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自己破産申立て直前に「銀行預金」から引き出した「現金」は自由財産となる?

      2018/02/12

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(1)「自己破産」の概要

「自己破産」とは、簡単に言ってしまえば、借金返済を継続していくことが、もはやニッチもサッチもいかなくなって、お手上げ状態になったときに行う最終債務整理の方法です。

自己破産は「破産手続」「免責手続」の二つの手続が同時進行で進められていきます。

つまり「破産手続」でもって、所有している財産・資産のほとんどが換価処分されて、各債権者の債権に充てるために比例配当されます。比例配当されたにもかかわらず、まだ借金を完済するには足りず一部残ったとしても、その借金は「免責手続」によって返済することを免責されて、そのため債権者はさらなる返済請求はできません。結局借金は実質チャラ(ゼロ)になる仕組みです。

これで、新しい環境で人生の再出発を図る機会を得るのです。

さて、ここで申し上げたいのは、破産者に財産・資産があって、それに対して「破産手続」が開始されるのですが、その場合何から何まで根こそぎ没収され処分してしまうわけではありません。そんなことがまかり通ると、破産者が人生の再出発が成り立たなくなってしまいます。

だから、没収され処分の対象となる財産そうならない財産とに分けて、そうならない財産は「自由財産」として、破産者の手元に残されて、破産者が自由に使うことができます。

「自由財産」には次の4つがあります。
〇「99万円以下の現金」・・・・・・・・(破産法34条3項1号)
〇「差し押さえ禁止財産」・・・・・・・(破産法34条3項2号)
〇「新得財産」・・・・・・・・・・・・(破産法34条1項の反対解釈)
〇「拡張された自由財産」・・・・・・・(破産法34条4項)
※具体的な形で法律で定められている「自由財産」は、上から3番目までです。4番目はこれも条文はありますが、非常に抽象的な言い回しをしていて、その具体的な適用はその解釈に任されています。

「自由財産」には基本的に上記の4つがあるとされていますが、今回のメインテーマはそのうち一番上の「99万円以下の現金」にターゲットを絞って述べていくことになります。

(2)99万円以下の「現金」ってどういう意味?

「自由財産」のなかに『99万円以下の「現金」』というのがあって、当然「自由財産」だから、この99万円以下の「現金」は破産者がこれからのために自由に使えるお金ということになります。したがって処分の対象にはなりません。

※なぜ、自由財産として99万円という数字がでてきたのか?その法的根拠は、上記の関連記事「自己破産で処分されない「自由財産」について少し詳しくみてみます~自由財産の拡張と退職金債権にも触れます~」の(2)の①を参照してください。

ところで、ここでいう「現金」というのはどういう意味でしょうか?

「現金」とは「手持ちのお金」のことです。同じお金であっても銀行の預金口座に入っている「預金」とは区別されて取り扱いも異なってきます。この取り扱いの異なる点が要注意なのです。

例えば、銀行口座に50万円の預金が入っているとか、また保険の解約返戻金が30万円相当あるとかは、仮に金額的には99万円以下であっても、手持ちのお金ではないということで、基本的に処分の対象となる財産、つまり「自由財産」とはならない扱いになってしまうのです。

どちらも、同じ自分のお金なのに、そのあり場所によって、一方は処分対象とはならない、一方は処分対象となるという全く正反対の扱いを受けるのです。

でも、99万円もの現金を家のどこかに置いておくとか、財布に入れておくとか、普通では考えにくいですよね。ほとんどは銀行等に預金しているのが普通なはず!だから、99万円ものお金は「現金」化されていないからといって、処分の対象となる財産になってしまうのは現実的じゃないよ!

という気持ちになる人もいるでしょうが、それはもっともだし十分に理解できます。

でも、一部の裁判所は運用レベルで修正していきますが、ほとんどの裁判所は厳格に解釈していて、金額が99万円以下のお金であっても、それが「預金」ならば処分の対象となる財産として扱います。

このことを純粋に法的に解釈すると、「預金」というのは、あくまでお金を持っているのは銀行であって、では私たち預金者は何を持っているのかというと、銀行に対する「預貯金払戻請求権」という「債権」をもっているとするのです。それは「そのお金を返せ!」と言うことができる権利であり、ここでいう「現金」とはいえないと解釈するのです。

しかも、この「預貯金払戻請求権」は差し押さえ禁止債権(財産)には当たりません。したがって「自由財産」とはならなく処分の対象となり破産財団に組み入れられて破産債権として換価処分されて各債権者に比例配当されることになるのです。

もっとも、上記の関連記事『自己破産で処分されない「自由財産」について少し詳しくみてみます~自由財産の拡張と退職金債権にも触れます~』をぜひ読んでみてください。

「預金」は「自由財産」には入らないといっても、ただ、残高が20万円以下の「預金」に限っては、先の4番目にあげた「拡張された自由財産」の範疇に入ると解されています。

だから、その限度で「自由財産」と評価されて処分の対象とはならず、破産者がこれからのために自由に使える財産となるのです。この「拡張された自由財産」という概念は要注意です。

(3)自己破産申立て直前に引き出した99万以下の預金は「現金」になるか?

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ここまで述べてきたことを前提とした場合、当然に誰でも考えてしまうのが、21万円以上99万円以下のお金が処分の対象になってしまうのは、要はそのお金が銀行等に預けていて「預金」状態になっているからであり、だったらそれをやめてしまう、つまり前もって(自己破産申し立て直前に)その預金を引き出して手持ちの「現金」状態にしてしまえば、処分の対象とはならないはずだということを考えてしまいます・・・。

それによって、お金をできるだけ手元に残しておいて、没収されるのをできるだけ回避しようとするのです。

でも、残念ながらそんな浅知恵は裁判所には通用しません。

その預金引き出し行為が、自己破産申立て「直前」であれば、それは債権者の利益を害するための行為と評価され、多くの裁判所は、それを「現金」とは認めていません。「預金財産」とみているようです。

このことは「預金」状態からの「現金」化ばかりでなく「物品」からの「現金」化も同じです。

先に掲げた関連記事でも指摘していますが、時価20万円未満のクルマも「拡張された自由財産」の範疇に入るとされています。だから、例えば清算価値80万円のクルマがあったとします。この場合クルマのままだと20万円を超える財産として自由財産にあたりません。よって処分の対象となってしまいます。

だから、それを回避するために自己破産申立て直前に、そのクルマをお金に変えてしまう、つまり現金化してしまうことを思いつくはずです。そうすれば、現金80万円(99万円以下)になるということで、処分の対象から外れることになりそうです。でも、裁判所はこの場合の80万円も「現金」と評価することなく「80万円のクルマ」として評価して、処分対象の財産として扱っていくのです。

思うに、裁判所が以上のようにこだわる理由は「現金」化して手元におくことで、債権者の利益を害することになるから、と言われています。

確かに、当初債権者への配当が予定されていた財産が、ただ単に「現金」化することで、その処分対象の枠から外れてしまう、つまり「自由財産」になるというのは、債権者にとって由々しき事態と言えるかもしれません。

なぜなら、99万円以下の「現金」にして処分対象から外すことを無条件に許してしまうと、それが横行して、本当に債権者を害することになりかねないからです。

ただ「現金」化することが、意図的に債権者の利益を害するために財産を隠すとか、そういったことに繋がっているならともかく、なんら財産を隠すためでなく、意図的に安く売却するのでもないなら自己破産申立て直前の「現金」化が、処分の対象とはならない「自由財産」に移行することになってもいいのではないかと、裁判所の見解を批判する意見も結構多いです。

そうしないと、99万円までの現金は「自由財産」として処分されない、という規定の存在意義がなくなってしまいます。

なんたって、先にも触れましたが普段から99万円もの現金を手元に置いておくこと自体が、ほとんどレアなケースだからです。

とはいうものの、裁判所は自己破産申立て直前の「現金」化は、処分の対象となる財産と解釈しています。つまり「自由財産」ではなく換価処分されて各債権者に比例配当される財産であるという見解で一貫しているのです。

だから、それを前提に実務は進めていかなければなりません。

(4)現金化した理由がどうしても必要な支出に充てるためだった場合は?

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「預金」を処分対象とされるのを回避し、単に貯めこむために「現金」化するのではなく、どうしても必要な出費があって、そのお金を捻出するために「預金」から引き出したり、保険を解約したり、クルマを適正価格で売却したりして「現金」化する行為に限っては、裁判所もその金額が99万円の範囲であれば、処分の対象とはならない「自由財産」に移行することを認めています。

どうしても必要な出費とは?

① 破産費用(弁護士の費用、裁判所への予納金)
② 生活するうえでどうしても必要な経費
③ 任意売却(自宅処分)等に伴う転居費用
④ 税金の納付
⑤ 医療費
⑥ その他、学費など

そして「現金」化した金額のうち、どうしても必要な出費の金額を除いた金額が20万円以下で、そのほかにめぼしい財産・資産がない場合は、そのまま同時廃止が認められる可能性が出てきます。

例えば、清算価値50万円のクルマを、どうしても必要な破産費用を捻出するために売却して、そのうち40万円を破産費用に充てた場合、その40万円は自由財産として処分の対象とはならない財産と評価されますが、残りの10万円は処分の対象とはならない自由財産とは評価されません。つまり「現金」ではなく「10万円のクルマ」と評価されるのです。

でも、この「10万円のクルマ」というのは、もはや価値がないといっていいでしょう。

そもそもクルマの査定額が20万円以下の場合は、処分対象となる価値ある資産として評価されません。国産高級車や外車なら別扱いされることはありますが、ごく普通の国産乗用車や軽自動車であれば、初年度登録後7年も経過すれば、ほとんどその価値が20万円以上を維持しているなんてことはありません。

だから、結局は「10万円のクルマ」は処分の対象とはならない財産となるのです。自由財産ということです。

さて、ここまで述べてきたように、99万円以下の「現金」の評価については、日常の感覚とズレを生ずることがありうるわけで、でも裁判所が一貫した考えを持っている以上、実務上それに従うほかありません。

あとは「拡張された自由財産」にいかに解釈するか、あるいは「現金化」することが、いかになくてはならない必要な支出のためのものだったと評価してもらうために、専門家と相談することが肝要です。

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