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自己破産でも手元に残せる「自由財産」と「自由財産の拡張」 ~残せる財産を増やしたい!!~

      2022/02/13

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< 目 次 >
自由財産とは?その趣旨は?
自由財産の分類
(1) 本来的自由財産について
 ① 99万円以下の現金について~その数字の法的根拠~
 ② 差し押さえ禁止債権について
 ③ 新得財産について
 ④「破産管財人が破産財団より放棄した財産」について
(2) 裁判所の運用による自由財産拡張について(東京地裁の類型化)
 ① 残高(複数ある場合は合計額)が20万円未満の預貯金は自由財産
 ② 評価額が20万円未満のクルマは自由財産

 ③ 20万円未満の保険の解約返戻金は自由財産

 ④ 退職金債権
(3) 裁判所の許可による自由財産拡張の可否について
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■ 自由財産とは?その趣旨は?

 
「自己破産」は、破産者が保有する一定の価値ある財産を換価処分(現金化)して、債権者がもつ破産債権の返済に充てるために弁済・配当する債務整理方法です(破産手続)

そして、その見返りに、破産者に未だに借金が残っていたとしても、その借金は返済する必要はなくすべて免責される、つまり借金はチャラになるという制度です(免責手続)

破産者の処分される財産・資産は、一定の価値を見い出されれば、不動産・動産などの物だけではなく、債権、著作権などといった財産上の請求権も幅広く含まれます。要は現金化できるものであれば、ノウハウ的な無形のものでもよく、大方は換価処分の対象に含まれるとされています。

ただ、破産することでいくら借金がゼロになっても、手持ちの財産の何から何まですべてを没収・処分されてしまったら破産者のその後の生活が成り立ちません。だから、破産者が所有する一定の財産は破産管財人に換価処分されない財産として破産者が保有できて使用できます。この一定の財産を「自由財産」といいます。

自由財産とは、自己破産によって損害を受ける債権者に十分な配慮をしたとしてもなお、破産者のこれからの生活を守るために債権者に弁済・配当すべきではない破産者の手元に置いておける財産のこと。

法律的にいうと、破産財団に帰属することはなく、破産手続開始決定後でも貸主(債権者)は差し押さえることができず、破産者(債務者)が自由に管理、処分することができる財産のことです。
 

処分対象財産 一定の価値があり破産財団に組み込まれ換価処分後に債権者に弁済・配当される財産。
自由財産 自己破産後でも手元に残せておけて破産者が自由に使える破産者の財産。

 

処分対象財産(破産財団に入る)自由財産(自由財産拡張含む)

自己破産手続開始時、両者は元々は破産者の財産として同一ですが、一定の基準の下で両者は表裏一体の関係になります。「左」は処分される財産。「右」は処分されない財産。
対象となる財産が自由財産の上限(99万円)を超え、換価処分(現金化)できる財産ならば「管財事件(通常は少額管財事件)」として破産手続が進められます。そうでなければ原則「同時廃止」となります。

 
関連記事:自己破産手続では「管財事件」と「同時廃止」の2種類 ある ~両者の特徴と振り分け基準は?費用の違いは?~

 
その「自由財産」とされるモノは次章(2)で示す破産法34条に列挙されていますが、個々人が抱えている生活状況は違っているし、それによって必要な財産等も当然違ってきます。そうなると、「自由財産」の領域を破産法34条(同条4項を除く)で定められたものに限定すると、破産者の生活再建に向けて十分な役割が果たせない恐れがでてきます。

つまり、条文に記載されている以外の財産でも、どうしても必要とするモノがあるのであれば差押え処分対象から外して破産者に保有を認めるべきなのです。

そこで、破産法は34条4項で、その財産が今後の破産者の日常生活と経済再生に必要不可欠のものといえるのかどうか、という視点を十分に踏まえて「自由財産」の範囲を拡張できるをを認めています。

自由財産の拡張が認められると、その財産は法律上規定がある通常の自由財産(便宜上、本来的自由財産と呼ぶ)と同列に扱われ破産管財人の処分対象から外れます。

「自由財産の拡張」については後述します。

 

■ 自由財産の分類

 

以下、順番に述べていきます。

(1) 本来的自由財産について

「本来的自由財産」とは、裁判所の個別許可を必要とせず、自己破産のルール上、最初から破産法上で自由財産として認められている財産を言います。

「99万円以下の現金」・・・・・・・・・・・・(破産法34条3項1号)
「差し押さえ禁止財産」・・・・・・・・・・・(破産法34条3項2号)
「新得財産」・・・・・・・・・・・・・・・・(破産法34条1項の反対解釈)
「破産管財人が破産財団より放棄した財産」・・(破産法78条2項)

 
上記の本来的自由財産の分類は分かりやすくに示されているので、換価処分の対象に組み込まれるのか、それとも自由財産として組み込まれないのか、この本来的自由財産のレベルでは明確に分かります。
 
 

「99万円以下の現金」について~その数字の法的根拠~

まず、前提として抑えておきたいことは、この「現金」とは、手元にある手持ちのお金のことです。銀行等に預けている「預金」とは、あくまで預金者の銀行等に対する預貯金払戻請求権(預金債権)という「債権」として存在するので、ここでいう「現金」とは違います。まず、このことをしっかり理解しておいてください。

さて、この「99万円以下の現金」は自由財産とされているわけですが、

なぜ、99万円なんだ・・・。でも、99万円という数字は法文で明確に書かれてはいません。

99万円以下という数字を導き出すメインの条文は下記の改正された破産法の条文です。

● 破産法 第34条1項
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
● 破産法 第34条3項1号
第1項の規定にかかわらず,次に掲げる財産は,破産財団に属しない。
一 民事執行法(昭和54年法律第4号)第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭

※「破産財団に属しない」ということは、処分の対象にはならないということで、要は「自由財産」ということを意味します。

これまでは、破産財団に含まれない自由財産の金銭の額は、標準的な世帯の2か月分の必要生計費を勘案して定められる額66万円以下とされましたが、平成16年の破産法改正により、破産法34条3項1号で「2分の3を乗じた額の金銭」という文言が付け加えられました。これによって99万円以下まで引き上げられて自由財産とすることになりました。この99万円以下という数字は破産法と民事執行法、民事執行施行令の条文解釈によって出てきます。
 

1. まず、破産法34条で自由財産となる「現金」は、民事執行法131条3号に規定する額に3/2を乗じた額の金銭が自由財産となる「現金」が、99万円以下となります。つまり、この99万円以下が差押禁止債権ということです。
矢印

2. じゃあ~、2分の3を乗じた結果、算出された99万円という金額をを導き出すための元の金額はいくらかというと、それは民事執行法131条3号で定められていると言われています。ただ、その条文には「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」と記載されているだけで具体的な数字では表示されていません。

民事執行法131条3号(差押え禁止動産)
「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」

矢印

3. では、その政令で書かれている金額とはいくらか、そしてどこに記載されているかというと、民事執行施行令1条には「66万円」と書かれています。つまり「標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とは「66万円」ということです。

民事執行施行令1条(差押えが禁止される金銭の額)
民事執行法(以下「法」という。)第131条第3号(法第192条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、66万円とする。

矢印

4. ということは、最初(破産法34条3項1号)に戻って「66万円」に3/2を乗じた金額「99万円」となり、それが「自由財産」となるのです。66万円×3÷2=99万円


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「99万円以下の現金」は、処分される対象の財産から外されて「自由財産」として、破産者が自由に使うことができる財産となるのです。

だから、もし100万円の現金を持っていたら、99万円以下が「自由財産」となって、残り1万円は「破産財団」に入って、破産管財人を経て各債権者に弁済・配当されます。

もし、99万円の財産以外何も財産を持っていなければ、管財事件を経ることなく「同時廃止」になります。

~但し、東京地方裁判所の運用~
もっとも、99万円以下の現金であっても、東京地裁では、20万円以上の現金をもっていれば「同時廃止」ではなく、管財事件(通常は少額管財事件)に移行する運用を採っています。だから、ほかに財産がなくて99万円の現金をもっているときは、その99万円はすべて自由財産となりますが、手続としては管財事件となるので、予納金は20万円となります。したがって、自由に使える金額は79万円となります。
つまり、99万円の中から予納金等の20万円は費やされますが、99万円の範囲内はあくまで自由財産なので、その中から債権者への弁済、配当されることはないということです。

「差し押さえ禁止財産」について

破産財団に組み入れられ、処分の対象となる財産は差押えが許される財産でなければなりません。差し押さえが許されない、つまり差し押さえが禁止されている財産は処分の対象とはならず自由財産となります。

基本的には生活を成り立たせるに密接に関連ある動産、債権が「差し押さえ禁止財産」と解されています。詳しくは、民事執行法に規定されている「差し押さえ禁止動産」「差し押さえ禁止債権」がそうです。


   
   ーa.「差し押さえ禁止動産(自由財産)」とは?ー
・生活に欠かせない衣服、寝具、家具、台所用品、畳および兼具(民事執行法131条1項)
・一か月間に必要な食料、燃料(同法131条2項)などなど(同法131条14項)までの14項目です。

関連記事:「任意整理」すると、直ちに給与、その他財産(動産・自動車・土地 建物・銀行預金)が差押えられてしまうの??  ※該当箇所⇒動産 (例:家財道具などは高級品のみ差押え可能)

※洗濯機、冷蔵庫、テレビ、瞬間湯沸かし器、電子レンジ、掃除機、DVDデッキ、エアコン、タンス、パソコン、ベット、食卓セット、食器、調理器具、棚、机、衣類などなどで一般家庭に普通に広く普及されていて生活に欠くことができないものは差し押さえ禁止動産です。
但し、高級家電、高級家具は自由財産の範囲を超えて処分対象となるでしょう。

 

  ーb.「差し押さえ禁止債権(自由財産)」とは?ー
・給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権の3/4相当部分(民事執行法152条1項2号)
退職手当などの性質の債権の3/4相当部分(同法152条2項)
債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権の3/4相当部分(同法152条1項1号)
その他、国民年金、厚生年金、共済年金などの公的年金の受給権。失業保険の給付金債権。生活保護の受給権。などなど

なお、差し押さえ禁止債権の「給与」等に関しては、上記の3/4規定以外にも特別規定があります。その詳細ついては下記の関連記事の該当箇所を参照。

関連記事:「給与債権が差押えられたら」と「預金債権が差押えられたら」比較~借金した者側の対応策は?~  ※該当箇所⇒給与債権の差し押さえ

上記の差し押さえ禁止債権一覧をみると、例えば、退職金債権は、その3/4相当部分が差し押さえ禁止債権となり処分ができない自由財産になります。そして、残りの1/4相当部分の債権が差し押さえが可能債権として処分対象となり各債権者に比例配当されます。

ところで、この退職金債権の金額とは、将来定年等で実際に退職する際にもらえる金額を基準とするのではありません。あくまで自己破産手続開始決定時点で退職したらもらえるであろう金額を基準とします。

だから、そのときの金額の3/4相当部分が差し押さえ禁止債権であり自由財産ということになります。そして1/4相当部分が破産財団に組み入れられ処分対象となります。

 ・すでに退職しているが、まだ退職金はもらっていない場合
⇒この場合は、退職金はまだもらっていないとはいえ、すでに退職しているわけだから近日中に退職金が支給されるのは、間違えなく確実なので「自由財産の拡張」を考えるまでもなく、152条の適用があって3/4相当が差し押さえ禁止債権として自由財産で、1/4相当部分が処分の対象になるとします。

 ・まだ退職もしていないが、破産手続中に退職することが決まっている場合
⇒この場合も、退職することが破産手続き中にすることが決まっているわけで、退職すれば当然近いうちに退職金が支給されるのが確実なので、これも152条の適用があって同じように3/4相当分が差し押さえ禁止債権として自由財産で、1/4相当部分が破産財団に組み込まれ処分の対象になり債権者に配分されます。

なお、すでに退職金を破産手続きの開始前に受取ってしまっている場合は、今回の退職金債権の問題ではなくて通常の「預金」or「現金」の問題になります。つまり、それが現金として手元にあるなら「現金99万円まで」、口座にあるなら「預貯金20万円以下」が自由財産となります。後者の20万円は自由財産の拡張で導き出されます。

ただ、この退職金債権については、実際はそれで終わるような単純な問題ではありません。

1/4相当部分が破産財団に組み込まれて各債権者に比例配当される金額だといっても、破産者本人は今退職する気なんてさらさらなく、当然退職金を手にしていないわけで、実際に退職金を手にする見込みはあって、何年も先、いや何十年も先になるのが確実な場合があります。

この場合には民事執行法152条を素直に適用すると破産者本人にかなりの不利益を生じてしまうことになるので、後述する「自由財産の拡張」でもって対処するのが通例となっています。後述参照。

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「新得財産」について

破産財団に組み入れられて処分の対象となる財産は、破産手続開始時に破産者が有している財産でなければなりません。

だから、破産手続開始後に破産者が新たに取得した財産は処分の対象となる財産とはなりません。この新たに取得した財産のことを「新得財産」といって「自由財産」と同じで破産者の保有が許されています。

「破産管財人が破産財団より放棄した財産」について

自由財産は、基本的には破産者の最低限度の生活を維持するために破産者の手元に置くことが許された財産です。

でも、破産手続を円滑に進めるために都合上自由財産に含める財産もあります。

例えば、山奥にあるため全く価値がなく買い手が現れそうにない不動産とか、趣味的に非常にマニアックで、これまた買い手がつきそうにない品物は、買い手をさがすとか、維持管理するとか、そういったことで手間や費用がかかってきてしまいます。

そういった費用も破産財団から支払われますから、本来なら財産を増やす方向に持っていかなければならないのを減らす方向に働いてしまうので、このような財産は破産管財人の判断で破産財団から除外する必要があるのです。

(2) 裁判所の「運用」による自由財産拡張について(東京地裁の類型化)

「自由財産」となる財産は、法律によって具体的に定められているのは「99万円以下の現金」「差し押さえ禁止財産」「新得財産」「破産管財人が破産財団より放棄した財産」の4つであることはすでに述べたとおりです。

でも、冒頭に述べたように、上記の法律の規定がある4つの財産に自由財産を限定してしまうと、破産者の実りある生活再建に向けて十分な役割が果たせない恐れがでてきます。

法律もそれを想定して破産法34条4項で個々の事案に即した自由財産の拡張ができると規定しています。

破産法 第34条4項
裁判所は,破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。

ただ、この条文自体に具体性がないため、どのような場合に自由財産を拡張すべきかと認定する全国的な統一基準が定められているわけではありません。A裁判所では拡張が認められてもB裁判所では認められないケースだってあり得ます。

各地の裁判所がそれぞれが独自の判断基準を設けていて、A裁判所では認められても、B裁判所では認められないといったケースが考えられます。

そして、もし、上記の4つの財産以外の品目、財産を自由財産として認めてもらいたい場合は、破産者側から申し出て、それを裁判所が許可するかしないか判断するというのが通常ですが、そもそも、人が生活していくうえで必要な財産というのは細かい違いはあるとしても、ある程度共通しているしているはずです。

だから、裁判所の方から運用という形で一定の品目については拡張を認めた自由財産として事前に認定しておく、もし、その品目、財産が出てきても破産者側からの申し出などなくても裁判所の職権で自由財産として扱うとしています。

その財産の品目については、だいたい各地の裁判所で共通していますが、その品目の金額、自由財産の合計金額等で差が出てくるのです。

したがって、申し立て先の管轄裁判所の自由財産の拡張度合い、基準がどのようになっているか、事前に確認しておくとても大切です。

ここでは、東京地裁が運用として認めている自由財産の拡張類型について述べます。
 
  ー東京地裁の「運用」による自由財産拡張の類型化ー

残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金
見込額(数口ある場合は合計額)が20万円以下の保険の解約返戻金
処分見込額が20万円以下の自動車
居住用家屋の敷金
電話加入権
支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金全額
支給見込額の8分の1相当額が20万円を超えるの退職金の7/8相当額
家財道具

そもそも、自由財産の拡張する範囲を広くとればとるほど、破産者は自由に使える財産・資産を手元に残せる量が多くなりますが、その分だけ債権者の利益を害する結果になります。だから、そこには一定の金額制限を設けて、拡張の範囲をその金額に限定する扱いがとられます。

その金額限定という意味で、東京地裁が示す目安の数字は、20万円という数字です。各財産・資産の価格が20万円以下で、かつ、現金は99万円以下を上限として自由財産の拡張を職権で認めているということです。

以下は、主要なもの4つをチョイスして詳述します。

残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金は自由財産

自由財産は条文上では破産法34条で「99万円以下の現金」とされていることから、99万円以下でもそれが銀行の口座に入っている「預金」であるならば、それは自由財産にならないことになります。

ただ「自由財産の拡張」ということで、20万円以下の範囲であればそれが「預金」であっても、それは自由財産を拡張することで処分対象から外れるのです。

そして、預金口座が複数ある場合は、その複数の合計額が20万円以下か否かで判断されます。

たとえば、預金口座をABC の3つ持っていて、A口座には10万円、B口座には6万円、C口座には5万円あったとします。この場合、個々の口座を見ると、残高20万円を超える口座がないから、自由財産の拡張が認められそうですが、口座残高を合計すると21万円の残高があることになります。したがって、超過した1万円分だけ処分の対象となり債権者に配当されます。
 

 
 ・宅にある資産として現金が25万円、保険の解約返戻金が18万円、銀行預金が19万円ある場合には、3つの財産の合計が62万円となり99万円以上になりませんから、この保険の解約返戻金と銀行預金はいわゆる「現金」ではないので本来の自由財産ではありませんが、「自由財産の拡張」で自由財産に含まれることになり、この62万円に関しては処分対象とされる財産とはなりません。破産者が自由に使ってもよい「自由財産」となる取扱いになります。

 ・宅にある資産として現金が75万円、保険の解約返戻金が18万円、銀行預金が19万円ある場合には、3つの財産の合計額が102万円で99万円以上になるので、保険の解約返戻金と銀行預金は「自由財産の拡張」によっても自由財産にすることはできません。保険の解約返戻金と銀行預金の合算で99万円を超える金額3万円を限度に処分対象の財産とされて、どちらを解約するかはともかく、3万円は裁判所によって各債権者に比例配当されることになります(三つの合計が99万円を超えているから、その超えた分3万円が処分対象になる)。

 ・宅にある資産として現金が18万円、保険の解約返戻金が32万円、銀行預金が28万円ある場合には、3つの財産の合計は78万円で99万円以上になりませんが、保険の解約返戻金と銀行預金の金額がおのおの20万円を超えていますから、保険に関しての12万円分、銀行預金に関しての8万円分は「自由財産の拡張」によっても自由財産とすることはできません。その分は処分対象となり、それぞれ解約を強いられて各債権者に比例配当されます(三つの合計が99万円を超えていないから、現金18万円を除外した解約返戻金と銀行預金のみに着目して処分対象を算出する)。

評価額が20万円以下のクルマは自由財産

クルマは原則として自由財産ではありません。ローンをすでに完済しているクルマは資産・財産ですから自由財産に該当しない以上、自己破産をすると所有しているクルマは処分の対象物となります。

ただ、東京地方裁判所での自由財産拡張基準によると評価額が20万円以下の自動車は、処分の対象とはならず自由財産となります。自己破産申立時には時価を明らかにしなければならないので業者に査定書を作ってもらう必要があります。

20万円以下の保険の解約返戻金は自由財産

20万円以下は、複数の保険契約の解約返戻金の合計金額で判断します。
      
たとえば、A・B・C の3つの生命保険に加入していて、A保険には10万円 B保険には6万円 C保険には5万円の解約返戻金見込みがあったとします。

この場合、個々の保険をみると解約返戻金見込額が20万円以上のものはないから、自由財産の拡張が認められそうですが、複数を合計すると21万円で20万円以上となるので解約され処分の対象になります。

ただ、生命保険の場合は、高齢者や病気の方は一度保険を解約してしまうと再加入することは非常に難しいところがあるわけで、複数合計が20万円を超える場合(但し、99万円以下)でも解約して処分の対象にするか否かは、事案ごとに裁判所が破産管財人の意見を聞いて判断します。

退職金債権

『もうすでに退職しているけど、まだ退職金はもらっていない場合』『まだ退職していないけれど破産手続き中に退職するのが確定している場合』については、すでに前述したとおりです。素直に民事執行法152条の適用があります。

問題はこれも先に若干触れましたが『破産者がまだ退職をしておらず、かつ今現在退職する気持ちもさらさらなくて定年まで働き続けたいと思っている場合』の対処です。この場合は、今現在退職金は受け取っていないし、近い将来受け取る予定もないし、実際に受け取るにしてもかなり先になります。というよりも果たしてきちんと支給されるのか?その時期まで会社が存続しているのか?等々かなりの不確定要素があります。

そういったなかで、民事執行法152条を適用して1/4相当額を処分の対象とするのは、本人に意に反して早期に退職してもらうか、あるいは破産管財人が会社に1/4相当部分の前払い請求をするしかないのです。でも、そもそも前者はそのためだけに職を失うので酷で現実的じゃないし、仮に退職したとしても本人は収入源を失ってしまいます、後者だと自己破産の事実を会社に知られてしまい、以後の破産者本人の勤務環境にかなりの悪影響を及ぼす恐れがあります。

じゃあ~、それらを避けるためには、本人自らが独力でその1/4の金額を調達するというのも自己破産をしようとまで考えている人にとってかなりの負担のはずです。

そこで、この問題は民事執行法152条の適用はなく「自由財産の拡張」の模索する領域として、自由財産を152条の3/4の倍である7/8相当額とし、処分対象は1/4の半分である1/8相当額とすることによって、破産者が日常生活を送るなかで経済的更生を図ることに一定の配慮を示しているのです。

ただ、東京地裁はここでも20万円という数字を「自由財産の拡張」の金額限定の数値として使われています。下記の二つの場合分けを参照。

 ・退職金支払見込額の8分の1相当額が20万円以下の場合は自由財産は?
民事執行法152条で退職金債権額の3/4相当額が自由財産、1/4相当額が処分対象となりますが「自由財産の拡張」により7/8相当額が自由財産、1/8相当額が処分対象額となります。
但し、もしその1/8相当額が20万円以下になった場合はさらに拡張されて、退職金債権額全額が拡張された自由財産となり1/8相当額も含めた全額が自由財産と評価されます。つまり、処分の対象となる金額はなくなり、この場合は「管財事件(通常は少額管財事件)」ではなく「同時廃止」として破産手続開始と同時に終了となります。これは破産者本人にとって非常に有利なことです。

 ・退職金支払見込み額の8分の1相当額が20万円を超える場合は自由財産は?
もし、今勤務先を退職した際の退職金額が300万円だったら、その1/8相当部分は37万5千円となり上記とは違って20万円を超える金額になります。したがって、その37万5千円は破産財団に組み込まれて「管財事件(通常は少額管財事件)として扱われて処分の対象額になります。そして、自由財産の拡張として認められるのは7/8相当部分の262万5千円の部分(300万円ー37万5千円=262万5千円)だけとなります。(※300万×7/8=262万5千円)
 

関連記事:自己破産手続では「管財事件」と「同時廃止」の2種類 ある ~両者の特徴と振り分け基準は?費用の違いは?~  ※該当箇所⇒東京地方裁判所の振り分け基準について


      
なお、37万5千円が処分の対象となって債権者が複数いたら各債権者に比例配当しなければなりません。ただ、その破産者本人はまだ退職などしていなく現実に退職金も一銭も受け取っていないので、その金額は破産者自らが独力で調達することになります。

この場合は負担が大きいと思われますが、先に述べた原則の民事執行法152条がそのまま適用されると自由財産が225万円、処分対象額が75万円となり、この原則の方が負担額はずっと重いわけです。そう考えると、自由財産の拡張を適用した場合の方が、負担額が軽いので破産者本人にとってはずっと有利なわけで、37万5千円は破産決定後の収入から積立するなど色んな方法を駆使して確保することになります。

思うに、退職金の場合、退職のタイミングによって受け取れる退職金の金額が大きく変わることもあります。弁護士等の専門家に相談することで自己破産のタイミングを調整すれば、ベストな結果に繋がる可能性が高いです。

自己破産手続開始時期の状況
自由財産
処分対象の財産
いま退職していないまたその考えもない(1/8が20万円未満)
※自由財産の拡張場面
8分の8
8分の0
いま退職していないまたその考えもない(1/8が20万円以上)
※自由財産の拡張場面
8分の7
8分の1
退職しているがまだ退職金は受領してない
※原則⇒民事執行法152条
4分の3
4分の1
破産手続中に退職することは決定
※原則⇒民事執行法152条
4分の3
4分の1

 

(3) 裁判所の「許可」による自由財産拡張の可否について

東京地裁の運用上認めている自由財産の拡張類型では、手持ちの財産が自由財産には含まれないが、でも、どうしても自由財産に含めてもらいたいと望むならば、その申し立てと東京地裁の許可が必要となります。

このことは、どこの裁判所でも同じです。その裁判所で職権で認めている自由財産の拡張範囲を超えた財産を自由財産として認めてもらうためには、その申し立てとその裁判所の許可が必要となります。

その大まかな目安として、本来的自由財産の範囲として認められている「99万円」という金額が一つの上限基準になるでしょう。

その際、各地の裁判所の運用や選任された破産管財人の姿勢が影響されます。そのターゲットになっている財産が破産者の今後の日常生活や経済的再生のために限りなく必要不可欠かどうか、もちろん、その一方で自由財産の範囲を広げるということは、破産財団に帰属する処分対象の財産の範囲が狭まることを意味し、債権者の利益を害することになるので、債権者の利益保護という観点も決して無視できません。

そういったことを鑑みつつ、仮に換価価値が99万円以下というのが一つの目安となりますが、その財産が趣味の品や宝飾品などであれば、今後の日常生活や経済的再生のために必要不可欠とはいえないと評価され自由財産として認められない可能性があります。

その一方で、例えば、長年の深刻な持病を抱えているなか、突発的な入院費用や手術費用が必要になって、そのための保険の解約返戻金とその他の財産を現金化して合算した結果99万円を超えてしまった場合でも自由財産の拡張が認められる可能性があります。

ただ、その許可するか否かについては、裁判所は基本的には厳しい態度をとっています。

裁判所は拡張を認めるか否かは、破産管財人の意見を聞かなければなりません。そして、裁判所は破産管財人の意見を尊重するのがほとんどです。

だから、自由財産を拡張してもらって手元に残してもらいたい財産があれば、破産管財人にその財産は日常を送るに必要不可欠でモノであるという差し迫った具体的事情を説明して納得してもらわなければなりません。

結局は、管轄の裁判所と破産管財人の考え方次第となります。だから、必ず望み通りになるわけではありませんが、破産者の個々の諸事情をしっかり理解して、それを法律的主張に再構成して説明するスキルを備えた弁護士に相談、依頼することが大切です。
 
 

 

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「日本法規情報 ~債務整理相談サポート~」とは法律事務所ではありません。だから依頼人が抱えている借金問題を法的に解決するとか、あるいは依頼人に代わって債権者側と交渉するとか、そういった直接的な行動をとることはしません。この制度はあくまで借金返済に苦しむ人たちの相談窓口の無料案内サービスを行います。そのために全国各地1000以上の弁護士・司法書士事務所が登録され3000人弁護士・司法書士が登録されています。
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したがって、初めての方がなんのツテもなく依頼人の希望に沿った事務所を探すのは結構大変なことだし、さらにまだまだ一般人にとっては弁護士事務所の敷居はまだまだ高くて最初から弁護士と相対することになると、緊張して自らの借金問題について正確に伝えられない恐れもあります。だからこそ、依頼人と専門家との間の橋渡しの役割を果たす「日本法規情報」のような存在が重宝されるのです。そして、現在では毎月3000人もの相談者がこの無料相談ツールを利用しています。
「債務整理相談サポート」の申し込みは、オンライン上で24時間どこにいても1分程度で必要項目を入力ができ申し込みが完了します。その後にその入力内容に沿った複数の事務所が案内されます。その手順は基本的には下記の(1)~(6)の順で進みます。依頼人が各々事務所に出向きそれぞれの専門家と面談して、事務所によって濃淡はありますが、依頼人にとって関心事である「あなたに合った借金を減らす方法はあるのか?それは何か?」「おおよそどのくらい借金が減額されるのか?あるいは全額免責可能なのか?」「どうやってリスクを回避するか?」等々が回答されるので(ここまでが無料)、後はどの法律事務所にそれを実現するための債務整理手続きを依頼するかを依頼人自身が判断して決めることになります。

(1)電話またはオンライン上のお問い合わせフォームに必要項目に入力して申込する。
(2)相談パートナーより申込日より3営業日以内に電話またはメールにて相談内容の確認と専門家の希望条件をお尋ねします。。
(3)依頼人の要望する条件に合った事務所を複数案内します(平均3~5事務所)。
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 - 自己破産に関して, 自己破産における「自由財産」とは?