東京地裁が扱う管財事件の95%は「少額管財事件」といわれています。

少額管財事件とは「予納金が少額で済む管財事件」ということ。

しかも、東京地裁では4回までの予納金分割納付を認めています。したがって、20万円ならば一回5万円の納付となります。ただ「少額管財事件」は、法律上認められている制度ではありません。あくまで裁判所の運用面での一つのやり方です。

だから、運用していない裁判所もあって問い合わせが必要です。

なお、予納金が低額になるわけですから、当然のことながら「少額管財事件」は、費用のかかるような財産管理処分などの業務がない事件で、破産管財人報酬が高額とならないような処理が簡便な事件でなければならないということになります。

そのため「少額管財事件」の場合には、通常の管財事件に比べて、複雑な手続ではないので申立てから2~5か月程度で終了しています。

但し「少額管財事件」は、必ず弁護士が申し立てをしなくてはなりません。破産者本人が自己破産の申し立てを行うと少額管財にならず通常の管財事件として扱われます。司法書士であっても管財事件として扱われてしまいます。

②「異時廃止」手続について

ところで、破産管財人が選任されて管財事件として開始されたものの、破産管財人がいろいろと調査した結果、債権者に配当できるような価値ある財産が見いだせなかった場合は、破産手続きは途中で廃止されます。これを「異時廃止」手続といいます。

この「異時廃止」手続きは、最初から換価処分して各債権者に配当する価値ある財産なんてないことが明らかで、そのため破産手続を進める意味も、わざわざ破産管財人を選任する意味もないときの廃止手続きの「同時廃止」手続とは区別されますが、債権者に配当されることなく破産手続きが廃止されるので、結果としては「同時廃止」手続と同じです。
 

■「同時廃止」手続とは?

 
先ほどから、何回かでてきていますが、破産手続き開始の時点で、調査をするまでもないほどに債権者に配当すべき財産がないどころか、破産手続を進めていくだけの費用を捻出する財産すら無いことが明らかである場合には、破産手続開始と同時に廃止となります。

●破産法の第216条1項
「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」と定められています。

つまり、破産手続が注目する財産らしきものはないかもしれませんが、失う財産は一切ありません。この場合、破産管財人を選任して破産手続を進めること自体無意味なので、破産管財人の選任すらしません。

この手続きを「同時廃止」手続といいます。

自己破産で財産がない場合は「同時廃止」。

事業主以外の個人の自己破産を申請する人の多くは、財産などはほとんどなくこの同時廃止事件になる割合が非常に多いといわれています。それから元々はお金持ちで財産もあったとしても自己破産を申請する頃は財産はなくしていることが多いでしょう。

例えば、大きな価値を有する不動産を持っていてもそれには抵当権が設定されていて抵当権が実行されて何も残らなければそれは同時廃止となります。

なぜなら、不動産が換価処分された後、まず優先的に抵当権者にローン残金を返済されることが必定ですが、その後に残金がない場合は他の債権者に配当する原資がないことになりもはや管財事件にする意味がないからです。

そのような状況なので、裁判所に支払うべき予納金は「管財事件」の50万円に比べればはるかに少額です。東京地裁ではおよそ1.5~2万円程度です。裁判所によって異なるので事前に確認しておくことが必要です。

実際に、破産手続きが開始しないわけですから破格に少額なわけです。

~管財事件と同時廃止との違い~

管財事件・少額管財事件
同時廃止
●破産管財人の存否
いる
いない
●破産者に財産があるか否か
財産ある
財産ない
●手続の複雑さ
手続は複雑
手続は簡単
●手続の期間
自己破産開始決定~免責決定まで
3か月以上半年、長くて1年程度
自己破産開始決定~免責決定まで
2・3か月程度
●債権者への配当
配当あるのが原則
配当ない
●破産者の財産がなくなるか
財産はなくなる(自由財産を除く)
財産はなくならない
●転居・旅行制限
制限ある(裁判所の許可必要)
制限ない
●郵便物の取り扱い
破産管財人宅に届く
破産者宅に届く
●裁判所へ払う予納金
(裁判所によって異なる)
最低50万円程度
(少額管財の場合は20万円)
1.5万円~2万円程度
●弁護士費用
同時廃止に比べて高い
着手金30~50万円程度+予納金
管財事件に比べて安い
着手金20~30万円程度+予納金

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①「同時廃止手続」の問題点

個人破産の多くは、結果的に「管財事件」ではなく「同時廃止」手続として自己破産の申立てがなされます。

つまり、個人財産の場合は、債権者に配当するようなめぼしい価値ある財産がないということが多いということです。

ところが「同時廃止」手続は実質的には破産手続が行われないので、破産管財人による調査が行われません。

つまり、そこには十分な資産の調査や免責の調査が行われない恐れがあるのです。

破産管財人が介入する「管財事件」の手続をとっていれば、破産管財人が資産調査や免責不許可事由を調査するので、これらに対する不正を隠し通すことは難しいですが「同時廃止手続」ではそのような調査は行われないため、こういった違法な手法が見逃されてしまう危険性があります。

それは、ひいては各債権者の利益を損なうことに繋がります。

「同時廃止」手続には「モラルハザード(バレなければ何してもいい!)」がはびこっている。これは由々しき事態といえます!

このような恐れがあるため、裁判所としても「同時廃止」手続の運用に慎重にならざるを得ません。

とはいえ、監視、調査等々を十分に果たすために、破産管財人を介入させる「管財事件」にしてしまうと「同時廃止」手続のメリットの一つである低額の予納金が高額となってしまって、個人や中小零細企業とって利用しにくい制度になってしまうという悩ましい状況にあります。

その悩ましい状況のある程度の解消を目指したのが、先に述べた利用しやすい予納金にした「少額管財」といえるかもしれません。「少額管財」もきちんとした管財事件の手続なので、破産管財人が選任されて適切な調査が行われので、不当な資産隠し等を防止できます。

でも「少額管財」であっても、その予納金20万円が支払いが厳しいといわれてしまうと、それまでなんですが、破産手続を進めると破産管財人の報酬も支払わなければならないし、どうしても費用はかかるのは已むを得ないのです。
 

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