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自己破産すると滞納している水道光熱費はどうなる?~一般破産債権・優先破産債権・財団債権~

      2021/08/24

 

 

■ ライフライン供給停止までの使用料滞納期間はどの程度?

 
今の時代、「水道代」「電気代」「ガス代」は生活を継続していくうえで不可欠なライフライン三本柱といえます。

にもかかわらず、借金返済に苦しみ自己破産を検討している人は、水道光熱費の支払いを滞納してしまう人たちも結構います。

これは生命 健康にも大きく関わってくるライフラインであるがゆえに、そう簡単には止められないだろう判断し、目の前の差し迫った借金返済に追われて先に借金返済の方へ力を入れるのでしょう。

確かに、水道光熱費を滞納しても、すぐに止められることはありませんが、一定期間滞納し続けると止められてしまいます。

その期間は、水道・電気・ガス供給会社によって多少のズレがありますが、おおよその期間は下記の表のとおりです。

● 電気は、滞納すると検針日からおよそ50日で止められる恐れあり。
● 水道は、滞納してから2~4か月程度で止められる恐れあり。
● ガスは、滞納すると検針日からおよそ50日で止められる恐れあり。

もし、自己破産をしても水道光熱費を払うことができてライフラインを維持できるのか、水道光熱費を滞納している場合はどうなのか、自己破産したらその効果でその支払は免責されるのか、などなど関心があるところです。

もし、自己破産することでライフラインが全面的に止まってしまうのであれば、これは自己破産する際に大きなマイナスとなりかねません。
 

■ 自己破産前後で滞納した水道光熱費の扱いは?

 
この問題の扱いについては、下記の二つの日が大きなポイントになります。

① 破産手続を裁判所に申し立てた日(下記の7月1日を参照)
② 破産手続を開始すると裁判所が決定した日(下記の8月1日を参照)

そもそも、水道光熱供給契約は継続的な給付を目的とする双務契約だから、その請求額は一定の継続期間経過(通常は一か月間 水道料金は通常は2か月間)ごとに請求額を算定して翌月にまとめて請求されます。たとえば「前の月の26日から今月の25日までと期限を区切って、その間の利用料金を算定して翌月5日に請求する」というパターンです。そしてこのパターンがくりかえされていきます。

だから、その利用料金の請求権はその発生時期によって「財団債権」になったり「破産債権」になったりします。よって、その属性の違いによって結論も異なってきます(下記の図参照)。
 

 
まず、破産手続の申し立て日を含む一定の継続期間(通常は一ヶ月間 水道料金については2ヶ月間)とそれ以降に発生した水道光熱費の滞納分(C+D)については、自己破産しても免責されません。破産者はその滞納額を支払う必要があるとされています。

つまり、上記の図表で言えば、破産手続の申し立て日は7月1日であり、その日を含む一ヶ月の請求額算定期間は6月26日~7月25日でその7月請求分C(支払いは翌月の8月5日)は「財団債権」とされています。

「財団債権」というのは「債権者平等の原則」の例外でその金額を破産管財人(管財事件の場合)に請求すれば破産財団から配当手続を経ずに優先的に支払われる金額で(破産法第55条2項)、その支払い行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」にはあたりません。

「偏頗弁済」とは、簡単にいえば「特定の債権者だけを優先的に優遇する不公平な返済」のことで債権者平等の原則に反する行為です。

7月26日以降の請求分Dについては破産手続とは関係なしに通常通りに破産者が破産手続き開始決定後に取得した「新得財産」から支払うことになります。

※通常の金銭消費貸借での借金の返済方法で分割払いを採用するのは、単に債務者の返済負担を軽減するためだけに採られたにすぎず(一括返済でもいい)、自己破産手続開始決定以降に返済期日がなっていても破産手続に則った扱いとなります。
それに対して、水道光熱費、スマホの通信料などの支払いは、継続的な給付を目的とする双務契約(一括払いは考えられない)において、債務者が生活を維持していく上で一定期間利用する必須の公共インフラサービスの対価ですから、破産手続開始後に請求されたものは破産手続の対象となりません。

いずれにしても、請求分Cと請求分Dとは債権の属性が異なりますが、結局はそれぞれ滞納分については支払わなければならないという点ではまったく同じになります。

ところで、水道光熱費を滞納してもブラックリストには載りません。

なぜなら、JICCやCICといった信用情報機関は、クレジットカードやキャッシング、ローンなどの取引に関する借入・返済の情報が登録、管理されるところで水道光熱費は信用情報機関には属さないからです。

もっとも、水道光熱費の支払い方法は「請求書支払い」「口座引き落とし」「クレジットカード払い」「スマホ決済」の四つがありますが、もし、クレジットカード払いで行っている場合は、自己破産するとクレジットカードは使えなくなるので、支払い方法を変更する必要があります。

スマホ決済でスマホの通信料をクレジットカード払いにしている場合もクレジットカードが使えなくなるので支払方法の変更が必要です。
 
 
それに対して、破産手続申し立て日以前の過去の水道光熱費の滞納分については、自己破産すると免責の対象になります。

つまり、上記の図表で言えば、6月25日以前の水道光熱費で滞納がある分については免責の対象となって支払わなくてもいいことになります。

ところで、自己破産手続申し立て日以前6ヶ月までの滞納分Bは「優先的破産債権」それより以前の滞納分Aは「一般破産債権」となります。

優先か一般かの違いについては、破産手続の配当手続内での優先順位の違いであって債権者にとっては関心事ですが、破産者にとっては関係はなくいずれも免責される点で違いはありません。
 

 
したがって、水道、電気、ガスの供給会社は破産手続開始決定後に「自己破産手続の申立て日前の水道光熱費が滞納している」のを理由に、水道や電気やガスなどの供給が止めることはできないし供給契約の解除もできません(破産法第55条1項)。

自己破産手続を定めている「破産法」が、水道や電気事業者などに、上記の場合にインフラ供給を止めることを禁止しているからです。

破産法55条
⚫️ 第一項:破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては、破産手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
⚫️ 第二項:前項の双務契約の相手方が破産手続開始の申立て後破産手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、財団債権とする。

 

 

 

■ 滞納分を自己破産する前に支払うことが許されるか?

 
思うに、先に述べたように自己破産申し立て以前の滞納ならば自己破産することで免責されるのですが、冒頭に掲げた供給停止までの期間によっては、自己破産する前に電気・水道・ガスの供給を止められてしまう恐れがあります。

それを避けたいがために、近い将来に自己破産するにしても自己破産手続申立て以前に、供給会社に滞納分の使用料金の返済を優先して一足先に滞納状態を解消しようと考える人も当然いるかもしれません。ライフラインが止められてしまうと自己破産後の経済的復権の面でも大きな影響をあたえます。

だから、その気持ちはわかりますが、その行いはちょっと問題となります。

自己破産(あるいは個人再生の場合)は、債務整理に利害関係を有するすべての債権者を共通の土俵(裁判の場)に上げて互いに公平・平等を保ちつつ一括処理で解決されることが要請されます。決して個別個別に捉えて特定の債権者が抜け駆け的に債権回収を果たすことは許されないのです(債権者平等の原則)。

となると、後から自己破産手続を開始した場合、水道光熱費の滞納分を先駆けて支払って滞納を解消してしまうことは「偏頗弁済」にあたり債権者平等の原則に反することになります。

ただ、その弁済行為が生活の維持に必要な支払である場合は、実務上「偏頗弁済」にあたらないと評価する傾向にあるようです。

とはいえ「偏頗弁済」と認定される場合もあり得るので、滞納分の水道光熱費を支払いたいと思っている場合は、事前に一度弁護士等の相談してみるのが妥当です。

注意すべきは、本来なら同時廃止で処理されるはず事件が「偏頗弁済」に疑われような行為をしてしまうことで、破産管財人を選任することが必要となり、それによってかかる経費が増大してしまいます。
 

 

■ 下水道料金の扱い ~上水道料金との違い~

 
これまで述べてきた水道料金は上水道料金の話で、下水道料金となると全然違ってきます。

下水道料金は税金と同じ扱いがなされているので、もし滞納した場合は税金に準じた徴収手続がなされ利用した期間と申立日の時期にかかわらず、下水道の料金の滞納については、自己破産しても免責されず、全て支払わなければなりません。
 

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