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「個人再生」手続で給与の差押え・強制執行を中止・停止・取消させたい!

      2018/09/23

< 目 次 >
(1)強制執行に優先する「個人再生」手続き
(2)個人再生手続きの「申し立ての段階」で停止させるには?
(3)個人再生手続きの「開始決定の段階」で停止させるには?
(4)強制執行が中止されれば給与は全額支給されるのか?
(5)再生計画案が認可決定される前でも給与全額支給できる場合ある?
① 中止命令が出されて個人再生手続開始決定前での強制執行の取消
② 中止命令が出されて個人再生手続開始決定後での強制執行の取消

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(1)強制執行に優先する「個人再生」手続き

もし、貸金業者からの貸金返還請求訴訟に敗訴して、しかもその判決が確定してしまったにもかかわらず、返済しないままでいると・・・。

あるいは、貸金業者からの何度かの貸金返済の催促を届いた後に、裁判所をから「支払督促申立書」が届き、異議を申立てしないまま、返済を怠っていると・・・。

返済に応じない理由がなんであれ、貸金業者は「確定判決」あるいは「仮執行宣言付支払督促」を債務名義(下記参照)として、自らの債権を回収するために債務者が持っている「給与債権」「預金債権」あるいは商売をやっていたら「売掛金債権」に対して「強制執行(差押え)」を仕掛けてくるのは目に見えています。

公的機関(裁判所等)によって「確定判決」などのお墨付けを与えらえた貸金の返還請求に対し、債務者が任意に返済を拒んでいるとき、それを具体的に債権の回収を実現させるには「強制執行(差押え)」するしかないのです。

「債務名義」とは、
強制執行(差押え)により実現が予定されている請求権の存在、範囲、債権者、債務者が記された公の文書のことです。

強制執行をするには、この「債務名義」を取得することが必要です。公的ではない私人間で締結された契約書では、仮にそれが真正なモノであっても「債務名義」にはなりません。裁判所で作成して和解調書、公証役場で作成した公正証書、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促などが債務名義となります。
ただし、抵当権などの担保権実行で債権の回収を図るときは「債務名義」は必要ありません。

例えば、給与に対する「差押え」の場合は、法律上、給与の全額はできない(後述します)とはいえ、給与は確実に存在するものですから、債権者としても手っ取り早く回収できる方法としてよく行われます。

でも、給与所得者としては給与全額受け取れないと、日々の生活に悪影響を及ぼしかねません。

特に、借金の返済に悩まされていて今すぐでも何らかの債務整理をしなければならないような人にとっては、給与の一部でもカットされると経済面での再建に大きな支障を生むこと間違えないでしょう。

だから、債務者としては給与に対する差押え・強制執行は何とか回避したい、なされてもできるだけ早く止めたいと思うのは切実な願いです。

さて、この記事のタイトルにある『個人再生によって強制執行を止められるか?』ですが、

結論からいうと「個人再生」の手続き開始決定をもって給与への強制執行(差押え)はストップをかけられます。

つまり「個人再生」手続きの開始決定をもってすれば、すでに強制執行手続きが始まっていたとしても、その手続きを中止、停止させることができるのです。 

そもそも「個人再生」の背景には、関係する債権者全員をもれなく裁判手続上に登場させて、全ての債権債務関係を一括で処理していこうという考えがあり、そこには「債権者平等の原則」というルールがあって、そのルールは無視できません。

だから、貸金業者としては、必要があって「債務名義」を取得して強制執行を仕掛けたにもかかわらず、強制執行の停止をくらったうえに「個人再生」によって総債権額が一気に減額され、しかも債権者が複数いたら、一気に減らされた総債権額の範囲内で、各債権者はそれぞれ持っていた債権額に応じて平等に比例配分されて、その分の金額しか返済されないことになってしまうという不利益を被ります。

債権者側としては、この「個人再生」の申し立てはいい迷惑なんでしょうが、そういうルールなので仕方がありません。

とにかく、繰り返しますが、一旦「個人再生」手続きが開始されれば、これから強制執行手続きが始まろうとしている、また、すでに強制執行手続きが始まっていても、それを止めることができるのです。

これは、債務者にとってうれしいことですが、手放しで喜んでいい状況ではありません。

それは、債務者側から見た場合「個人再生」手続開始決定を得るためには「個人再生」申し立てから、4週間ほどの期間が必要だということです。

もちろん、その4週間で間に合えばいいのですが、その4週間を待っていては、貸金業者が給与を差押えして、まさに今にも自分のフトコロに入ってしまうほど差し迫る時期が来ていると考えれば、4週間もの期間がかかっては、手遅れになってしまうことは十分にありえます。

だから「個人再生」手続き開始決定で、強制執行手続き停止の効果を生むのはもっともだとしても、手遅れになるのを防ぐには、もっと早い段階、すなわち「個人再生」の申し立てした段階で強制執行手続き停止の効果を生じさせる
必要があります。

以下は、それについて説明していきます。

(2)個人再生手続きの「申し立ての段階」で停止させるには?

「申し立て」の段階で、給与に対する差押えを防ぎたい場合は、単に「個人再生」の「申し立て」しただけでは足りません。

債務者は「申し立て」の段階で停止させたいのであれば、それにプラス「α」して、裁判所に「強制執行中止命令の申し立て」をする必要があります。

裁判所は、その申し立てを受けて債務者の置かれている状況を勘案して、実際に「その必要があると認めたならば」強制執行を中止させることができるとされています。

ただ、裁判所に「中止命令の申し立て」をして、裁判所がその必要性を認めて「強制執行中止命令」を出したとしても、直ちに強制執行が中止、停止になるわけではありません。その旨の具体的な手続きをしなければならないのです。

その具体的な手続きの流れとは「給与差押え命令を出した裁判所」と「個人再生を申し立てた裁判所」とは別の裁判所となっているはずですから、「個人再生」を申し立てた裁判所から「強制執行中止命令」を得られたら、その強制執行中止命令の「正本」を持って給与差押え命令を出した裁判所に「執行停止の申し立て」をしなければなりません。

「執行停止の申し立て」とは、その強制執行中止命令の「正本」が、同時に執行停止文書にもなるので、その文章を給与差押え命令を出した裁判所に提出することで、そこで初めて給与に対する差押え・強制執行を停止することになるのです。

なお、この「強制執行中止命令」は、裁判所がその必要性と認めれば「職権」で出すこともできるとされています。

(3)個人再生手続きの「開始決定の段階」で停止させるには?

さて、先に述べたように、個人再生の「申し立て」の段階で強制執行を停止させるには、「強制執行中止命令」 「裁判所がその必要があると認める」の二つの条件が揃っていることが必要だとしました。

それが、個人再生の「手続開始決定」時の段階まで進むと、もはや、その当然の効果として、直ちに給与債権のみならず再生債権に関わるすべての強制執行手続きが中止されます。

つまり、個人再生の「申し立て」段階時のような、余計な二つの条件は必要ありません。「開始決定」の段階までくれば、確実に強制執行手続きを中止させることができるのです。

ただ、これも前回と同じで、実務上の手続きとして「個人再生を申し立てて開始決定した裁判所」と「給与差押え命令を出した裁判所」とは別個のはずなので、開始決定正本を給与差押命令、つまり強制執行命令を出した裁判所に提出することが必要となります。

以上、結果的に、同じ強制執行手続き中止の効果を生みますが、個人再生手続の時系列で「申し立て」時と「開始決定」時とでは、手続きの流れが異なってくることを理解してください。

 

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(4)強制執行が中止されれば給与は全額支給されるのか?

ところで「強制執行中止命令」の効果というのは、あくまで強制執行を中止するだけです。差押えの効力自体が失効したわけではありません。

だから、中止によって、差押えをした貸金業者への支払いはストップがかかりますが、だからと言って、給与全額が給与取得者の手元に戻ってくるわけではありません。

ところで、先ほど、ちょっと触れましたが、そもそも、給与債権に対する差押えはできるけど、給与全額に対してはできないと言いました。

具体的にいうと、給与額から税金と社会保険料を差し引いた手取り額面の4分の1相当部分が差押えできる部分で、残りの4分の3相当部分は、差押えできずに給与取得者に支給されるということです(4分3の部分は差押え禁止債権)。

だから、強制執行が可能な4分の1相当部分に関しては、先にのべたように、貸金業者への支払いはストップとなるからといって、直ちに給与所得者の手にはならずに、基本的には勤務先の会社に留保されるか、あるいは会社が供託すれば、供託所に保管されることになります。

そして、個人再生手続きがすべて完了して、裁判所によって再生計画案が認可されて初めて、強制執行手続きの効果が「中止」から「失効」へと移行して、残りの4分の1相当部分についても支給されることになります。これ以降は、全額の給与支給が認められていきます。

(5)「再生計画」案が認可決定される前でも給与全額支給できる場合ある?

ただ、裁判所によって再生計画案が認可されて、個人再生が認められて初めて全額の給与の支給が認められるといっても、個人再生の申し立てから「再生計画案」の認可決定までの期間はおおよそ4か月~半年程度かかってしまいます。

「個人再生」手続は複雑で結構な時間がかかってしまうのです。

だから、4か月~半年程度待たなければ、給与の全額が支給されないというのでは、債務者にとってはまさしく死活問題です。

それを回避するためには、裁判所に「強制執行手続の取消」を「申し立てる」しかありません。

そして、その「申し立て」を裁判所が相当だと判断すれば、給与の4分の1は差押さえられるという強制執行の効果自体が取り消されます。

取り消されると「再生計画」案の認可決定前であっても給与全額が支給されるのです。

これが、基本です。

でも「再生計画」案の認可決定前というのは、どの時期をいっているのか?

それは「個人再生」手続きの「開始決定後」を意味するのか?それとも「開始決定前」まで遡ることができるのか?ということです。 

両方可能であっても、それぞれ取消しの要件が変わってきます。場合分けしてみます。

①中止命令が出されて「個人再生」手続開始決定前での強制執行の取消

この段階というのは、まだ「個人再生」手続きで「再生計画」案が認可されるどころか、手続開始決定さえもなされていない段階です。

こんな「個人再生」がどうなるか?まだ海のものとも山のものとも分からない段階でも、強制執行が取消され得る機会があって、給与4分の1も含めて全額が実際に給与取得者の手元に戻されるというのは、客観的状況としていいのか?

こんな段階で「強制執行手続きの取消」が認められる、つまり給与全額が給与所得者に支給されることが許されるケースが仮にあったとしても、よっぽどの緊急性がある場合を想定すべきであり、それに限定すべきです。

そうなると給与などの一般債権に対する差押え・強制執行を防ぐまでして、確保した資金を何かよっぽどの緊急性が認められるものに利用しなければならない、そういう場合ならともかく、一般的にはよっぽどの緊急性を認定するのはかなり困難といえるでしょう。

だから「個人再生」手続開始決定前の段階での「強制執行手続の取消」の申し立てが認められる可能性は少ないと考えていいです。

思うに、少なくとも「手続開始決定」までは待つ必要があると思います。それまでは4分の1は、まだ手元に戻ってきませんが「強制執行手続の中止」で我慢すべきです。

個人再生の申し立てから「手続開始決定」までは、おおよそ4週間くらいですから、約1か月分の給与は支給されないことを我慢することになります。

②中止命令が出されて「個人再生」手続開始決定後での強制執行の取消

これまで述べてきたように「個人再生」手続開始決定の段階では、本来ならまだ強制執行手続きの中止の効果(給与の4分の1は支給されない)しかないわけです。

でも、この段階までくれば「開始決定前」の段階よりは、ずっと「強制執行手続の取消」が認められる可能性は高くなっているはずです。

「強制執行手続の取消」の申し立てがあって、裁判所が「再生計画のために必要と認められれば」取消は認められる可能性は十分にあります。

この「再生計画のために必要」という判断基準は、再生手続きに必要な費用を捻出するためとか、弁護士への着手金捻出のためとか、そういった類のモノが考えられます。

「強制執行手続きの取消」が認められれば、その取り消し決定の正本を差押え命令を出している裁判所に提出して、給与に対する差押え、強制執行を解除します。

それによって、4分の1相当部分も含めて支給され、これ以降は全額の給与支給が認められるわけです。

関連記事:まとめ記事あり ~3つの債務整理による強制執行を停止・中止・失効の効果は?~「任意整理」で給与の差押え・強制執行を中止・停止させることができるのか?

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給与に対する差押えがなされた場合、日常生活に多大な影響を与えるケースがでてきます。したがって、そのような事態になってしまった場合には、早急に「個人再生」の手続きを踏む必要があります。

債権者側が債務名義となる「仮執行宣言付支払督促」を得れば、給与等に一気に差押え・強制執行を仕掛けてきます。

でも、この「個人再生」は非常に難しく面倒な領域の世界です、よって、その道の専門家である弁護士や司法書士に相談することが肝要です。
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